2022年大学入試:入試速報第2弾 東大「推薦」京大「特色入試」結果/大学合格者高校別ランキング 中央大、京産大、近大…〈サンデー毎日〉
東大の2022年度の学校推薦型選抜(22年4月入学)の結果が出た。東大の〝推薦合格者〟と聞けば、さぞや高校時代に輝かしい実績を残していると思われるだろう。もちろん、そんな合格者もいる。ただ、地道な努力が評価されている受験生も少なくない。
東大の学校推薦型選抜(推薦)の合格者が2月15日に発表された。100人程度の募集人員に対して合格者は88人。前年を4人下回ったが、推薦入試担当の武田洋幸執行役・副学長は、「コロナ禍で高校2年次の活動が制約された学年という危機感があったが、選抜を工夫することで、素晴らしい学生が獲得できた」と総括した。
東大は、同時に出身地域と男女別の合格者数も発表する。これは、推薦を実施する理由の一つが、学生に多様性を持たせることにあるからだ。駿台教育研究所進学情報事業部長の石原賢一氏は言う。
「英語が得意で数学が苦手な女子は、東大入試では英語のアドバンテージが生かせないので、首都圏なら無理をせず早慶に行ってしまう。地方の優秀な受験生も東大より入りやすい地元の旧帝大を目指す。そうした埋もれてしまいがちな人材が欲しいのでしょう」
一定の制約を設けなければ、首都圏からの志願者が大半を占めかねない。女子も増やしたい。だから1校あたりの推薦できる人数は、男女2人ずつで計4人。男子校および女子校は3人までとしている。
22年度の結果を見ると、地域別では東京と関東の合計42人に対し、その他の地域が46人と上回っている。男女別でも、男子50人に対し女子は38人と拮抗(きっこう)しており、おおむね目的を達成している。
学校別の合格者(2月18日現在)を見ていこう。最大4人の合格枠の中でパーフェクトの学校はなく、最多は3人の渋谷教育学園渋谷だった。2人の学校は、市川や海城、日比谷、長野・県立、基町、佐世保北など12校。うち9校が中高一貫校または中等教育学校だ。
「2年次の課外活動が制約された3年制の学校は厳しく、中学時代から余裕をもってさまざまな経験ができる、一貫校にアドバンテージがありました」(駿台の石原氏)
東大の推薦の壁は厚く、合格者数の最多は21年の92人で、募集人員を満たしたことは一度もない。そうした中で、初回の16年度から途切れることなく合格者を出しているのは、日比谷と渋谷教育学園渋谷の2校のみだ。渋谷教育学園渋谷の進路部長は、コンスタントに合格者を輩出してきた理由を、こう話す。
「チャレンジ精神が旺盛で、科学オリンピックなど自ら目標を見つけて結果を出す生徒が多い。こうした生徒は、東大が求めている学生像と符合するのでしょう。合格者が続くと、推薦合格は夢ではなく目標になる。教員も次の学年にノウハウを引き継ぐことで、的確な指導ができています」
生徒の頑張り見抜く 問われる教員の力量
東大の推薦合格者というと、高い語学力や各種コンテストの輝かしい受賞歴のある〝スーパー高校生〟というイメージが強い。しかし、東大が認める〝やる気〟があれば、合格への道が開かれる。2人の合格者を出した地方公立校の進路指導担当教諭は、こう話す。
「合格した生徒は華やかな受賞歴はありませんが、地道に研究を続けてきました。テーマを設定し、深く研究を進めていると、学ぶほどに分からないことが増えていきます。その続きの研究を大学で行いたいという、学びに対する姿勢が評価されたのだと思います」
東大は各学部が育てたいと思える、意欲のある学生を選抜するとしている。東大で学べる学力を有することを前提とした、やる気が評価されている。本郷から文学部に合格したA君もその一人だ。
「社会問題に関して思考したり、さまざまな叡智(えいち)を学んだり、大学入学後も糧となる人間的成長がしたいと考えていました。コンテストの実績など目立った功績はありませんが、高校の社会部で進めてきた研究やNPOでの活動、さまざまな人への取材など、毎日積み重ねてきた小さな努力が評価されたのだと思います」(A君)
東大合格のためには、生徒の頑張りを見逃さない、教員の能力も必要なようだ。A君が続ける。
「他大学の総合型選抜(総合型)を目指しましたが、推薦なら東大に合格できると、社会部の顧問が可能性を見いだしてくれました。当初はとても不安でしたが、更なる人間的成長を目指して受験を決めました」
推薦では推薦書や各学部が求める書類・資料などの作成で、教員の力量も問われる。
「提出書類は主に担任が担当するが、専門が違えば研究テーマに沿った指導は難しい。そうした時に教員が一丸でサポートし、生徒のやる気に応えることが大切です」(前出の地方公立校教諭)
輝かしいコンテストの受賞歴はなくても、生徒の可能性を見抜く力と、全校でサポートする態勢がある学校から、東大合格者が生まれるということのようだ。
次に、推薦や総合型などで募集する京大の特色入試の結果について見ていこう。
22年度の合格者数(後期の法を除く)は昨年を23人下回る95人で、募集人員が現在より57人少なかった初回の16年度(60人)以来の低水準となっている。京大の特色入試は総合型の定員が多く、校長らが作成する学業活動報告書の提出が求められる。そこには顕著な活動歴を記載する。そのため、推薦で募集する東大より、コロナ禍で課外活動などが滞った影響が大きくなったようだ。
高校別の合格者数を見ると、1校あたりの出願者の制限がないため、16年度から連続で合格者を出している学校は東大より多く、大阪桐蔭(25人)、西京(21人)、開明(19人)、洛北(17人)、洛南(16人)の5校。
22年度の合格者数の最多は7人の開明で、西京(5人)、堀川(3人)、大阪桐蔭(3人)が続く。開明の高校教頭・進路指導部長は言う。
「普段の学校生活が『合格力』を養成しています。中学時代から研究などの課外活動に積極的に取り組み、文章を書き、プレゼンをしてきた生徒は尻込みすることなく、京大にチャレンジします。語学教育に力を入れ、高スコアの生徒が多かった学年ということも、京大の合格者数につながっています」
東大と京大ともに特別選抜で求めるのは、さまざまな分野のグローバルリーダーとなる人材。そうした資質を持つ学生が入学する効果について、駿台の石原氏は、「お膳立てされないと動けない学生が増えています。その中にとがった学生が入ると元々、能力が高い学生がついていき、学内が活性化されることになります」と話す。
推薦や総合型の入学者が東西の最難関大を活性化することで、閉塞(へいそく)感が漂う日本社会の活性化も期待したい。
2月22日発売の「サンデー毎日3月6日増大号」には、「東大・推薦 京大・特色入試 合格者出身高校一覧」「難関8国立大推薦型・総合型選抜結果」を掲載しています。また、以下の大学の合格者別高校ランキングも掲載しています。
亜細亜大、大阪工業大、大阪産業大、金沢工業大、神田外語大、京都産業大、近畿大、工学院大、国際医療福祉大、埼玉工業大、清泉女子大、聖徳大、摂南大、千里金蘭大、大正大、大東文化大、千葉工業大、中央大、東京電機大、東京都市大、東京薬科大、東北福祉大、獨協大、長浜バイオ大、日本工業大、日本保健医療大、藤田医科大、明星大
〈サンデー毎日「2022年大学入試情報」掲載予定〉
3月13日号(3月1日発売) 大学合格者高校別ランキング③
3月20日号(3月8日発売) MARCH、関関同立など大学合格者高校別ランキング④私立大総集編
3月27日号(3月14日発売) 東大・京大高校別合格者数前期速報/難関国立大合格者高校別ランキング
4月3日号(3月22日発売) 早大・慶大など難関私立大高校別ランキング/東大・京大高校別合格者数前期詳報/主要1000高校の難関大合格実績一覧
4月10日号(3月29日発売) 国公立大高校別ランキング前・後期総集編/東大合格者実名アンケート