フェイスブック問題で分かった落とし穴=笹木郁乃/4
フェイスブック問題で分かった落とし穴=笹木郁乃/4
SNS(交流サイト)は、何らかのモバイル端末を保有する世帯比率が96%を超える今、簡単に欲しい情報を気軽にチェックできる、日常生活に欠かせない存在となっている。そんな中、メタ(旧フェイスブック)のアプリ(フェイスブック、インスタグラム)がアイフォーンやアイパッドなどアップルのデバイスで使えなくなる可能性があるというニュースが流れた。(ゼロコストでPR・SNS活用術)
利用できない時の対策
発端は、個人情報の取り扱いなどメタの体制不備が内部告発により明るみに出たことだ。近年、欧米で社会問題化している。メタはアップルからシステム上で、人権問題などの対策を強化するよう要請されており、もし改善しなかった場合、フェイスブックやインスタグラムのアプリを「App Store」から削除すると警告されているという。アイフォーン利用者が約半数と言われている日本にとって穏やかではない。
しかし、これはフェイスブックやインスタグラムだけに限った問題ではない。他社のSNSでも、社内で不測の事態が起こり、急きょ使用停止やサービス中止に追い込まれるというリスクはある。また、社内体制の問題だけでなく、システム上の不具合や急な仕様変更など、SNSはいつどうなるか分からない不安定さがあると認識し、運用することが肝要だ。
そこで改めて、SNS活用の本来の目的を確認しておこう。目的は、SNSが発信する内容で共感を集め、最終的にメールアドレスなどの個人にダイレクトに情報を届けることができる手段を獲得することだ。SNSはそれを獲得するためのツールに過ぎない。それを踏まえた上で、常日ごろから運用しているSNSが「利用できなくなった場合」の対策を立てておく必要がある。
SNS運用で重要なことは、ユーザー数が多いという基準だけではなく、自身のターゲット層とマッチしているSNSであるかを見極めることだ。SNSに振り回されるのではなく、むしろ賢く「活用する」という意識を持ち、自分自身や自社の認知を広げることである。また、SNSは前述のような不安定さもあるので、一つではなく複数で運用しておくことがポイントだ。
その点、メールアドレスはプラットフォームに依存しているわけではないので、仕様変更や全リストが一気に消滅するというリスクも少なく、安全性は高い。
しかし、「メルマガはもう終わっている、これからはSNSの時代だ」と言う人もいるが、それぞれの特性を生かし、賢く活用するのが正しいPRの在り方だ。
実は、メルマガよりもLINE公式の方が最近は開封率も高く、私自身の場合も開封率はLINE公式の方がメルマガより3倍ほど高い。もちろん、LINE公式もいつどうなるかは分からないので、双方向から顧客にアプローチできると、より安心だ。
今回のフェイスブック問題を機に「SNSは怖いもの」と、危険視する人もいるかもしれない。が、現状で私たちユーザーがやみくもに恐れても意味がない。それよりもSNSで広がる共感や感動は、今後、新しい消費スタイルやモノ・サービス作りには不可欠と考え、良い部分をうまく活用することが重要だ。SNSで共感を広め、リストで信頼関係を築き、自分のコミュニティーを構築するという意識を持って顧客との関係性を深めていきたい。
(笹木郁乃・LITA代表)
対策その(1):一つのSNSに依存するのではなく、二つ以上のSNSを活用する
対策その(2):SNSだけで完結するのではなく、必ず「メールアドレスを登録してもらうフォーム」等へ誘導し、メールアドレスを入手する動線を確保しておく
■人物略歴
ささき・いくの
1983年生まれ。山形大学工学部卒業後、アイシン精機に入社(研究開発に従事)。その後、寝具メーカー・エアウィーヴに正社員1号として入社。売上高を5年で1億円から115億円の急成長へ貢献。鍋ブランド・バーミキュラの広報を経て、2017年から現職。著書に『0(ゼロ)円PR』など。