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経済・企業 日本発 世界に飛び出すEVベンチャー

動画で見るトヨタ車体出身のベンチャーが作った4人乗り世界最小EVは高速道路も水上も走って「電費」も良し

4人乗り世界最小クラスEV 高速道路も水上も走って「電費」も良し注目企業1 FOMM(フォム)(川崎市)

<日本発 世界に飛び出すEVベンチャー>

鶴巻日出夫・FOMM社長 「電池交換式で再エネ普及にも貢献する」

「FOMM ONE」の付加価値は「小型4人乗り」や「水に浸かっても走る」ことだけではない。

 省エネ性をみると、1キロワット時当たりの走行距離が14・02キロメートル(単純計算)は世界トップクラスの性能だと自負している。また、これからのクルマの省エネ性は走行性能だけでなく、「ライフサイクルアセスメント(LCA)」、つまり生産~走行~廃車の全過程で見る必要がある。小型EVは部品も小さく少なく、廃車にかかるエネルギーも少なくて済む。逆に、EVでも大型で多機能の高級車などは、実は環境に優しくない。

 もう一つ、FOMM ONEでは、EVの新しい活用のカタチとして「バッテリークラウド」というコンセプトを提示した。これは、EVのバッテリーをカセット式にし、簡単に交換可能にすることで、充電時間を「ゼロ」にする。2輪EVでは先例があるが、電池サイズが大きくなる4輪では世界の先頭を走っている。

 今後、交換用のバッテリーを、例えば直営のバッテリースタンドや提携するガソリンスタンドなどに常備しておき、その状況をスマートフォンアプリによってリアルタイムで確認できるようにすれば、EVの欠点とされる充電の待ち時間なしで走行を継続できる。

 現在、物流関係の企業が複数、バッテリークラウドに興味を示してくれている。運送に使えるタイプの車体も検討中だ。

 計画中のバッテリーステーションは、そのまま地域の電力調整用の仮想発電所(VPP)になる。需給調整用の蓄電池が足りず再エネが普及しない日本の課題解消にも役立つはずだ。我々の取り組みに時代がようやく追い付いてきたと感じる。

(大堀達也・編集部)


 ◆FOMM ONE

 SPEC

航続距離:166キロメートル 電費(km/kWh=1kWhで走る距離):14.02km/kWh最高速度(時速):80キロメートル全長×全幅×全高(ミリメートル):2585×1295×1550 重量:620キログラム 乗車定員:4人 充電方法:家庭用コンセント(200Vで満充電7.5時間) 販売地域(税抜き価格):タイ(66万4000バーツ=約220万円)、日本(250万円)

小型車体に駆動・省エネの新技術を詰め込む

 4人乗りで全長2.5メートルは世界最小クラス。アクセルをハンドル回りに置いて手で操作するパドル式にし、足元はブレーキのみにして実現した。タイヤに直接組み込む「インホイールモーター」での駆動は、ギアが不要になり動力ロスも少ない。さらに前輪駆動でブレーキ時に運動エネルギーを電気に変える「回生ブレーキ」を搭載し、電池消費を抑える。これと車体重量620キログラムという軽さで、約12kWhの電池ながら航続距離は166キロ(エアコン使用時は120キロ)に達する。防水性も確保し、ブレード状のタイヤホイールで水上を前進できる。

(大堀達也)


 ■人物略歴

つるまき・ひでお

 1962年福島県生まれ。東京都立航空工業高等専門学校(現産業技術高専)を卒業後、鈴木自動車工業(現スズキ)入社。97年、アラコ(現トヨタ車体)に移る。2013年、FOMMを設立し社長に就任。

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