経済・企業 日本株 上昇相場へ
リスク1 緩和縮小の現実味 パウエル議長には重い決断 任期の2月までは株高基調=市岡繁男
9月21・22日の米連邦公開市場委員会(FOMC)は「量的緩和政策の縮小(テーパリング)」を11月から実施することを示唆し、米連邦準備制度理事会(FRB)による資産買い入れを段階的に減らしていく方向を打ち出した。
しかし、FRBのパウエル議長が“本腰”のテーパリングを実施できるかは怪しい。それは世界初のテーパリングを行って「株安」を招いた日銀の失敗を知っているからだ。(日本株 上昇相場へ)
ITバブル崩壊を受けて速水優総裁時代の日銀は2001年、ゼロ金利政策を復活させると同時に、世界初の量的金融緩和政策を実施した。株式市場は息を吹き返し、05年末には中小型株主体の東証2部指数が01年比で3倍近くに達するなど、再び過熱した(図1)。
06年3月、福井俊彦総裁率いる日銀が量的緩和政策の解除に踏み切ると、中小型株を中心に総崩れとなり暴落。09年3月の大底まで3年も下落が続いた。当時は、株安の発端を06年1月に起きた実業家の堀江貴文氏が経営するライブドアによる不祥事と見る向きが広がったが、暴落の真のトリガーは日銀が引いたのだ。
これを教訓とするFRBがテーパリングに慎重になるのは、米国の民間年金基金が、株式と投資信託を合わせた運用比率が8割という巨大な規模に達しているからだ(図2)。
最高値を更新している米株市場が失速すれば、年金基金はピンチに陥る。これを恐れるパウエル氏がテーパリングに本腰を入れられないとすれば、少なくとも議長の任期である来年2月まで米株は上昇基調が続くだろう。
だが、それより先は、インフレの進行を無視できなくなり、FRBは量的緩和終了どころか利上げに追い込まれるのではないか(98ページ「グラフの声を聞く」参照)。
(市岡繁男・相場研究家)