週刊エコノミスト Online2022年の経営者

不動産再生と不動産動産を活用した資産運用と管理で強み。日本で増加する富裕層を焦点に=宮内誠・ビーロット社長

Interviewer 秋本 裕子(本誌編集長) Photo 武市 公孝:東京都港区の本社で
Interviewer 秋本 裕子(本誌編集長) Photo 武市 公孝:東京都港区の本社で

不動産再生と富裕層の資産運用に強み 宮内誠 ビーロット社長

 Interviewer 秋本裕子(本誌編集長)

── 新型コロナウイルス禍による不動産市況と業績への影響はどうですか。

宮内 市況はコロナ禍でも悪くありませんが、用途によりばらつきがあります。マンションと物流施設は需要が多く絶好調である一方、ホテル、オフィス、都心型店舗は引き続き厳しい状況です。オフィスビルの稼働率は回復していますが、コロナ前の状況には戻らないだろうとみています。(2022年の経営者)

 当社グループの業績は、コロナが発生した2020年12月期は黒字を確保したものの、14年の上場以来初の大幅減益でした。販売用として保有していた不動産の減損や、土地取得計画の中止による違約金発生などが影響しました。一方で、コロナ禍で不動産は景気耐性が強い面があることも示されました。景気が悪化しても賃貸マンションには継続的に家賃が入り、物流施設も物品の動きに支えられて収益が安定しています。そのため、21年12月期の営業利益は前年同期比2割増、最終利益は同3倍増の予想をしています。

── 特徴がある不動産会社ですね。

宮内 国内の富裕層や投資家を主な顧客として、価格が数億円規模の不動産を活用した資産運用サービスを手掛けています。取り扱う不動産はマンション、ホテル、オフィスビルからゴルフ場、納骨堂まで幅広く何でもやります。

 中でも、最も得意なものは不動産の再生です。再生というとマンション室内の修繕改修というイメージを持たれるかもしれませんが、当社の再生手法は多岐にわたります。例えば、接道がない土地にある1棟マンションの場合、周辺地権者に長い時間をかけて相談して、使用許可を得るための権利調整などをして、建物全体の価値が上がるようにします。

── 最初から不動産再生を手掛けていたのですか。

宮内 創業当時には資金がなく、不動産を取得できませんでした。そのため、富裕層へ向けた売買仲介や管理受託から始めました。多額の元手資金が不要で手数料を稼ぐビジネスです。借り入れができるようになった3~4年目くらいから、マンションの再生事業を始めました。

── 富裕層を焦点にする理由は。

宮内 日本の富裕層は増加傾向にある一方で、世界の富裕層と比べると資産運用が苦手という民間シンクタンクの統計があります。今後、当社のような資産運用アドバイザー・相続コンサルティングの需要は広がるとみています。

中規模物件に特化

── 扱っている物件は、どのようなものですか。

宮内 売上高が300億円弱の企業なので、財閥系デベロッパー(開発会社)が手掛けるような、誰もが知っているような大型オフィスビルはありません。資金力があれば1000億~2000億円の大型案件を手掛けることもできますが、大手デベロッパーとは役割が違うと思います。

 コロナ禍ではあえて、中古の1棟物マンションを積極的に取得しています。流動性と安定性が高いためです。この結果、販売用不動産残高は21年6月期で304億円と20年12月期の269億円から拡大しました。

── 国内では、現物不動産以外の小口不動産投資商品が個人に人気です。

宮内 当社でも不動産クラウドファンディングを21年4月から開始し、毎月募集しています。1口10万円以上で、多数の小口資金を集めて不動産を買う仕組みです。物件に応じて当社も出資します。募集額1000万~5000万円が毎回即時に完売しています。

 また、20年に約100億円でリート(不動産投資信託)の運用も始めました。23年に500億円規模で上場する計画です。国内外でこうした不動産投資のための小口の資金調達の手法は多様化しています。今後はブロックチェーンを活用し、デジタル証券(セキュリティートークン)で海外の投資家が参加する事例も出るでしょう。

── 今後、特にどういう事業に注力しますか。

宮内 23年度までの3年間の中期経営計画では、収益構造を変革して最終利益をコロナ前の水準に戻すことを目指します。投資開発事業に注力しながら、相続コンサルティングなどの手数料収益も増やします。富裕層とのつながりを強くし、コンサルティング収益への依存度を高める計画です。引き続き高い利益率でマンションも売却できると思います。

── 父はオリックスの宮内義彦シニア・チェアマンです。経営の相談をしたりもするのですか。

宮内 オリックスにとっても不動産は本業の一つで、当社との取引実績もあり、情報交換もします。ただ、お互いに上場企業としてのガバナンスがあり、その範囲内です。父は家では面白い関西人。スピーチのコツとして、一回は人を笑わせないといけないと教えられました。学ぶところが多いです。

(構成=桑子かつ代・編集部)

横顔

Q これまで仕事でピンチだったことは

A リーマン・ショック当時は創業に向けた準備中で、会社登記をした2008年10月10日には米株式市場で1000ドル下落、日本では大和生命が経営破綻しました。不動産市場も焼け野原になったようで状況はピンチでしたが、ゼロから始める楽しさを感じていました。

Q 好きな本は

A 歴史が好きなので『古事記』や『日本書紀』です。過去は教訓なので学ぶことが多いです。

Q 休日の過ごし方は

A 歴史ウオークや、古墳や神社を見に行くことです。


 ■人物略歴

宮内誠(みやうち・まこと)

 1969年生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業、ワシントン大学(米国)経営学修士。三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行、国内上場不動産会社の取締役を経て2008年ビーロットを設立し現職。兵庫県出身、52歳。


事業内容:不動産の投資開発・コンサルティング・マネジメント

本社所在地:東京都港区

設立:2008年10月

資本金:19億9253万円(21年7月末)

従業員数:182人(21年6月末、連結)

業績(20年12月期、 連結)

 売上高:264億8100万円

 営業利益:17億1900万円

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月9日号

EV失速の真相16 EV販売は企業ごとに明暗 利益を出せるのは3社程度■野辺継男20 高成長テスラに変調 HV好調のトヨタ株 5年ぶり時価総額逆転が視野に■遠藤功治22 最高益の真実 トヨタ、長期的に避けられない構造転換■中西孝樹25 中国市場 航続距離、コスト、充電性能 止まらない中国車の進化■湯 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事