法務・税務

広大地の制度は廃止も、特例の適用で相続税を取り返せる可能性=荒井正巳

見逃しがちな広大地還付 制度廃止も特例の適用で 相続税を取り戻せる可能性=荒井正巳

 2017年12月31日までに先祖代々の広い土地を相続した人は、相続税申告書を確認したほうがよい。(税務調査)

 相続税申告時に土地の評価額が最大で65%減額される「広大地評価」というものがある。税のプロであるはずの税理士にもそれぞれ得手不得手があり、すべての税理士が相続税を得意とするわけでもないため、申告時に活用されていないケースが散見される。相続税の節税効果が高いこの制度は、税制改正によって17年12月31日に廃止になったが、一定の要件を満たせば23年10月31日まで適用して申告をやり直し、相続税を取り戻すことができる。

 具体的には、17年12月31日までに対象となる土地を相続し、相続発生日から5年10カ月以内に更正の請求の手続き(一度納付した相続税を国から返してもらう手続き)を行うことで、広大地の評価減が適用できる可能性がある。

特例適用の要件

「広大地」とは、次の四つの要件を満たす土地である。(1)その地域における標準的な宅地の地積(土地の面積)に比べて著しく地積が広大な宅地(3大都市圏は500平方メートル以上、それ以外1000平方メートル以上)。(2)開発行為を行う場合に、道路など公共公益的施設の負担が必要。(3)大規模工場用地に該当しない。(4)中高層の集合住宅用の敷地(3階以上のマンション敷地)に該当しない(周辺にマンションがない、容積率300%未満)。

 広大地の4要件に加えて、普通住宅地区または普通商業・併用住宅地区または中小工場地区の土地であるという要件があり、評価減額割合は500平方メートルの42・5%減から5000平方メートル超で65%減までとなっている。以上は、17年12月31日までに相続した場合だ。

 では、18年1月1日以降に相続した場合はどうなるか。17年までの「広大地」特例に代わって設けられたのが、「地積規模の大きな宅地の評価」である。新しい制度も土地の評価額を減額できる制度だが、従前の制度よりも判断基準が明確になり、特例を受けられない土地が細かく明示されている。よって評価の特例を受けられるのに、受けていないケースが減っていると思われる。

 これらの制度ができた趣旨は、広い土地は高額になるので個人の一般住宅用地としてなかなか買い手がいない。相続人は不動産開発業者に売却せざるをえなくなり、不動産開発業者が個人でも買いやすい広さに区分けする。その際、区分け次第だが、土地の中に道路を引く必要がある。その道路の部分は有償で売却できないので、道路面積分の売却額が低額になる。そこで、その道路面積分の評価を減額するのがこの制度の趣旨である。

 いずれにしても16年3月以降に500平方メートル以上の土地を相続した人は、広大地または地積規模の大きな宅地の評価の特例を受けているか、相続税申告書の確認を勧める。特例を適用している場合には、相続税申告書の中の「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」(図)に記載があるはずだ。専門家に相談すると、まだ間に合うかもしれない。

(荒井正巳・NA税理士法人代表)

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事