法務・税務

中小だけでではなく、大手監査法人も“見逃した”企業の不適切会計=編集部

会計士 広がる監査市場の裾野=種市房子/加藤結花/浜條元保

<これから勝てる 税理士・会計士>

 縮小する国内市場、デジタル化、コロナ対応。変化の絶えないビジネス界で選ばれる税理士・会計士に求められるものとは。

(種市房子/加藤結花/浜條元保=編集部)

 マニュアル製作を手掛けるグレイステクノロジーは2月28日、東証1部から上場廃止になる予定だ。架空売り上げなどの不適切会計が発覚した後、期限までに四半期報告書を提出できなかったためだ。(税理士・会計士 特集はこちら)

不適切会計“見逃し”

 同社の会計監査を担当していたのは、ビッグ4の一角であるEY新日本。2016年のマザーズ上場時から担当していた(当時は新日本)。新日本はIPO(新規株式公開)監査では業界トップの実績がある。弁護士らによる調査報告書では、新日本がグレイス側に取引先との残高確認ができていないケースについて、関連売り上げを取り消さないと監査意見を出すのは困難と警告した、として一定程度、疑義を唱えていたことがうかがえる。しかし、結果としてグレイスの不適切会計を“見逃した”ことには変わりない。

 新日本は本誌の取材に対し「個別の案件については回答を控えさせていただきます。資本市場を支える番人として、引き続き監査品質の向上に努めてまいります」とコメントする。

 東京商工リサーチによると、21年に上場企業が開示した不適切な会計・経理は51件に上る(図)。内訳は、経営や会計処理ミスなどの「誤り」が47%、架空売り上げや水増し発注などの「粉飾」が29%だった。

 不適切会計の中には、投資事業のアジア開発キャピタル(アスカが担当)など中小監査法人が監査していた事例もあるが、製造業支援のアウトソーシング(トーマツが担当)、次世代教育事業のEduLab(エデュラボ)(あずさが担当)は、大手監査法人が監査していた。

 会計が複雑化し、企業の海外展開が加速する中、監査には負担がかかる。近年、大手監査法人が中小規模の上場企業の監査から撤退している。監査の手間に見合う報酬を得られないことも背景にありそうだ。

 その受け皿として、準大手や中小監査法人が上場企業監査を担当するようになっている。日本公認会計士協会の手塚正彦会長は「今後は、企業が規模に応じた監査法人を選ぶ。今はそれに向けた過渡期だ」と話す。上場企業監査の裾野が広がる中、業界全体の底上げが課題となっている。

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