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有名77大学人気284社就職実績 有名企業に強い大学ランキング=1位・一橋大、2位・東工大、3位・慶應大…〈サンデー毎日〉

「サンデー毎日9月5日号」表紙
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 コロナ禍で採用減続出でも「狭き門」こじ開けた大学は

 有名企業はいつでも狭き門。特にコロナ禍での就活を余儀なくされた2021年卒の学生にとって、より厳しさを増すことになったようだ。そうした環境の中で有名企業に多くの学生が就職した大学はどこなのか、探ってみた。

 大学生の就職活動における大企業の人気は高い。リクルートワークス研究所の調べによると、21年卒の学生が従業員規模5000人以上の企業を希望する割合は、民間企業への就職希望者全体の16・2%を占める。

 しかし、多くの就活生が目指す大企業の門戸は狭い。21年卒の全体の求人倍率が1・53倍なのに対し、従業員規模5000人以上に限ると0・6倍(リクルートワークス研究所調べ)となる。

 21年卒の学生に関しては、ただでさえ狭き門がコロナ禍と相まって、さらに狭まった。日経平均株価指数の採用銘柄や会社規模、知名度、大学生の人気企業ランキングなどを参考に大学通信が選定した有名企業400社の就職者数が減少しているのだ。回答があった570大学の就職者総数は5万3310人で、20年を7481人下回っている。

 業種別で最も減ったのは採用がストップした航空。21年度の就職者は254人で前年の10%程度まで落ち込んでいる。コロナ禍の影響であり、デパートも3割減となった。これらの業種を目指していた学生は、どのような就活を行ったのだろうか。リクルートキャリア就職みらい研究所所長の増本全氏に聞いてみた。

「何を重視して志望業種を選択したのかを、今一度捉え直しながら、それが叶(かな)う別な働き先を選び直していました。また、志望業種に再チャレンジするための能力開発ができる企業を選ぶという選択もあったでしょう」

 突然のコロナ禍で、就活のオンライン化や採用数を絞る企業が出るなど就活環境が激変する中でも、大学全体の平均実就職率は85・4%で、前年から2・3ポイントの落ち込みでとどまった。学生の意識の切り替えと、大学の支援の成果が一因と言えそうだ。

 それでも、キャビンアテンダントを中心とした航空やデパートの採用減は、女子の就職を直撃した。女子大や女子学生の比率が高い大学で有名企業400社の実就職率が大きく下がる傾向にある。

 航空やデパートほどではないが、大半の業種の就職者数が前年を下回っており、特に出版、造船、ガス、鉄鋼・金属などの減少幅が大きくなっている。就職者数が増えているのは、外食、電力、医薬品などわずかだ。

 大企業の就職者数が減少する中、各大学の就職状況はどうなっているのか。「有名企業に強い大学ランキング」を見ると、1位は一橋大で、2位が東京工業大、3位が慶應義塾大など、例年通り、難関大の強さが際立つ結果となった。難関大の学生が有名企業の就職に強い要因について、前出の増本氏が説明する。

「難関大合格という目標に向かい、継続的にトライ&エラーのプロセスを経た学生は、その経験が力となり大学でも次の活動に生かすという、好循環が生まれると思います。努力して途中のプロセスで失敗しても、修正して乗り越えてきた経験は企業の評価が高い」

 自ら考えて動くことができる学生が多い難関大の中でも、学生のさまざまなチャレンジを後押しする大学は強い。例えば、関西学院大は、留学や他学部での体系的な学び、社会での実践学習からなる「ダブルチャレンジ制度」がある。「自主マスコミ講座」を開講する法政大は、マスコミの就職に強いことで知られる。21年卒の放送への就職者数は18人で、慶應義塾大(71人)や早稲田大(67人)、東大(25人)、上智大(19人)に次ぐ多さだ。

 歴史浅い国際教養大 国際人材養成で結果

 ランキングに戻ろう。一橋大は昨年の東京工業大と入れ替わって1位になった。両大学は有名企業の実就職率を50%以上と高いレベルで維持しながら、順位の入れ替わりはあるものの、常に2位以内を保っている。

 大半の大学の実就職率が下がる中、一橋大は京都工芸繊維大(17位)とともに、前年を上回る数少ない大学。就職先は、楽天グループ(37人)が最多で、みずほFG、三井住友銀行(各15人)など。東京工業大の就職者が多い企業は、ソニーグループ(43人)、日立製作所(29人)、富士通(28人)などで、製造業に強い。

 ランキングは、東京工業大以外にも、豊田工業大(4位)、東京理科大(5位)、名古屋工業大(7位)、電気通信大(8位)など、理工系大学が3分の1を占める。就活コンサルタントは言う。

「理工系大学は、AIやロボットなどの発達で事務職の採用が減少する中、その影響を受けにくい。製造業など理系的な業種以外にも、金融や商社、コンサルティングなど、文系色が強い企業でも、理系の知識を生かした職種が数多くあることも、有名企業に強い要因となっている」

 理工系学部の学生数が多い、大阪大(9位)、名古屋大(12位)、横浜国立大(13位)、東北大(16位)などの国立総合大学の実就職率も高くなっている。

 私立の総合大学では、最難関の慶應義塾大がランクイン。卒業生7938人の大規模総合大学ながら、その4割が有名企業に就職している。ちなみに、19年卒と20年卒は、就職者2人以下の企業を公表していなかったため実就職率未掲載としている。就職者が多い企業は、東京海上日動火災保険(82人)、三菱UFJ銀行(76人)、みずほFG、三井住友銀行、アクセンチュア(各70人)など。

 慶應義塾大を上回る、卒業生が1万2281人の早稲田大は10位。実就職率は慶應義塾大に及ばないが、有名企業の就職者総数は3402人で全国トップだ。就職者が多い主な企業は、富士通(85人)、NTTデータ(81人)、楽天グループ(78人)と、金融が多い慶應義塾大に対し、情報通信関係の企業が上位に来ていることが特徴だ。

 早慶以外の私立総合大学では、上智大(14位)、同志社大(20位)、明治大(24位)、青山学院大(28位)、立教大(30位)といった難関私大がランクインした。 このように難関大の学生が有名企業に強いのは、増本氏が言うさまざまなことにチャレンジする資質に加え、大学の環境も影響しているようだ。採用コンサルタントの谷出正直氏は言う。

「面接に進む学生の人数を選抜するためのエントリーシートや適性テストの評価は、大学の難易度に比例する傾向にあり、結果として難関大の学生が多くなりやすい。さらに、準備が早い学生が成功する傾向が強い就活において、難関大合格に向けて計画的に受験勉強をしてきた学生は、早く就活を始める傾向が強い。就職に対する意識が高く、就活を早く始める学生が多く集まるという環境も大きいでしょう」

 難関大に伍(ご)していく大学は出てこないだろうか。受験生や保護者の関心が、就職率から就職の質に移る中、大学が生き残る上で重要な要素となる。04年開設の国際教養大は歴史は浅いながらも、グローバル人材の養成に力を入れて6位に入っている。有名企業に強い大学ランキングに、風穴を開ける大学の出現に期待したい。各企業の大学ごとの就職者数は、「有名77大学 人気284社就職実績」で確認してほしい。

 8月24日発売の「サンデー毎日9月5日号」には、「有名企業に強い大学ランキング」「有名77大学 人気284社就職実績」の各表を掲載しています。

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