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脱炭素に商機、名実で首位商社狙う 石井敬太 伊藤忠商事社長

Interviewer 秋本裕子(本誌編集長) Photo 小峯弘四郞 東京都港区の同社東京本社で
Interviewer 秋本裕子(本誌編集長) Photo 小峯弘四郞 東京都港区の同社東京本社で

脱炭素に商機、名実で首位商社狙う 石井敬太 伊藤忠商事社長

 Interviewer 秋本裕子(本誌編集長)

── 2022年3月期連結の最終利益予想は7500億円と過去最高を更新する見通しです。

石井 新型コロナウイルスの感染拡大により世界経済は縮小しましたが、中国や欧米でワクチン接種が進み、収縮した経済が正常化に向けて急速に動きました。その結果、物資が供給不足に陥り、原油や石炭などの資源価格が高騰した要因が大きいです。当社は資源関連の利益比率は22年3月期予想で26%と大きくないですが、(中央アジアの)アゼルバイジャンでの石油採掘関連の権益の貢献もあり、プラスの効果が出ました。(2022年の経営者)

── 資源価格の変動に影響を受けすぎないよう非資源事業を育ててきた成果が出ています。

石井 システムベンダー子会社の伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)や携帯電話販売など情報・金融カンパニーの最終利益は、22年3月期に前期比72%増の1000億円となる見込みです。コロナ禍に伴う在宅勤務の広がりなど、デジタル化の需要を取り込んだことなどが奏功しています。このほか北米での住生活関連など住生活カンパニーの利益は4・2倍の見込みで、最高益に寄与します。

── 中期計画では「SDGs(持続可能な開発目標)」への注力を掲げています。

石井 脱炭素化やリサイクルを推進し、追跡可能な原料の使用を増やしていく考えです。40年までに事業で出た温室効果ガス(GHG)排出量から再生可能エネルギーの事業拡大などの削減貢献分を差し引いてゼロとした後、50年までにGHG排出量の実質ゼロを目指しています。他商社より意欲的な計画だと思っています。その一環として、発電用石炭を採掘する権益の売却を進めており、23年度までに一般炭事業から撤退する方針です。これによりGHG排出削減に勢いがつくと思います。

── 脱炭素は経営にプラスでしょうか。

石井 世の中が変化する時にはプラスです。当社が弱い資源関連では、今後は水素やアンモニアなどの新しいエネルギーに代わると見込まれ、天然ガスなど在来型資源で先行した他社とも対等に勝負できるようになり、チャンスと捉えています。ただ、脱炭素化は種まきに時間がかかるのも事実です。

ファミマで新機軸開拓

── 中計では「マーケットイン」も進めると強調しています。どういうことでしょうか。

石井 総合商社は、事業分野ごとにメーカーと取引関係を結んで商品を売ることが商売のやり方でした。作り手、売り手の発想に基づいていたわけです。ところが近年では、消費者が求めるものを売り手側が探求しなければ、モノは売れません。コロナ禍を契機に、在宅でも仕事ができると人々が気づき、住宅のあり方や食事の仕方にも変化をもたらしています。社会の価値観の変化がメーカーにも影響を与えているのです。

 当社は、コンビニチェーン子会社のファミリーマートなど消費者に直結するビジネスを多く手掛けていて、消費者の変化に関する情報をメーカーに提供できる立場にいます。消費者の視線で新しい仕事を作り出すことが成長の鍵を握るという意味で掲げました。

── 消費者関連の新ビジネスを開拓する組織である「第8カンパニー」を19年7月に設立しました。成果は上がっていますか。

石井 情報・金融カンパニーとも連携しながら、ファミリーマートの「新コンビニ化」を進めていることが成果の一つといえるでしょう。電子看板の新規事業を始めたり、郵便局の中に無人決済店舗を出店したり、ロボットが飲料を補充する実証実験を始めたりと、自動化やDX(デジタルトランスフォーメーション)を活用したコンビニへの布石を打っています。

── 6000億円を出資した中国中信集団(CITIC)など中国への投融資残高が大きいですね。経営難に陥っている中国不動産開発大手の恒大集団の行方に注目が集まっていますが、中国事業のリスクをどうみていますか。

石井 恒大集団に関する当社固有のリスクはないと考えています。CITICは国有企業で、中国が不動産規制に入るサインは当然のように知っていたので、かなり以前から恒大集団向けの債権を処理し、融資を限定しています。CITIC向けの投資は長期で考えており、うまくいかなかったら抜けるという発想ではありません。21年3月期には持ち分法投資利益として725億円が入っています。

── 総合商社で利益額や時価総額でトップになるなど力を付けてきました。現在の課題は?

石井 21年3月期の最終利益で当社がトップに立ち、現時点では22年3月期も当社がわずかにリードする予想ですが、株主資本など本当の体力では三菱商事、三井物産がまだ上です。財務面で両社と同等にならなければ、真の業界トップとはいえません。気を緩めれば、かつての定位置だった3位、4位に戻るという気持ちで仕事をし、社員にも発破をかけています。

(構成=浜田健太郎・編集部)

横顔

Q 30代のころはどんなビジネスマンでしたか

A 米ヒューストンに駐在していました。英語は得意ではなく、カーナビもない時代で、顧客先に出向く時にはいつも苦労していました。

Q 「好きな本」は

A 『海賊とよばれた男』(講談社、百田尚樹著)です。主人公で出光興産創業者の出光佐三さんのスケールの大きさに感銘を受けました。

Q 休日の過ごし方は

A 顧客とのゴルフが多いです。それがない時にはウオーキングをし、10~15キロは歩きます。


 ■人物略歴

石井敬太(いしい・けいた)

 1960年生まれ。早稲田大学高等学院、早稲田大学法学部卒業。83年4月伊藤忠商事入社、主に化学品部門を歩み、2014年執行役員、17年常務執行役員、20年専務執行役員を経て21年4月から現職。東京都出身、61歳。


事業内容:総合商社

本社所在地:大阪市北区

設立:1949年12月

資本金:2534億円(2021年3月末)

従業員数:12万5944人(21年3月末、連結)

業績(21年3月期、連結)

 収益:10兆3626億円

 最終利益:4014億円

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