週刊エコノミスト Online2021年の経営者

1日20時間生放送で巣ごもり需要取り込み 利用客数は過去最高=ジュピターショップチャンネル社長 新森健之

    Interviewer 藤枝克治(本誌編集長) Photo 武市公孝:江東区の本社で
    Interviewer 藤枝克治(本誌編集長) Photo 武市公孝:江東区の本社で

    生放送が強み、利用者は過去最高 新森健之 ジュピターショップチャンネル社長

     Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ―― テレビ通販「ショップチャンネル」を運営しています。新型コロナウイルス感染拡大の影響は。

    新森 巣ごもり需要は追い風となるはずでしたが、昨年4~6月の売上高は前年比2割減でした。当社の特徴である24時間の生放送ができなくなったからです。(2021年の経営者)

    ―― 通販を24時間生放送するとは驚きです。なぜそのように。

    新森 生放送ならではのわくわく感や、視聴者とのやりとりが番組の売り物になっています。司会役の「キャスト」と、商品開発や製造にかかわった「ゲスト」が掛け合いながら、一つのお勧め商品を1時間かけてじっくり紹介します。セリフ台本はありません。臨場感が番組の魅力です。

     たとえば、バッグを紹介する番組放送中に、視聴者からコールセンターに「内側はどうなっているのか」と問い合わせがあれば、スタジオにその旨を伝えます。スタジオでは出演者が即座に「問い合わせがありましたが、実際にはこうなっています」と、ファスナーを開けて中を見せて、視聴者が確認できるといった具合です。

    コロナで一旦足踏み

    ―― それができなくなった。

    新森 1時間の番組を1日24コマ放送をするために、当社のスタジオにはメーカーやバイヤー、司会役、プロデューサー、カメラマンら多数の人が出入りします。もしウイルスが持ち込まれれば、瞬く間に感染が広がるリスクがありました。対策として、昨年4月から放送チームを二つに分けて人数制限を設けた結果、生放送は1日7時間しかできず、残りは録画の再放送で埋めました。

     これでは「次の商品はどんなものだろうか」という楽しみも味わえません。ただ、その後は感染対策を徹底した上で、徐々に生放送時間を延ばし、6月以降は1日16時間、今は1日20時間にしました。昨年7月以降の売り上げは持ち直して、たとえば、食品の売上高は、20年度通年では前年度比1・2倍に伸びました。

     同社は1996年にCS(通信衛星)放送でテレビ通販番組を開始した。現在はケーブルテレビ、地上デジタル放送の一部などでも視聴できる。株主はケーブルテレビ会社・ジュピターテレコム、住友商事、KDDIだ。

    ―― どんな人が番組を見ているのでしょう。

    新森 50~70代の女性が多くを占めています。扱う商品は、ジュエリー&ファッション、コスメ&美容・健康がそれぞれ3割程度、ホーム&家電が2割程度、グルメ&その他が1割程度です。

    ―― 商品の特徴は。

    新森 安くはないが、お得感があることです。サケの切り身はスーパーよりは高いけど、百貨店と同質で、より厚いといった具合です。1週間で500アイテムを販売しますが半分は新製品で、飽きがこないようにしています。当社では、50人ほどのバイヤーが商品を開発・調達しています。

     最近では、コロナで催事ができない百貨店の代わりに、全国の名物を集めた物産展を2回開きました。ウニ、イクラ丼やイカ飯などが数千個単位で売れます。百貨店の物産展で扱っても、これだけの数量は売れないでしょう。ほとんどが番組中に売り切れました。

    ―― 売り上げが多い時間帯は。

    新森 午前0時ごろにもっとも注文が入ります。というのは、0時に当日のお買い得商品を紹介する番組が放送されるからです。

    ―― コロナ前までは右肩上がりで成長してきました。

    新森 放送開始以来、2017年度までは連続増収でした。18年度は減収でしたが、19年度売上高は過去最高の1634億円に達しました。

     番組で表示した商品の価格について、18年に消費者庁から景品表示法違反(有利誤認)を指摘され、再発防止の措置命令を受けた。番組中のセール価格を、「明日以降」の通常価格より安くしていたが、明日以降の販売期間が3日間しかないなど、参照価格として提示するには販売期間が短く、不適切とされた。

    ―― 通販業界では価格の表示の仕方が常に問題になっています。

    新森 指摘を踏まえて、現在はセール後の価格での販売期間を一定程度設けています。番組の内容や表現についても、必要に応じて行政に相談しています。法令順守をより徹底し、分かりやすい表示にするべく努めています。

    ―― 今後のテレビショッピングの行く先は。

    新森 20年度は、利用者数が過去最高を更新しました。コロナ下でテレビ通販を試した人が良さを知ってくれたかもしれません。アフターコロナも社会インフラとして伸びるのでは、と期待しています。

    (構成=種市房子・編集部)

    横顔

    Q これまで仕事でピンチだったことは?

    A 住友商事で建設機械の貿易を担当していた20代で、顧客からクレーンのオーダーがあるのにメーカーへの発注をコロッと忘れました。上司と一緒にメーカーに謝罪して、期日の納入ができました。

    Q 「好きな本」は

    A 『天切り松 闇がたり』(浅田次郎)シリーズと、『旧約聖書を知っていますか』(阿刀田高)です。

    Q 休日の過ごし方

    A 元々、インドア派で、最近はネットフリックスでドラマを見ています。


    事業内容:ショッピング専門チャンネル運営、通信販売

    本社所在地:東京都江東区

    設立:1996年11月

    資本金:44億円

    従業員数:1006人(2020年3月末)

    業績(20年3月期)

     売上高:1634億円


     ■人物略歴

    新森健之(しんもり・けんじ)

     1959年生まれ、愛知県出身。慶応義塾高校、慶応義塾大学法学部卒業。82年住友商事入社、人事部長、ライフスタイル・リテイル事業本部長、執行役員・広報部長を経て、2019年から現職。62歳。

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