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週刊エコノミスト Online 2022年の経営者

「8000店以上で米を炊いているのが強み」竹増貞信・ローソン社長インタビュー

Interviewer 秋本裕子(本誌編集長) Photo 武市公孝 東京都品川区の同社本社で
Interviewer 秋本裕子(本誌編集長) Photo 武市公孝 東京都品川区の同社本社で

8000店で米を炊く強みを発揮 竹増貞信 ローソン社長

 Interviewer 秋本裕子(本誌編集長)

── 2022年2月期(21年度)は営業利益予想が前年比22・3%増の500億円と好調です。何が要因ですか。

竹増 新型コロナウイルスの感染拡大で20年4月に緊急事態宣言が出て、20年度の売り上げに影響しました。在宅勤務が広がったことで、オフィス街の店舗の需要が減ったことが要因です。一方で、住宅地にある店舗では「巣ごもり需要」の恩恵がありました。来店客からは、野菜や豆腐、納豆、精肉などをもっと置いてほしいとの要望があり、それに応えることで21年度は売り上げが回復しました。(2022年の経営者)

── 大規模な店舗改装や商品刷新などを進めていますね。

竹増 コロナ禍による生活パターンの変化に対応してほしいという消費者の期待をチャンスと捉えて、20年9月に「ローソングループ大変革実行委員会」を作りました。店舗や商品など12分野のプロジェクトが進行中です。21年度は約4500店、22年度は約3500店で、合計8000店超の改装を予定しています。商品も刷新し、冷凍の馬刺しやユッケ、刺し身なども出しました。自宅でも居酒屋にいるように楽しみたいというニーズに対応したものです。

── ローソンの商品の強みは何ですか。

竹増 スイーツには力を入れています。定番になった「プレミアムロールケーキ」のほか、最近では「生ガトーショコラ」がヒットしました。スイーツだけでなく、「からあげクン」は昨年4月に発売から35年を迎え、3世代にわたり食べ継がれている人気商品です。

── 店内の厨房(ちゅうぼう)で調理した弁当や総菜に力を入れています。

竹増 現在は約1万4500店のうち8000店で、店で炊いたごはんを味わってもらっており、こうした店舗をさらに500店ほど増やす予定です。店舗数最多の持ち帰り弁当チェーンでも約2500店なので、8000店以上で米を炊いているということは、他社にはない強みになっています。

── 店内調理だと、加盟店の負担になりませんか。

竹増 店内で米を炊くことには、当初は社内で賛否がありましたが、挑戦して改良を続ける中で、来店客からは「あれはおいしいね」と言ってもらえるようになりました。将来は人が介在することなく、ロボットで米を炊いてもいいと思っています。

── 「無人決済店」への方針は。

竹増 今は増やすことに否定的です。デジタル技術を駆使して、レジを通らず商品を持ち出すだけで決済が完了する実験店舗(川崎市)を、20年2月から富士通と共同で始めています。都心の高層ビルへの展開も考えましたが、コロナ禍で想定した来店客が見込めなくなりました。

 一方で、東京・六本木や新宿など都心のオフィス街の近隣にも、店員との会話を楽しみにしている年配の来店客がたくさんいます。こうしたニーズには、人でしか対応できません。そのため店舗での決済は、店員による対応、釣り銭が自動で出る「セルフレジ」、スマートフォンでバーコードを読み取って来店客自身が決済、という3パターンで対応しています。

加盟店利益を基軸に

 コンビニ業界では、24時間営業や同一チェーンによる近隣への新規出店などの問題を巡り、本部と加盟店とのトラブルが多発。公正取引委員会は21年1月、24時間営業の見直しを望む店主との協議を本部が拒否すれば、独占禁止法に触れる恐れがあるとする指針を発表した。

── ここ数年の業界への厳しい指摘を受けて、加盟店の利益を重視しているそうですね。

竹増 経済産業省で「新たなコンビニのあり方検討会」が開催され、(本部の利益確保を最優先と指摘した報告書が20年2月に出るなど)厳しい時期でした。検討会で当社は、加盟店との関係は良好だと評価されました。人手不足の時代です。最大のパートナーである加盟店をしっかり支援しようと考え、コロナ禍の直前に、加盟店の利益を本部の重要な業績評価指標とする経営に切り替えました。

── とはいえ、コンビニ経営で重視される1店舗の1日当たりの売り上げ(平均日販)では最大手のセブン─イレブン・ジャパンとは15万円の差があります。

竹増 売り上げを伸ばそうとすれば、店舗からの発注を(無理に)増やそうと、本部が加盟店に指導する懸念があります。改善のために人工知能を活用して、発注の精度を高めるシステムを導入しています。以前は経験と勘に頼っていたのですが、現行システムでは曜日、時刻、天候などの条件を打ち込み、値引きのタイミングも適切に判断できるようになりました。

 過去2年間は加盟店の利益を経営の基軸としてきましたが、改革の準備ができました。コロナ禍で3年目となる22年は、来店客からの評価といえる売り上げを伸ばすことにも注力します。

(構成=浜田健太郎・編集部)

横顔

Q これまで仕事でピンチだったことは

A 三菱商事に入社して牛肉の輸入販売を担当した際、請求書を一度も出しておらず、期末に判明。先輩の助けを得て、記憶を元に台帳に記入しました。

Q 「感銘を受けた本」は

A 宮本輝さんの長編小説『流転の海』(全9部)です。主人公が語る「何が起きてもたいしたことない」という言葉、自分でもそう思えるようになりました。

Q 休日の過ごし方は

A 釣りです。ただ、今はなかなか行けません。


事業内容:コンビニエンスストアチェーンの運営

本社所在地:東京都品川区

設立:1975年4月

資本金:585億円(2021年2月時点)

従業員数:1万385人(21年2月時点、連結)

業績(21年2月期、連結)

 営業総収入:6660億円

 営業利益:408億円


 ■人物略歴

竹増貞信(たけます・さだのぶ)

 1969年生まれ、大阪教育大学付属高校池田校舎、大阪大学経済学部卒業後、1993年4月三菱商事入社。社長秘書などを経て、2014年ローソン副社長に就き、16年6月から現職。大阪府出身、52歳。

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