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資源・エネルギー 鎌田浩毅の役に立つ地学

南海トラフ地震への備え 4種類の「臨時情報」に注意/87

 1月22日に日向灘でマグニチュード(M)6・6の地震が発生し、大分県と宮崎県では震度5強を記録した。この海域は南海トラフ巨大地震が想定される震源域内にあるため、M6・8以上だった場合には気象庁から「南海トラフ地震臨時情報」が発表される。今回はMが基準以下だったため発表されなかったが、臨時情報の発表は日常生活にも大きな影響を及ぼす。臨時情報が発表された場合の展開を解説しておこう。

 臨時情報は南海トラフ巨大地震が想定される震源域内で、M6・8以上の地震やプレート境界でのスロースリップ(ゆっくり滑り、本連載「第45回」参照)など地殻変動の異常が観測された場合に発表される。これには、(1)臨時情報(調査中)、(2)臨時情報(巨大地震警戒)、(3)臨時情報(巨大地震注意)、(4)臨時情報(調査終了)──の4種類がある。

 (1)の「調査中」は、地震や地殻変動の異常の観測から5~30分後に発表され、有識者による臨時の評価検討会が開催中であることを示す。その評価検討会での評価を受けて、最短で2時間後には(2)~(4)のいずれかが発表される。

事前避難の必要も

 (2)の「巨大地震警戒」は、南海トラフ沿いのプレート境界でM8・0以上の地震が起きた場合に発表される。具体的には、全域が大きく揺れるケースもあれば、震源域の西側は動いたが東側はまだ動いていないというケースもある。

 後者の「半割れ」の地震が起きた時、次に東側でも大きな地震が起きることを警戒して、(2)「巨大地震警戒」が発令される。これが出されると、津波が襲ってくる沿岸部の住民は1週間程度の事前避難が求められる。

 次に、想定震源域でM7以上の地震が発生した場合には、「一部割れケース」として取り扱われる。この他、ひずみ計などでスロースリップが観測された場合は、「ゆっくり滑りケース」と判断される。こうした二つの場合に、(3)「巨大地震注意」が発令される。そして、(2)と(3)のいずれにも当てはまらない場合は、(4)「調査終了」となる。

 南海トラフ巨大地震の想定震源域は、今回の日向灘から静岡県まで広い範囲が含まれている。臨時情報が発表されたら、国や自治体の呼びかけに従い、後発の大規模地震に備えて直ちに防災対応を取らなければならない。具体的には、家具の固定、家族の安否確認手段のチェック、非常用持ち出し袋の準備などである。

 こうした臨時情報は社会にまだ十分定着していないので、いきなり臨時情報を受けた人は混乱する恐れがある。必ず起きる南海トラフ巨大地震に向け、改めて備えを確認してほしい。


 ■人物略歴

かまた・ひろき

 京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授・名誉教授。1955年生まれ。東京大学理学部卒業。専門は火山学、地質学、地球変動学。「科学の伝道師」を自任。理学博士。

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