2022年大学入試:どうなる「改革2年目」入試 私立「一貫校」が巻き返しか〈サンデー毎日〉
総合型選抜や学校推薦型選抜が始まり、いよいよ入試シーズンの幕開けだ。学校からは「来年は東大合格者が増えそう」など、期待の声が聞こえてくる。コロナ第6波襲来が懸念される中、来年入試を勝ち抜く進学校はどこか。
2021年度(21年4月入学)から大学入試は大きく変わる予定だった。当初の予定では、民間英語試験の成績を活用して英語の4技能(「読む」「聞く」「書く」「話す」)を求めることにし、国語と数学で記述式問題の導入が計画されていた。しかも成績は1点刻みではなく、段階評価にする予定だった。これに対して大学や高校が猛反発。最終的にはいずれも実施されないことになった。結局、改革は小規模で、従来の大学入試センター試験と大きくは変わらなかった。変わったのは入試などの名称で、センター試験が大学入学共通テスト、AO入試は総合型選抜、推薦入試は学校推薦型選抜、一般入試は一般選抜になった。
初年度は共通テストの志願者は激減した。コロナ禍の休校期間もあったため例年の2回実施を3回実施にしたものの、最後のセンター試験と比べて2万人以上減った。センター試験時代を含めて最大の減少だ。中でも減ったのは浪人生で2割減だった。今春から始まる入試改革を懸念し、20年度のうちに大学入学を決めた受験生が多かったとみられる。
しかも結果的には、問題文が長文化したにもかかわらず、センター試験よりくみしやすかった。そのため平均点が昨年より上がった。22年度は前年の平均点が高かった反動で、難化するといわれている。センター試験も導入2年目は平均点が下がっている。ただ、こればっかりは、ふたを開けてみないことにはわからない。また、コロナ禍によって今春顕著だった地元大学志向が、来春に向けては弱まってきているという。駿台教育研究所進学情報事業部の石原賢一部長がこう話す。
「地方の受験生も来年は成績トップ層が東京圏や近畿圏の難関大学を視野に入れています。しかし、これもコロナ禍の感染状況が変わったり、共通テストが難しくなって平均点が下がったりすれば、地元志向が強まる可能性もあります。模試の結果を見ると、東大志望者は理系だけでなく文系でも増えています。受験生に難関大志向が強まっているのではないでしょうか。受験生の大学選びも、難関大を目指す受験生と、入れる大学を目指す受験生との二極化が始まっているのかもしれません」
地元志向から首都圏の大学で、軒並み地方からの志願者が減っている。一方、近畿圏はそこまでではない。こう見ると、やはり連日の報道などで「東京の感染拡大がひどい」との印象を受験生、保護者が持ったことで、敬遠されたのではないだろうか。さらに少子化で受験生が減り、入りやすくなっていることも、難関大に人気が集まる大きな理由だろう。
私立大は今春、大きく志願者を減らし、準難関以上のほとんどの大学で倍率が下がった。これで難関大志向が高まりそうで、実績を伸ばす学校も出てきそうだ。 また、近年では人気に歯止めがかかっていた最難関学部の医学部だが、来春は人気が復活しそうだという。石原氏が展望する。
「今春と同様に国公立大前期の志願者は増えるでしょう。まだまだ人気は根強いと思います。医学部の志願者減は落ち着いてきており、多浪生や女子の合格の壁がなくなり、浪人生も減っている状況で入りやすくなっています。人気復活はコロナで医療系に関心を持つ受験生が増えたこと、コロナ不況など先行きが不透明な中で、手に職をつけておきたい受験生が増えていることが影響しているのではないでしょうか」
医学部占有率で強みを見せた地方私立校
東大、京大と国公立大医学部の合格者数を学校別に集計し、その人数が東大・京大のほうが多いのか、医学部のほうが多いのかを見ると、東大の地元である関東・甲信越、京大の地元である近畿を除き、他の地方では医学部合格者のほうが多い。地方トップ校は公立高を含めて、医学部人気が高いことがよくわかる。
さらに、国公立大合格者に占める医学部の割合を見てみよう。医学部合格者数を国公立大合格者数で割った結果が「医学部占有率」になる。トップは久留米大付設(福岡)で50%と断トツだ。国公立大合格者の2人に1人が医学部ということになる。国公立大合格者数180人で、医学部合格者は90人だった。
2位はラ・サール(鹿児島)の38・7%、3位は北嶺(北海道)の38・5%、4位は愛光(愛媛)の37・2%だ。ここまで首都圏と近畿圏以外の中高一貫校が並ぶ。5位は暁星、6位は桜蔭(ともに東京)だった。桜蔭は東大合格者数が7位、国公立大医学部合格者数が9位タイといずれもトップ10に入っている。首都圏は私立大が数多くあるため私立大志向が強い。全国でも唯一といっていいほどで、その他の地方では圧倒的に国公立大が人気だ。ところが、最近では首都圏でも国公立大志向が強くなってきている。トップ20はすべて私立、国立の中高一貫校だ。入試改革元年は、特に中高一貫校が大学合格に強みを発揮した。
中学受験に詳しい安田教育研究所の安田理代表は、各地の一貫校の現状について次のように語る。
「首都圏で今、中学受験をさせている保護者の世代が小学校6年生の頃は、医学部志向は高くないですし、それは親となった今も変わっていません。昔は中高一貫教育が大学進学に有利との考えが強く、受けさせたご家庭が多かったのでしょう。今も医学部にこだわりがあるご家庭を除き、中学受験ではそんなに医学部志向は高くありません。しかし、地方によっては『医学部進学を目指すなら中高一貫校』という考えもあるようです」
近年は公立高も改革が進み、大学合格実績が伸びている。日比谷(東京)は今春、東大合格者が昨春の40人から63人に増え、横浜翠嵐(神奈川)も26人から50人にほぼ倍増、浦和・県立(埼玉)も33人から46人に増えている。
ただ、今春の高校卒業生は15年に中学に入った生徒だった。実は、同年は首都圏の中学入試の志願者が底で、中高一貫校進学を諦めて公立中に進学した人が多かったことになる。これが公立高の躍進の一因だった可能性もある。来春は首都圏の公立高がさらに実績を伸ばせるのか。中高一貫校が巻き返すのか。「全国374進学校 有名大学合格実績」も踏まえ、志望校選びの参考にしてほしい。