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週刊エコノミスト Online 森永康平の おカネの真相

お年玉を“押し活”に使うも良し 正月は親子でお金について学ぶ絶好のチャンス=森永康平

お年玉の使い道は?
お年玉の使い道は?

 今年もあとわずか。年が明ければ街もテレビ番組も一斉にお正月ムードになる。子どもたちの楽しみの1つはお年玉だろう。普段もらっているお小遣いとは桁が違うので、筆者も子どもの頃は、お年玉で何を買おうかとワクワクしたものだ。さて、今回は、お年玉を通じて子どもとお金について学ぶ方法を紹介しよう。

「無駄遣いするな」はほどほどに

 皆さんはお年玉をもらうときに、親から何と言われただろうか。自身がお年玉をあげる立場にある場合は、これまで子どもや孫に何と言ってお年玉を渡してきただろうか。何を言ったか覚えていないという人も多いかもしれないが、おそらく「無駄遣いしちゃダメだよ」といった類いの発言をしているのではないか。

 筆者は金融教育ベンチャーのマネネを立ち上げて4年目になるが、12月、1月に講演をする場合に、参加した保護者たちに前述のような質問をしてみると、やはり「『無駄遣いするな』と言って手渡している」というような答えが多く返ってくる。

 これは、決して間違ってはいない。しかし、特に深い意図もなく頭ごなしに「無駄遣いするな」と説くのは、金融教育の観点からすると、あまりよろしくない。

お金を手にするたびに「選択」を迫られている

 シンプルに考えると、お年玉をもらった場合、「使う」か「貯める」か、という2つの選択肢がある。必ずしもどちらが正しいということは言えないが、その時点において最も満足度が高くなる選択をすべきだろう。ここで重要なのは、「使う」を選んだ場合、同時に「貯めない」という選択をしていることを意識させる必要がある、ということだ。私たちは常に、あらゆる場面で選択を迫られており、その結果の積み重ねが、現在の状態を生んでいるという意識を持たせなくてはいけない。

「推し活」と「スパチャ」のからくり

 さて、現代の子どもたちがお年玉を「使う」ことを選択した場合、どのようなことに使うのだろうか。筆者が子どもの頃はプラモデルを買ったり、ゲームソフトを買ったり、といった選択が一般的だったが、最近よく耳にするのは「推し活」と「スパチャ」だ。

 筆者が子どもの頃は、そのような言葉はなかったので、読者の中にも「そもそも言葉の意味が分からない」という人がいるかもしれない。そこで簡単に言葉の説明をしておこう。

 まず、「推し活」というのは、アニメやゲームにおける自分のお気に入りキャラや、アイドルなどを推すべく、グッズを買ったりする活動のことを指す。「スパチャ」はスーパーチャットの略で、YouTubeなどの動画配信プラットフォームにおいて、視聴者が配信者に「投げ銭」をすることを指す。

 親からすると、特に後者はいまひとつ理解できないため、「そんなことにお金を使うのは無駄遣いだ」と思ってしまうようだが、子どもたち自身が満足しているのなら、問題ではない。ただし、スパチャの仕組みをしっかり説明すると、考えを変える子どもたちが出てくる。

 スパチャの場合、仮に1,000円投げ銭したとしても、配信者に1,000円がそのまま届くわけではない。プラットフォーム側に3割近く取られてしまうし、iPhoneのアプリ経由でスパチャをすれば、更にapple側が一部を持っていってしまう。

 子どもたちの行為を頭ごなしに否定するのではなく、しっかりとからくりを教えることで、その使い道が本当に「最も満足度が高い」のかを改めて考えさせるのがいいだろう。

お金は社会を回っている

 お年玉をあげたときに、もし時間があれば、ぜひお金がどのように社会を回っているかを教えてほしい。筆者が親子向けに金融教育の講義をする際に、評判のよいコンテンツの1つが、まさに「親子でお金の流れを学ぶ」というものだ。

 子どもたちは、「お年玉は両親や祖父母からもらうもの」と思っている。それでは両親や祖父母はどこからお金をもらっているのか。小学校1年生から6年生まで、どの学年に質問をしても、子どもたちはしっかりと回答できる。「仕事をしてお給料としてお金をもらっている」と理解しているのだ。それでは会社などの勤め先は、どうやって従業員にお金を払っているのだろうか。この質問は、学年が上になるほど正確な回答が出てくるようになる。

お金は社会を回っている
お金は社会を回っている

 次に、お店で何かを買う場合についてだ。お金と商品を交換するわけだが、なぜお金を払うのかということも聞いてみよう。大人は成長する過程で頭でっかちになってしまうので、当然のように「商品の対価としてお金を払う」と答えるが、子どもに聞くと、様々な回答が返ってくる。その中でも素晴らしいなと思ったのは、「『ありがとう』の意味を込めてお金を払う」というものだった。その商品が自分の手元に届くまでには、その商品に関わった人がたくさんいるはずだ。たとえばチョコレートならば、カカオを育てて収穫する人、原材料に加工する人、配送する人、チョコレートを販売する人…など、様々な人たちの手を経て、店頭に並び、客の手に渡る。

 世の中には色々な仕事があって、色々な人がいる。そのような社会をお金がぐるぐると回っている。意外と子どもの方が大人よりも本質的な理解をしているのかもしれない。

重要なのは家庭での会話

 2022年は、これまで以上に金融教育に関する記事やニュースが増えるだろう。筆者のもとにも「家庭で金融教育をする場合に、どんな本を買えばいいか」「どの塾に行かせればいいか」といった質問が多く寄せられることが予想される。

 しかし、一番大事なのはまず子どもと会話をする時間をしっかりと確保することだ。そして、これまで紹介してきたように、生活の中に散在しているお金に関する話題を大人の側から投げかけて、何も期待せずにまずは会話を続けていこう。子どもは強制されることが嫌いだ。親が強制するのは、過剰な期待をしているからだ。

 我が家でも、親がお金に関する話題を振ったところで、相手にされないことが多々ある。ただ、だからといって、会話をしなくなるのはもっとまずい。とにかく会話をする時間を長く持つ。そのなかで、たまにはお金に関わる話も投げ入れてみる。これだけで十分だ。

 それだけでいいのか、と思われるかもしれない。ただ、これを実践するのは、意外に難しい。なぜなら、親がお金について豊富な知識がないと、話題を見いだすことすらできないからだ。

 2022年は、子どもに金融教育をするのもよいが、大人も一緒にお金の勉強をしていこう。

 おカネにまつわるさまざまな「真相」に迫る「森永康平の おカネの真相」は、随時掲載します。

森永 康平(もりなが・こうへい)

 金融教育ベンチャーのマネネCEO。経済アナリストとして執筆や講演をしながら、キャッシュレス企業のCOOやAI企業のCFOを兼務する。日本証券アナリスト協会検定会員。主な著書は『MMTが日本を救う』『親子ゼニ問答』。

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