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愛子さま会見と悠仁さま卒業 日程重複は宮内庁の戦略ミス 社会学的皇室ウォッチング!/28=成城大教授・森暢平〈サンデー毎日〉

皇室の「祝い事」の日程が重なってしまった(代表撮影)
皇室の「祝い事」の日程が重なってしまった(代表撮影)

 宮内庁の西村泰彦長官は3月24日の記者会見で、愛子さま(20)の記者会見が、秋篠宮家の悠仁さま(15)の卒業式と同じ日(3月17日)に行われたことについて「私のミスというか、3月に愛子さまの会見を調整しているのを聞いた段階で、卒業式のことに思いを致すべきだった」と語った。宮内庁は部局の独立性が高く、調整がうまくいかなかったようだ。広報戦略が甘かったと言われても仕方がない。セクショナリズムの意識から脱却して、どうしたら世論へのアピールがうまくいくか、宮内庁は全庁的に考えてほしい。

 西村長官は、「それ(日程重複)が頭の中に思い浮かばずに調整ができなかった。それで一緒になってしまった。できれば別の日が良かった」と続けた。

 卒業式は3月17日午前。お茶の水女子大の中庭で、悠仁さまは両親とともに撮影に臨んだ。報道陣から「おめでとうございます。中学生活はいかがでしたか」と声を掛けられると、「休校になった時もありましたが、そのなかでさまざまな経験をして充実した3年間になったと思います」と答えた。

 宮内庁には、皇位継承第2位の悠仁さまの成長を、人びとに実感してもらうために、折に触れて情報を公開していこうという考えはある。卒業式の日、卒業文集に綴(つづ)った作文を公開したのもその一環だった。

 その作文で、悠仁さまは中学1年生のときに印象深かった出来事として英語を学ぶグローバルキャンプという宿泊行事を挙げた。「英語のみを使った2日間の研修では、授業や英語劇の発表などを通して英語の技能を高められただけでなく、コミュニケーションの力を身につけ、異なる文化にふれることができました」と書いている。コロナ禍の影響でその後、宿泊行事はなく、思い出に残る出来事だったに違いない。

 2年生の思い出は、ディベート大会だったという。「事前にグループごとに資料を読み込み、両方の立場で意見を伝えられるように話し合いをしました。ディベートでは、反対の立場の人が納得するように伝え、相手の主張を的確に聞き、それに対して適切に反論することが大事です。このディベート大会は、準備を含め、相互啓発の場にもなりました」と書いた。

 通常の中学生と同じように、友人たちとともに成長する姿が、よく分かる。

 庁内の連携不足

 同じ日、宮内庁は中学生活のありようについて文書を公表した。そこには、3年生になってから「進路学習や面談が始まり、ご自身の今後について真剣に考えられていた」と述べられている。とくに3学期については「高校(筑波大附属高)入学の学力検査の準備やその後の学期末テストに向けて、ご自身で目標を立て、普段と変わらず、落ち着いて学習に取り組まれていた」と記された。

 また、「卒業アルバム・歓送会委員として、ご友人と一緒に3年間の中学校生活を振り返りながら、数々の思い出が形となるよう、協力してアルバム製作を進められるとともに、歓送会でクラスを代表して仲間とともに在校生への返礼のプログラムを準備し出演された」ともあり、中学生活が包括的に紹介されている。字数にして約2300字。かなりの分量だ。

 この日は、お茶の水女子大の佐々木泰子学長も記者会見し、「休み時間にはいつも多くのお友だちに囲まれて、晴れた日は校庭で遊ばれたり、雨の日は教室で読書をされたり、級友たちにとってもごく普通のクラスメートのひとりだったに違いありません」と語った。卓球部に3年間所属し、ほかの部員たちと文京区の大会に出場したことも明らかになった。

 宮内庁は、悠仁さまの成長をアピールするために、学校側と調整し、かなりの準備をしてきた。

 ところが、悠仁さまへの注目は、期待していたほどには高まらなかった。同じ日午後2時から、愛子さまの記者会見があったためである。さまざまな論評にあるとおり、会見は成功し、愛子さまの評判は上がった。

 一方で、宮内庁の全体的な広報戦略としては、成功だったとは言いがたい。宮内庁としては、愛子さま・悠仁さまの2人の成長をともにアピールしなければならないからである。同じ日の会見と卒業式では、残念ながらどちらかがかすれてしまう。

 宮内庁幹部たちが日程の重なりの問題性に気が付いた時は、すでに調整不能な時期であった。

 庁内のコミュニケーション、とくに長官官房を中心とした侍従職と皇嗣職の連携がうまくいっていなかった。それを西村長官は「私のミス」と言っている。

 週刊誌には、「3月17日は悠仁さまの優秀ぶりを国民に強く印象づけるチャンスでした。その機を逸された紀子さまには、悔しさにも似た焦燥がおありだったことでしょう」(『女性セブン』3月31日号)などと、あらぬ臆測を立てられてしまうことになった。

 宮家叩きに利用される

 卒業式の翌日、悠仁さまは御所を訪れ、天皇ご夫妻、そして愛子さまに面会し、中学校を卒業したことを報告した。従弟(いとこ)の卒業を愛子さまも喜んでいたということだ。

 それを紹介するヤフーニュースのコメント欄には「愛子さまの会見が素晴らしいものであっただけに、余韻に水を差すかのような、忖度(そんたく)記事」「昨日(3月17日)は、天皇家と秋篠宮家の品格の差が浮き彫りになった」などと心ない書き込みが続く。

 自分の記者会見を賛美する人たちの一部に従弟を悪く言う声があることに、愛子さまは心を痛めているのではないだろうか。愛子さまへの称賛が、一部で秋篠宮家叩(たた)きに利用されていることには危惧の念を覚える。

 愛子さまと悠仁さまの扱いは、今後の皇位継承問題も絡み、微妙な問題をはらんでいる。ちょっとしたことで、臆測を呼ぶことは容易に想像できる。それだけに、調整ミスは確かに痛恨の出来事であった。

 しかし、挽回のチャンスはある。愛子さまは3年生として大学への通学を始めるだろうし、悠仁さまの高校進学もある。

 若い2人の皇族が何を考え、どう成長していくのか。宮内庁は広報戦略を練り、アピールの方法を考えるべきだ。

もり・ようへい

 成城大文芸学部教授。1964年生まれ。博士。毎日新聞で皇室などを担当。CNN日本語サイト編集長、琉球新報米国駐在を経て、2017年から現職。著書に『天皇家の財布』(新潮新書)、『天皇家の恋愛』(中公新書)など

「サンデー毎日4月10日増大号」表紙
「サンデー毎日4月10日増大号」表紙

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