2022年入試:中高一貫全国325私立中最新入試情報 コロナ2年目も受験生増か「狙い目」「お得」な学校は?〈サンデー毎日〉
コロナ禍2年目の首都圏中学入試は、来年も受験生数が増加傾向で厳しい入試が予想される。どのように受験校を選べば合格を勝ち取れるのか。最新偏差値と今春入試データから「狙い目の学校」と「伸びている学校」を探った。
2021年はコロナ禍で人気がアップした首都圏中学入試だが、22年はどうか。中学受験情報誌『進学レーダー』編集長の井上修さんが次のように話す。
「秋の日能研模試の受験者数は昨年比微減ですが、一昨年より増加しています。他塾模試の状況も合わせると、来年の中学受験生数は、今年並みか微増と見ています」 コロナ禍2年目の来年も、中学受験人気の勢いは衰えていない。
首都圏では、1月に埼玉と千葉で中学入試が始まる。東京と神奈川は2月1日が入試解禁日で、この日に第1志望校を受ける受験生が多い。そこで、1日の受験校選びが合格のカギになる。
グラフ「首都圏2月1日入試の偏差値と2021年競争率」をまとめてみた。1日に入試を実施する東京と神奈川の学校の最新偏差値と21年入試の実質競争率(受験者数÷合格者数)の関係を示したものだ。偏差値(横軸)は真ん中の50を基準にした。競争率(縦軸)は男子は2・8倍、学校数が多く競争率が低めの女子は2・5倍を、高低を分ける一つの目安とした。
グラフはこう見てほしい。例えば偏差値が高く、競争率も高い学校は厳しい入試になることが確実だ。しかし、偏差値が高くても競争率が低めならば、合格するチャンスが高い「狙い目の学校」で穴場といえよう。逆に、偏差値が低めでも競争率が高ければ「伸びている学校」として注目されている証しで、今後のレベルアップが期待できるお買い得校と考えられる。
グラフの右上は、偏差値も高く競争率も厳しい最難関校のエリアだ。武蔵や海城、雙葉、渋谷教育学園渋谷、広尾学園などのトップ進学校や早稲田実業学校、慶應義塾普通部など早慶の付属校が並ぶ。MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)の付属校も多く見られる。
男子の狙い目の学校では、芝、成城、世田谷学園、東京都市大付、桐朋、本郷、鎌倉学園、サレジオ学院、逗子開成などの男子進学校が多い。井上さんはこう見る。
「2月1日午前は他の入試回より比較的合格しやすいケースが多い。無理に実力以上の学校を狙わずに、合格可能な学校を確実に狙うのも堅実な併願プランです。特に大学合格実績が好調な攻玉社などは1回目が狙い目です」
午後入試も多い。安田教育研究所代表の安田理さんが話す。
「最近は午後入試の実施校が増えて受験生が分散し、各校の競争率が下がっているので狙いやすくなっています。算数1教科入試の学校が増え、算数が得意な受験生が選んでいます。その中で、東京都市大付は2教科(国算)か4教科(国算理社)の選択なので、算数が少し苦手な受験生も受けやすく、狙い目だと思います」
女子の狙い目の学校を見てみよう。ここでは学習院女子や立教女学院、東洋英和女学院、恵泉女学園、横浜雙葉、横浜共立学園などの伝統校やキリスト教系の学校が多い。安田さんが説明する。
「これらの伝統校は素晴らしい教育環境です。施設設備が整い、図書館の蔵書数も多い。主要教科だけでなく芸術系教科も充実しています。人生が豊かになる素養が身につけられる学校だと思います」
また、頌栄女子学院や田園調布学園、鷗友学園女子など大学合格実績が好調な進学校も見られる。普連土学園は小規模な女子校ながら、21年春の理系学部進学者が37・5%にものぼる。しかも医療看護系だけではなく、理工系への進学者が多いという。「女子の学力上位層は理系志向が強いが、この比率は難関女子校でもあまりないのでは」と安田さんは言う。
男女ともにグラフにある東京都市大等々力、東京農業大第一、神奈川大付、山手学院、公文国際学園、桐蔭学園中教などの共学校も、教育力への評価が高くお得な学校で、狙い目だろう。
次に、グラフ左上の伸びている学校を見てみよう。安田学園はもともと文武両道の男子校だったが、14年に共学化し先進と総合の2コースを設置。無理のない丁寧な指導で基礎学力を伸ばし、自ら学び、考える授業スタイルで思考力や表現力も伸長している。男子だけでなく女子にも人気が高い。
日本大や日本大第二など日本大付属校も目立つ。目黒日本大は19年に付属校となり人気がアップ。日本大の付属校は全般的に志願者が増加している。早慶など難関大付属校より入りやすく、併設の日本大は文系・理系ともに学部が多い総合大学で、子どもが将来学びたい学問に迷っても進学しやすい。さらに、他大学受験に対応したカリキュラムも備えられていて将来の進路選択への安心感もある。同様に東洋大京北も、東洋大への進学だけでなく、他大学合格実績への期待が高い学校だ。
山脇学園は模試の志望者が大幅に増加しているという。交通至便な都心にありながら施設が充実している。安田さんが言う。
「中3で英語チャレンジプログラムと科学研究チャレンジプログラムを実施し、22年から高校にサイエンスクラス(仮称)を設置して学びを深めていきます。このエリアにいるような学校ではなく、さらに伸びそうです」
一方、関西圏は私立中入試統一解禁日の1月15日入試で同様のグラフ「関西圏1月15日入試の偏差値と2021年競争率」を作成。首都圏と比較して受験生が少なく競争率が低いため、競争率の高低を分ける目安のラインを1・8倍に置いた。日能研関西・進学情報室室長の森永直樹さんが来年入試についてこう話す。
「日能研模試では受験生数は前年並みですが、他の模試で減少しているところもあり、来年の受験生は少し減るかもしれません」
狙い目の学校では、洛星、六甲学院、明星などカトリック系男子校が目立つ。森永さんが言う。
「高槻や須磨学園などの共学校人気に押され、近年は競争率が下がり狙い目になっています。その印象が受験生に浸透し、来年は志望者が増えるかもしれません」
清風、滝川、京都女子なども狙い目だ。白陵は人気が回復し、志望者が増加傾向だという。
伸びている学校では、立命館宇治と立命館守山が目立つという。大学付属校では同志社や同志社香里、立命館の人気が高い。併願校選びの過程で、これらの学校が保護者の目に留まり、良さが認識されて人気が高まったという。そのほか関西大系付属校や進学付属校の近畿大付、近畿大付和歌山、甲南、甲南女子などが見られる。19年に須磨学園と法人合併した夙川は、志望者数だけでなく学力レベルもアップし難化が止まらなそうだ。