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なぜ本誌の「東大合格者全氏名」が生まれたのか 特別連載・サンデー毎日が見た100年のスキャンダル/10〈サンデー毎日〉

胴上げされる合格者(東京・駒場の東大で=1966年3月21日)
胴上げされる合格者(東京・駒場の東大で=1966年3月21日)

 1965(昭和40)年 受験戦争〝過熱〟

 本誌恒例の「大学入試合格者高校別ランキング」が始まったのは、1965(昭和40)年。ベビーブーム世代がいよいよ受験年齢を迎えつつあった頃だ。競争をあおるという建前論に対して、時代の「本音」を直視した報道には、確かに一つのスキャンダル性があった。

 日比谷193人▽西155人▽戸山101人――本誌『サンデー毎日』1964(昭和39)年4月5日号に載る「東大合格ベスト20高校」のトップ3である。すべて東京都立の高校だ。20校のうち都立高が9校。これらで合格者総数(2646人)の3割を占める。

〈東大に入るなら東京の高校、しかも有名校が有利という考え方をさらに裏づけてしまったといえるだろう。こうした東京集中、有名校集中の現象は、年々はげしくなり、今後もますますはげしくなるだろう〉

 東京大文学部事務長を務める社会学者の尾崎盛光氏がベスト20校を眺め、そう評している。当局者が高校の順位に言及するとは今ではありえない話だが、67年の「学校群制度」導入を機に崩れた都立高の独り舞台にも、隔世の感がある。

 上位独占する都立高の顔ぶれを「資本主義の発展、近代化」と結びつける尾崎氏の分析が面白い。いわく、東京で中産階級の居住地域を指す「山の手」の変遷が学校の台頭とかかわっている。昭和初期までは麹町、麻布に住む階層の子弟が通う東京府立一中(日比谷)の1強だったが、昭和恐慌による中産階級再編に伴って西側に第2、第3の山の手が形成され、四中(戸山)、六中(新宿)に優秀な生徒が集まった。そして戦後、山の手は杉並、荻窪、武蔵野へ延び、旧十中の西が頭角を現した、というのだ。

 「エリートの生成過程の追跡を意図」

 尾崎氏によると東大生は頭の良いのが1割、9割は頭は普通だが馬力が強い。だが共通して「欲がきわめて深い」という。入試こそ人間の本音を最も敏感に映し出す。本誌は翌65年4月4日号で旧帝大をはじめ国公私立・有名20大学の合格者「出身高校別一覧」を掲載した。現在に続く「高校別ランキング」の始まりだ。

 創刊から半世紀の歩みをたどった『週刊誌五十年』(野村尚吾/毎日新聞社)によると、同号は「爆発的な売れ行き」を見せたという。〈これはもともと日本のエリートの生成過程の追跡を意図したものであった。しかしその批判性は逆に、受験生とその周辺の人々の実用書として読まれた〉

 ベビーブーム第1陣(47年生まれ)による空前の受験人口増(66年度入試)を控え、受験生の4割が不合格となる時代が来るとされていた。本誌65年3月28日号では教育評論家の重松敬一氏が「〈入試〉この残酷な若ものの儀式」と題したルポで、〈子どもの生活時間に合わせて、「四当五落」(睡眠時間四時間。五時間では落ちる)に歩調を合わせている母親もいるそうだ〉と大学受験が〝親子ぐるみ〟になったことを驚きをもって報告している。

 受験競争の過熱は「高校別ランキング」への批判も生んだ。事実、東大は76年度入試でそれまで行っていた合格者の出身高校発表をやめ、他の国立大も多くが追随した。これを当時「サンデー時評」を執筆していた政治評論家の松岡英夫氏が批判。落とし物を拾ったら届けるといった「一日一善」程度のことでは社会的モラルの改革には無力だという例え話をした上で、こう述べる。〈出身校別合格者の発表停止は、どうやらこの「一日一善」に似ている。いいことには違いないから、やるなとはいえないが、さてやったところで、この受験社会の改革にどれほどの効果があるか疑問である〉(76年4月11日号)

 逆に本誌はその年、独自調査による高校別ランキングに加え、「東大合格者全氏名」の掲載を開始した。受験シーズンの風物詩ともなった名物企画だったが、個人情報保護の機運が高まり、東大は2000年度入試から合格者氏名の公表を中止。「全氏名」は役割を終えた。

 3月1日発売の「サンデー毎日3月13日増大号」には、他にも「ついに侵攻!ウクライナ危機はこうなる」「西山太吉90歳、かく憂える 西山事件50年目の真実」「NHK朝ドラ『3世代ヒロイン』『100年の人生』『49歳が演じる18歳』… 『カムカム』はなぜ、人の心をわしづかみするのか」などの記事が掲載されています。

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