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資源・エネルギー 鎌田浩毅の役に立つ地学

大分・宮崎で震度5強の震源 日向灘は「地震の巣」=鎌田浩毅

大分・宮崎で震度5強 「地震の巣」である日向灘/86

 宮崎県沖合の日向灘を震源とする大きな地震が1月22日未明に発生し、大分・宮崎両県で震度5強を観測した。その結果、九州と四国の5県で13人がけがを負い、ブロック塀の倒壊、水道管の破裂、沿岸部の液状化などの被害が出た。

 地震の深さは45キロで規模はマグニチュード(M)6・6である。日向灘を震源とする地震でM6・5以上となるのは、1996年の最大震度5弱の地震(M6・7)以来25年ぶりとなる。日向灘では、ユーラシアプレートの下にフィリピン海プレートが沈み込むことにより大きな地震が繰り返し起きてきた、言わば「地震の巣」である(図)。

 ここでは、さらに規模の大きなM7クラスの地震も60年以降、過去3回(61年、68年、84年)起こり、津波も発生している。また、日向灘は2030年代にM9クラスが見込まれる南海トラフ巨大地震の想定震源域内にある。

今回は「正断層型」

 ちなみに、南海トラフ巨大地震は、日本列島の下に沈み込む海のプレートと陸側のプレートの境界で起こる「プレート境界型地震」と呼ばれる。一方、今回の地震のメカニズムは、西北西─東南東方向に引っ張られるタイプの「正断層型」の地震だった。

 また、今回は震源の深さから、沈み込むプレートの内部で発生した地震であり、地図上では南海トラフ巨大地震の震源域に入るものの、プレート境界型地震とは異なるメカニズムと考えられる。すなわち、ユーラシアプレートの下に沈み込んでいるフィリピン海プレートに強い力がかかり、フィリピン海プレート内の岩盤が一気に破壊されて起きた地震なのである。

 なお、この海域で規模の大きい地震が起きると、将来の南海トラフ巨大地震を誘発する可能性がある。実は、日向灘では体で感じないようなゆっくりした地震、「スロースリップ」が時折起きている(本連載「第45回」参照)。

 このスロースリップが頻発し始めると、巨大地震につながることが懸念されるが、そのプロセスは現在研究段階である。したがって、スロースリップも含めて、この海域で起きる地震活動の推移を、注意深く見守る必要がある。

 今回の地震がプレート境界に与える影響については不明だが、南海トラフ巨大地震の発生の可能性を直接高めるものではないと考えられている。ちなみに、M9・1と想定される南海トラフ巨大地震の放出エネルギーは、今回の地震の約4000倍に相当し、東日本大震災より1ケタ大きい甚大な被害が予測されている。

 政府の地震調査委員会は1月13日、地震発生確率(1月1日現在)を公表し、今後40年以内に南海トラフでM8~9クラスの巨大地震が発生する確率を、前年の「80~90%」から「90%程度」に引き上げた。一方、今後30年以内の発生確率に関しては、前年と同じ70~80%に据え置いている。いずれも高い値には変わらず、引き続き警戒が必要である。

 次回は南海トラフ巨大地震臨時情報の仕組みについて解説しよう。


 ■人物略歴

かまた・ひろき

 京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授・名誉教授。1955年生まれ。東京大学理学部卒業。専門は火山学、地質学、地球変動学。「科学の伝道師」を自任。理学博士。

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