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「世間」の名の下に小室批判続けるメディアの罪 緊急連載・社会学的皇室ウォッチング!/11=成城大教授・森暢平〈サンデー毎日〉

バッシング報道は渡米後も続いた
バッシング報道は渡米後も続いた

 眞子さん(30)と小室圭さん(30)はニューヨークで新生活を開始した。11月14日の米国到着後もワイドショーや週刊誌の一部は小室さんに否定的な報道を続けている。世間の掟(おきて)に背いた小室さんに対するマスメディアの集団主義的圧力はさすがに行き過ぎを感じる。

 小室さんは、母親の元婚約者Aさんと11月12日夜に面会し、金銭トラブルを解決するための合意文書を取り交わした。約400万円の解決金を渡す形での和解が成立したのである。翌朝、Aさんは手記を公表し、そのなかには「私はおカネを貸したほうの立場です(略)交渉を通じて向こう(小室さん)から謝罪の言葉のようなものはありませんでした」との一節があった(FRIDAYデジタル11月13日)。

「謝罪」という言葉に飛びついたのは、デイリー新潮(11月16日)であった。「担当記者」の話として、「普通なら必要以上に世論を刺激しない戦略を採るはずです。とりあえずは、元婚約者に最大限の礼を尽くす。何よりも、これまでのことを真摯(しんし)に謝罪する。そうすれば、少しは世論も軟化したかもしれません」と伝えた。

 この「謝罪」という言葉には引っ掛かりを感じる。小室さん母子は、Aさんから金銭的援助を受けていた。婚約期間中のことなので小室さん側は貸借だとは認識していなかったが、Aさんは「返してほしい」と思っていた。認識の違いがトラブルになった。

 過去の援助について感謝の意を示すべきだという主張なら分かる。ただ、母親を含め、何を謝罪すべきなのだろうか。

 国民の名で小室さん否定

 金銭トラブルは解決した。しかし、小室さんの姿勢を、なお悪(あ)しざまに言うコメンテーターは少なくない。

 フジテレビ系の「バイキングMORE」(11月15日)に出演したモデルのアンミカさんは、今年4月に発表された小室文書について、「(小室さんがもっと)相手に寄り添っていたら、もうちょっと譲歩するんじゃない。(略)勝ちとか、負けとか、不利とか。そういう言葉が前に進んで……」と小室さんには「心」が欠けていると批判した。

 同じ番組で、司会の坂上忍さんも「国民感情とか、世論っていうのに、もうちょっと寄り添っていたら、こういうことにはなっていなかった」と、素直に解決を喜べない気持ちを述べている。

 この番組には盛んに「国民」「世論」というキーワードが出てくる。皇室ジャーナリストの近重幸哉さんは、「国民が気にするような問題がなければ、すんなりと認められた結婚だった」と国民を引き合いに出し、トラブルに迅速に対応できなかった小室さんを批判した。

「バイキング」の出演者たちが繰り返す国民、世論とは、すなわち「世間」のことだろうと思う。

 歴史家の故阿部謹也氏が明らかにしたように、世間は、西欧的な個人を前提とした「社会」とは概念を異にする。世間は、集団による文化的圧力として機能するのである。異質なものは排除され、嫉妬が個人への足の引っ張りにつながる。贈与・互酬性が重要であり、相手から何かをしてもらったら、それへの返礼は事実上の義務である。

 小室さん母子が「ありがとう」と言わないと批判する人は、社会でなく、世間に軸足を置いていると言える。

 TBS系の「ゴゴスマ GO GO! Smile!」(CBCテレビ制作、11月15日)では、司会の石井亮次さん(フリーアナウンサー)が、「ウソでも『すんません、ありがとう』。舌を出してね、こっちで舌を出しながら。僕が小室さんなら、『すんません。ありがとう』……」と頭を何度も下げるおどけたジェスチャーを演じてみせた。これを受けた元宮崎県知事の東国原英夫さんも「言いたいことはいっぱいあ」ったとしても、謝って早く金を払うべきだったと主張した。

 こうした人びとにとって、和解自体は重要ではない。小室さんが世間の掟に反したことが永遠に糾弾すべき対象なのである。

「ゴゴスマ」にも出演した近重さんは「お互いが理解し合えて、納得できる状態で終わることを秋篠宮殿下は願われていた」とした。そのうえで、そういう解決ではなかった今回の和解は残念であり、「早い時点でお互いが和解する気持ちを持って解決できるような方と(眞子さんは)結婚してほしかったというのが国民の気持ちではないか」と主張した。新婚生活をすでに始めている小室さん夫妻を、国民の名のもとで否定したコメントに聞こえた。

 ワイドショーや週刊誌なんて所詮、世間に迎合するメディアであると安易に批判しているわけではない。国民や世論を持ち出すとき、それが個人を抑圧する集団主義を背景にしていないかどうか、コメンテーターや司会者は常に胸に問うべきだということを言いたいのである。

 行き過ぎた推測

 解決金の原資についても行き過ぎた推測があった。「バイキング」で近重さんは、「400万円には眞子さんのお気持ち(フリップボードの表記は「眞子さんからの援助」)が入っているんじゃないかってことを国民が感じても仕方ない」と指摘した。

 トラブルの当事者は、小室さんの母親である。解決金を払うべき主体は母親であって、小室さんでも、眞子さんでもない。それを、「眞子さんからの援助」があると国民が考えても仕方がないという批評には何の根拠もない。このような推測が許されるなら、どのようなことも疑惑に仕立てることが出来てしまう。

 ここでもやはり国民、すなわち世間が立ち上がっている。そして、解決金の原資を明らかにしないこと自体が「疑惑」にすり替わり、「解決金400万円出所は黙秘(ダンマリ)」というタイトルの記事ともなる(『女性自身』11月30日・12月7日合併号)。

 小室さんは帰国時にはポニーテールの長髪が話題になり、出国時には、ダースベイダーのTシャツが注目された。世間は、外見の逸脱を問題にしがちである。

 米国での新生活によって、世間の目から逃れたはずの小室さん夫妻だが、到着当日、海外メディアによって、マンハッタンのマンションが特定され、入居する様子がパパラッチされた。

 二人が自由に生活を楽しめる日がいつ来るのかと心配になる。

もり・ようへい

 成城大文芸学部教授。1964年生まれ。博士。毎日新聞で皇室などを担当。CNN日本語サイト編集長、琉球新報米国駐在を経て、2017年から現職。著書に『天皇家の財布』(新潮社)、『近代皇室の社会史―側室・育児・恋愛』(吉川弘文館)など

「サンデー毎日12月5日号」表紙
「サンデー毎日12月5日号」表紙

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