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ESG、SDGs、TCFD、東証改革……非財務情報開示こそ監査法人の出番 「ビッグ4」が描く戦略=編集部
会計士 東証再編、気候変動…… 「非財務情報」が商機=編集部
食品・小売り事業から、ガス・鉄鉱石など資源開発まで、世界中で幅広く事業を手掛ける総合商社にとっても、ESG(環境・社会・ガバナンス)情報の信頼性は重要だ。業界最大手の伊藤忠商事の2021年版「ESGレポート」には、グループ全体の電力使用量、事業用施設起因の温室効果ガス排出量といった数値が掲載されている。数値の妥当性を検証し、保証したのが「KPMGあずさサステナビリティ」で、巻末に第三者保証報告書がある。(税理士・会計士 特集はこちら)
同社は、あずさ監査法人が所属するKPMGジャパンに属し、04年に設立。海外で人権問題や生物多様性を学んだ大学院修了者らを採用し、関連領域の助言・保証を行っている。あずさ監査法人が会計監査を担当していない「非監査企業」からも「助言がほしい」と引き合いが強いという。住友林業やキリングループなどにも気候変動関連報告書などで第三者保証を付与している。
近年、企業にとっては、財務の数値だけでは表現できない「非財務情報」が、企業価値を上昇・下落させる要素となっている。非財務情報の関連分野は、SDGs(国連の持続可能な開発目標)、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)、ESG、内部統制、事業継続計画、システム管理など多岐にわたる。
国際会計基準で開示へ
さらに、今年は非財務情報開示を巡って二つ大きな動きがある。一つは4月の東京証券取引所再編だ。プライム市場上場企業にはTCFD情報の開示が求められる。もう一つは、国際会計基準をまとめるIFRS財団が、気候変動リスクの情報開示についての新ルールを今年6月までに制定することだ。
非財務情報の開示のあり方や注意点を監査法人自身が助言する、あるいは監査法人グループが第三者保証を与えるビジネスが伸びている。
監査法人としてのトーマツは会計士に加えて、IT、金融工学などの専門家約2500人が在籍する。非監査・監査企業双方に、不正が起きないようにする内部管理体制、サイバー攻撃などのシステム上のリスクについて助言する。
加えて「最近2年ほどは気候変動に関する情報開示への関心が急速に高まっている」(国井泰成包括代表)ため、関連の助言も行っている。気候変動のサービス拡充と専門人材の増強を行っており、現在の130人から2年後には470人体制へ増やすことを目指している。
EY新日本監査法人では、21年10月に「サステナビリティ開示推進室」を創設。公認会計士が、監査・非監査企業双方に、気候変動や内部統制の助言を行っている。助言に当たっては、気候変動や生物多様性の専門家である社員と連携している。
業務収入に占める非監査業務の割合が5割を占めるPwCあらた監査法人は、コーポレートガバナンス・コード関連のサービスが多数ある。たとえば、海外の事例を紹介しながら、取締役会、監査役会の設置や運営の支援を行う。また、PwCジャパングループは、温室効果ガス排出削減などのサステナビリティー(持続可能な)活動が財務に与える影響をシミュレーションするサービスを21年3月から提供している。
(編集部)