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「永遠の命」が紡ぐ死の物語 コン・ユ&パク・ボゴム主演の話題作「SEOBOK ソボク」〈サンデー毎日〉

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 韓国の2大トップスター、コン・ユとパク・ボゴムの共演で、今年最大の話題作として注目を浴びる映画「SEOBOK/ソボク」。韓国で4月に公開され大ヒットした映画が、日本でも7月16日に公開された。死なないクローンと、死が間近に迫る男が、互いのために宿命にあらがうSF大作。生命とは何か、死とは何かを深く考えさせてくれる作品だ。

 ソボク(パク・ボゴム)は、極秘プロジェクトで生まれた人類初のクローン。永世を夢見たソイン研究所の研究員たちが、幹細胞の複製と遺伝子操作によって作り出した実験体だ。

 秘密の研究所に閉じ込められて外界を知らず、毎日注射をされ、一日を過ごす。そんなソボクを護衛する任務を命じられたのが、脳腫瘍を患い余命宣告を受けた元情報局エージェントのギホン(コン・ユ)だ。ソボクをテロリストから守り、研究所からシェルターまで安全に護衛すれば、画期的な治療が受けられると言われ、引き受ける。

 だが任務開始早々、何者かの襲撃を受ける。切り抜けたものの、さまざまな勢力がソボクとギホンに襲いかかり、2人きりの逃亡劇が始まる。追いつ追われつの旅のなかで2人は衝突を繰り返しながら徐々に心を通わせていく。

 コン・ユ&パク・ボゴムの2大スター夢の共演

 体調も悪く、やさぐれた元情報局エージェントのギホンを演じるコン・ユは韓国映画界を代表するスターだ。「All About」韓国ドラマガイドで韓国映画にも詳しい安部裕子さんはこう話す。

「コン・ユは『コーヒープリンス1号店』などのドラマでアイドル的人気を得てから映画にチャレンジし、映画界でも成功して国民的スターの地位を不動にしました。今回演じたギホン役では、ソボクを守ろうとする野性的な演技を完璧にこなすとともに、ソボクと出会い、ソボクの悲しみや苦しみを理解し、共有するように変化していくギホンの内面の感情を繊細に演じていました」

 当初コン・ユは、映画の出演を断った、とインタビューで明らかにしている。しかし一度断った後もこの作品のことが頭から離れなかったという。「この難しい課題に取り組まなきゃいけない、逃げてはいけないという気分になってきたんです」(コン・ユ)

 一方ソボク役は韓国若手俳優の中で一、二を争うほどの人気を誇るパク・ボゴム。2011年に映画「ブラインド」でデビューした後、数々の人気ドラマや映画に出演。演技力にも定評があり、多くの賞を受賞してきた実力派俳優だ。

 イ・ヨンジュ監督は「ソボクのイメージや年齢等、さまざまな面で最もふさわしく、他に代案のない俳優でした」と話す。

 今回も、天真爛漫(らんまん)な表情から、自分を狙う勢力に向ける鋭い目つきに至るまで、刻々と変わるソボクの感情を見事に表現してみせ、その表現力でイ・ヨンジュ監督をうならせたという。

「ソボクのピュアな部分と透明感がパク・ボゴムが醸し出す雰囲気にぴったりだと感じました。クローンとして辛(つら)い状況で生かされ、実験材料にされているソボク。最初は『えっ』という興味で惹(ひ)きつけられ、だんだん『幸せなのかな』という〝痛み〟を感じました。演技から、生きることの悲しみが感じられて、ザワザワした気持ちをかき立てられました」(安部さん)

 コン・ユとパク・ボゴムの感性ブロマンス

 キャスティングだけで反響の大きかった映画だが、人類にとって永遠のテーマである「生」と「死」を、ブロマンス(男同士の友情)を通して丁寧に深く描き出す。

 研究所から一歩も出たこともないソボクが、ギホンと共に初めて社会に接して、目を輝かせる。洋服、白い靴、カップ麺のおいしさ……。

 2人が少しずつ心を開いていく様子やそれぞれの悩みと葛藤する演技に見応えがある。

「最初は手探りしながらですが、会話を重ねていくうちに互いの立場も分かってきて心を通わせていく。ソボクは生きたくて生きていたわけではない。作られたという悲しみを共有する。時にギャグを交えながら……。そういうところにすごく惹かれました」(同)

 本人たちは互いにどのような印象を持ったのだろう。共演を知った時のことを振り返る瞬間がメイキング映像にある。ギホン役のコン・ユと共演した感想を求められたパク・ボゴムは、

「コン・ユさん!?」

 と驚いた表情でベテラントップスターとの共演を知らされた当時の興奮を再現した。さらに「コン・ユさんの出演作品はほとんど欠かさず観(み)ているほどの大ファンなので、共演できたことはすごく光栄で幸せでした。悩みながらソボクを演じる僕にアドバイスをくれたり、励ましてくれたりして、僕のことを弟のように見守ってくれました」と続けた。

 コン・ユも「最高でした。だってパク・ボゴムですよ!」と若手NO.1俳優との共演を喜んでみせた。

 互いの演技について「ソボクはパク・ボゴムしか考えられません」「(コン・ユは)すごい表現力だなと思いました」と絶賛、相思相愛ぶりを語っている。

 イ・ヨンジュ監督9年ぶりの新作

 家を建てる過程を人を愛する過程になぞらえた『建築学概論』を12年に映画化し、日本でも大ヒットさせたイ・ヨンジュ監督の9年ぶりの新作「ソボク」。

 今回はクローンというアイテムを使い、死ぬことのない存在と、死を目前にした男のロードムービーを通して、人間が恐れる「死」と、求める「永遠の命」について描くことに挑んだ。

「両極端な状況に置かれた2人の男が険しい旅路で人間の宿命ともいえる死の恐怖を克服し、人生と向き合う過程を描きたかった」とイ・ヨンジュ監督は語る。

 美術監督は「パラサイト 半地下の家族」でアカデミー賞美術賞ノミネートを果たしたイ・ハジュン監督。音楽、衣装、編集、CGまで韓国トップクラスの製作スタッフが集結している。

「韓国の映画界で売れっ子のスタッフに参加していただけて恐縮しています。一方では、私もある程度、認められたのだと思っています(笑)。とても幸せでした」(イ・ヨンジュ監督)

 生きることの意味を改めて心に刻み込むことのできる作品だ。

「サンデー毎日8月8日増大号」表紙
「サンデー毎日8月8日増大号」表紙

 7月27日発売の「サンデー毎日8月8日増大号」は、ほかにも「辞任ドミノでも責任を取らない武藤組織委事務総長の厚顔」「実体験したワクチン副反応の苦しみ」「猛暑!汗にまつわるウソホント」などの記事も掲載しています。

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