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ブーム到来!シューマイがアツい〈サンデー毎日〉

    崎陽軒のシウマイ弁当
    崎陽軒のシウマイ弁当

    ▼3、4年で専門店やシューマイ酒場は全国30軒以上

    ▼火付け役は〝ごちそう系冷凍食品〟

    ▼豚肉以外に、鶏肉を使う店が増えている

     皆さんはシューマイにどんな印象をお持ちだろうか。弁当のおかず? 夕食の脇役? こう言っては何だが、同じ中華料理のギョーザに比べて地味~な存在だったかもしれない、今までは! ところが今、「シューマイブーム」が到来したというのだ。

     ここ数年、シューマイの専門店が続々とオープンしている。シューマイを看板メニューにした居酒屋も急増中だ。

     いくつか例を挙げると、焼売(シューマイ)酒場 いしい(福岡市中央区など)▽焼売酒場 小川(東京都渋谷区)▽焼売のジョー(川崎市川崎区など)▽中華麺飯 野田焼売店(東京都千代田区など)▽Tokyo焼売マニア(同港区)――と、関東地方を中心に各地に広がっている。

     昨年6月には、「シュウマイ潤」さんこと、シュウマイ研究家の種藤潤さんらが発起人となって、「日本シュウマイ協会」を発足した。種藤さんに聞こう。

    「この3、4年でオープンした専門店やシューマイ酒場は全国で30軒以上になると思います。特に昨年からシューマイをウリにした店が増えました。今年に入ってからは、冷凍食品『大阪王将 たれつき焼売』(イートアンドフーズ)が発売されたり、とんかつチェーンのかつやが新メニュー『焼売ご飯』を数量限定で提供したりと、大手企業が参入したのも特徴です」

     種藤さんは数年前から全国を食べ歩いて研究を続けている。年々高まる人気と、コロナ禍で飲食業界を応援したいという思いから同協会を設立したという。「包む(226)」を意味する2月26日を「シュウマイの日」と決め、毎月26日に飲食店やオンラインで「シュウマイ食べる会」を開催するなど、積極的に活動している。

    「注目を集め、テレビなどメディアの取材を受けたのは昨年から今年の初めにかけて26件。2019年は月1件ほどだったので倍以上です」(種藤さん)

     なぜ今、シューマイが人気なのか。種藤さんはこう推測する。

    「これまでギョーザ人気の陰に隠れていたシューマイのおいしさや価値に食品メーカーや消費者が気付いたからではないでしょうか。きっかけの一つが、味の素冷凍食品が16年に発売した『ザ★シュウマイ』です。あらびき肉を使った大ぶりの〝ごちそう系冷凍食品〟は、食事の脇役という今までのイメージを一新し、メインディッシュになると見直されたのです」

     以前は「シューマイだけでは商売にならない」と思い込んでいた飲食業の経営者も専門店を開き、看板メニューに加えるようになった。他の冷凍食品メーカーも続いた。

    「昨年はマルハニチロが、有名中華料理店が監修した『五目シュウマイ』を発売しました。先の『大阪王将』シリーズにシューマイが加わったことも含め、現在の状況を〝冷凍シューマイ戦国時代〟と呼んでいます。各社とも開発にかける本気度が今までとは違います」(種藤さん)

     冷凍シューマイは売れ行き好調

     冷凍シューマイの人気はコロナ禍で拍車がかかった。人々が外食を自粛して自宅で食事をする機会が増え、冷凍食品の需要が高まった。中でもシューマイは蒸籠(せいろ)で蒸すか電子レンジで加熱するだけで食べられ、フライパンで焼くといった面倒な手間が要らない。「蒸し料理は健康にいい」というイメージもある。冷凍食品の袋から1個だけ取り出して食べられる点も便利だ。

     冷凍シューマイの国内シェアが首位だという味の素冷凍食品によると、昨年下期の国内売上高は他社も含め、前期比12%増えた。前出の「ザ★シュウマイ」の売上高は昨年8~9月期に前年同期比5割増と大幅に増え、同年下期は市場平均を大きく上回る前期比3割増だったという。この商品が人気になった秘密は何か。同社製品戦略部シュウマイ担当の朴泰洪(パク・テホン)さんに聞いた。

    「これまでの冷凍シューマイは弁当向けの小型サイズが主流でした。そこで、男性をターゲットとし、食事の主菜になるよう、外食店のような大ぶりで肉々しい味わいの商品としました。販売し始めた16年から売り上げが増え続け、冷凍シューマイで売り上げが日本一多い商品になりました」

     専門店に勝るとも劣らない味に加え、俳優の小栗旬が白飯と一緒にガツガツとほお張るテレビコマーシャルも勝因だろう。

     同社は今年2月、新商品を発売した。豚肉がベースの餡(あん)にエビがゴロッと入り、イカやホタテの出汁(だし)を加えて海鮮のうまみをきかせた「大海老焼売」だ。食感とうまみが感じられるよう、プロの料理人の意見も聞いて開発したという。

    「肉主体でしっかりした味付けの『ザ★シュウマイ』とは異なり、『大海老焼売』はシニア層をターゲットにして上品でやさしい味わいにしました。実はシューマイを好んで食べるのは50代以上の人が多い。蒸し料理なので脂っこくないけど食べ応えはあるため、ヘビーな味を敬遠しがちな年代の嗜好(しこう)にぴったり当てはまるんです。売り上げは順調に伸びています」(朴さん)

     同社は今後も冷凍シューマイのラインアップを増やしていきたいとする。

     昨年11月には、横浜中華街にある中華料理店の招福門や前出の日本シュウマイ協会と共に「シュウマイムーブメントプロジェクト発表会」を開催。それぞれの活動を紹介し、「令和はシュウマイの時代!」と発信した。

     招福門は激辛味など約500種類のシューマイ料理を提供してきた。店を運営する同名の会社の北村徹常務は、こう話す。

    「中華料理の蒸すという調理法は、食材のうまみや栄養価を損ないにくい。最近のブームはシューマイのおいしさとヘルシーさを浸透させるチャンスです」

     昨年は自宅でシューマイを作れるセットを通信販売したところ(現在は終了)、テレビ局が紹介し、1日で数百個が売れるほどの反響があったという。

     崎陽軒はロードサイド店を強化

     横浜名物といえば、崎陽軒(きようけん)の「シウマイ弁当」が有名だ。同社のウェブサイトによると、1928(昭和3)年にシューマイを売り始めたという。

    〈(当時社長だった野並茂吉(のなみもきち)が)南京街(現在の中華街)を探索し、突き出しとして提供されていた「シューマイ」に着目。車内で食べるため、冷めてもおいしいことにこだわり、南京街の点心職人・呉遇孫をスカウト。約1年の試行錯誤の結果、豚肉と干帆立貝柱を混ぜ合わせた、冷めてもおいしい「シウマイ」が完成した。揺れる車内でもこぼさぬよう、一口サイズとした〉(同社サイト)

     北村さんは崎陽軒と中華街の関係に触れながらこう話す。

    「中華街の近辺には、歴史の長いシューマイの店や人気店が多いんです。中華街を盛り上げる起爆剤になればと思いますが、大ブレークを目指すのではなく、安定して根付いてくれればうれしい」

     崎陽軒の「シウマイ」が全国に知られるようになったきっかけは、同社が50年、横浜駅のプラットホーム販売員に若い女性を起用し、「シウマイ娘」と名付けたこと。52年には『毎日新聞』の連載小説「やっさもっさ」(獅子文六)が取り上げ、その翌年、映画化されたという。

     横浜では日常的に食べる習慣が根付き、〝ハマっ子〟のソウルフードになった。総務省統計局の「家計調査」(2018~20年平均)によると、都道府県庁所在地と政令指定都市の計52都市のうち、2人以上の世帯当たりのシューマイ支出額が最も多いのは横浜市の2248円。52都市の平均額1039円の2倍以上だ。

     崎陽軒の販売店は神奈川県や東京都など関東地方を中心に約150店あり、「シウマイ弁当」などを1日当たり平均2万5000個ほど売るという。同社によれば、販売店のほとんどは駅構内や駅ビルにあり、出張や旅行をする人が減った昨年は売上高が前年より6割以上減った。同社広報・マーケティング部の担当者はこう説明する。

    「コロナ禍で生活が多様化する中、車で立ち寄りやすい郊外型店舗は好調でした。そこに活路があると考え、幹線道路沿いなどの出店を強化しています」

     昨年9月から、神奈川県内や東京・荻窪などに8店のロードサイド店を立て続けに開いた。また、冷凍の駅弁「おうちで駅弁シリーズ」も売り始めた。同シリーズの「チャーハン弁当」をはじめとする数種類を通信販売やロードサイド店などで販売している。「電子レンジで温めるだけで崎陽軒の駅弁が家庭で食べられる」と好評だという。

     和牛、鴨肉、揚げ、焼きなども

     ではシューマイの最新トレンドはどうなのか。前出の種藤さんは、こう話す。

    「シューマイの餡として一般的な豚肉以外に、鶏肉(とりにく)を使う店が増えているのが特徴です。18年にオープンした焼売酒場 いしい(前出)の『鶏シュウマイ』が人気になり、その味に影響を受けた店も多い。九州には鶏皮串やチキン南蛮といった鶏料理が元々多く、シューマイにも鶏肉を使うという発想になりやすかったのではないでしょうか。ほかにも豚肉以外の食材を使う店が多くなっています」

     今年3月にオープンした焼売酒場 しげ吉(横浜市西区)の看板メニューは「和牛焼売」と「とり焼売」。運営会社のシゲキッチンは焼き肉店も営むため、強みとする牛肉を使う名物料理として「和牛焼売」を考案した。上質な和牛の切れ端を使い、食べてみると濃厚なうまみを感じる。一方、「とり焼売」はふわふわと軟らかい食感だ。ほかにも和風出汁で味わう「出汁焼売」という料理も提供する。同社の間宮茂雄社長はシューマイをウリにした理由をこう話す。

    「誰が作っても安定しておいしい味が出せるし、コロナ禍で需要が高まっているテークアウトにも対応しやすいことから、看板メニューに選びました」

     前出の種藤さんはシューマイブームの行方をこう予想する。

    「鶏肉を使うのが今のトレンドですが、焼売酒場 しげ吉のように和牛のほか、羊肉や鴨肉(かもにく)を使ったシューマイをワインと合わせる店もあり、ますます多様化すると思います。蒸すだけでなく、揚げたり、焼いたり、煮たりと調理法も広がっています。タレのバリエーションも豊富になってきました。シューマイで町おこしする動きにも注目です」

     専門店の増加に加え、コロナ禍でテークアウトや冷凍食品の需要が高まったことを背景に、日本中の人がシューマイをより多く口にするようになるのは、確実のようだ。

     家庭で市販品をおいしく味わうコツは何か。

    「やはり蒸籠で蒸すことをお勧めします。面倒臭いと思うかもしれませんが、やってみればそうでもないと気付くはずです。皮の質感や餡のジューシーさが格別に良くなりますよ」(種藤さん)

     巣ごもり需要の高まりで蒸籠の売れ行きもいいという。それもシューマイブームの影響かもしれない。今後もシューマイから目が離せない!

    (フリーライター 肥田木奈々)

    ひだき・なな

     大分県生まれ。『大分合同新聞社』本社・社会部記者、同東京支社記者を経てフリーライターに。食生活、旅、健康、グルメ情報などを中心に各地で取材活動を続け、現在は各種雑誌や新聞などで執筆中

    「サンデー毎日8月8日増大号」表紙
    「サンデー毎日8月8日増大号」表紙

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