2022年大学入試:入試速報第9弾 難関大入試の「現役合格率」 過去10年で伸びた学校は 灘、聖光学院、筑波大付駒場、北野、開成…〈サンデー毎日〉
近年は浪人生が大幅に減少し、現役志向が強い受験生に追い風が吹くが、難関大のハードルは高いまま。そうした中、難関大に多数の現役合格者を出す学校はどのような特徴があるのか。現役合格者占有率から検証した。
2022年度(22年4月入学)の大学入学共通テストの志願者数は53万367人で、うち浪人生は7万6785人。大学入試センター試験当時の12年度から浪人生は3万人以上減り、8万人を割るのは史上初だ。入試が現役中心になっていることを物語るデータだが、それでも難関国立大に現役で合格するのは並大抵のことではない。
そんな難関国立大に〝普通〟に現役合格できる学校がある。「難関9国立大 現役合格者占有率ベスト30」は、旧七帝大に東京工業大と一橋大を加えた、難関国立9大学の現役合格者が卒業生に占める割合でランキングしたもの。表では現役占有率が3割以上の学校は16校に及ぶ。
1位は昨年と同じ灘。東大と京大の現役合格者の合計が、10年前12年度の106人から98人に減少したことから現役占有率も下がっているが、それでも、2人に1人が東大と京大を中心に現役で合格していることに変わりはない。
2位の聖光学院は、現役占有率が12年度から7・4ポイントアップし、前年の4位から順位を上げた。安田教育研究所代表の安田理氏は、その校風に注目する。
「聖光学院は、灘や筑波大付駒場のように、進学校として全国的な知名度はまだありませんが、面倒見がいい同校には、これまでは東京のトップ校を目指していた層が志望するようになり、難関大合格実績が伸びているのです」
3位は、毎年、東大の現役合格者が卒業生の半数近くを占める筑波大付駒場。その他の一貫校に注目すると、5位の開成は、400人以上の卒業生がいながら12年度も現在も40%台と高い現役占有率を誇る。6位の東大寺学園は現役占有率が12年度より5・1ポイントアップ。久留米大付設(9位)と栄光学園(10位)も現役占有率を伸ばしており、特に桜蔭(11位)は10・4ポイントと大きく伸びている。
公立校では北野(4位)の現役占有率が22・2ポイントと大幅に上がった。北野は難関大の合格実績が下がった時期もあったが、11年に難関大合格を目指す文理学科を設置するグローバルリーダーズハイスクール(GLHS)に指定されたことで状況が変わる。当時の府立校入試は学区があったが、文理学科に学区はなく、全府から伝統校の北野に優秀な生徒が集中したことにより現役占有率が上がったのだ。北野以外に府立9校がGLHSに指定されており、北野と並ぶ伝統校の天王寺は現役占有率21・8%で、55位に入っている。
公立校で、現役占有率が12年度より、10ポイント以上と大幅に伸びている学校には、日比谷(22位)や小石川中教(24位)、横浜翠嵐(28位)、浦和・県立(30位)などがある。前出の安田氏は言う。
「学校のシステムや教師の授業力も大事ですが、難関大の合格力は生徒の〝地頭〟で7割くらい決まるとも言えます。学区の撤廃や進学指導重点校などの指定で優秀な生徒が集まれば合格実績は伸びます。家計の事情で私立一貫校に通えない生徒にも、難関大進学の機会を提供する自治体の施策は評価できます。中高一貫教育を望む家庭に向けて、公立の一貫校も増えています」
首都圏や近畿圏では、生徒の意向とは無関係に進学先が振り分けられる学校群制度や、学区の制定により公立校が地盤沈下し、代わって私立一貫校が伸びるという歴史があった。そうした中で公立校復権のために、各自治体が動いたという側面も無視できない。
有力な私立校が少ない地方の公立校は、地元の旧帝大の合格者数の多さから元々、現役合格率が高い学校が多い。その中で、さらに伸びているのは、7位の札幌北だ。地元の北海道大の現役合格者数は12年度と大差ないが、京大や大阪大などの合格者が増え、現役占有率が5・2ポイントアップ。同様に8位の札幌南も東大や京大、大阪大などの現役合格者が増え8・5ポイント上がっている。塾関係者は言う。
「両校ともに、生徒の自己実現に向けて全国の大学を視野に入れた指導をしており、北海道大以外の合格者が増えているのです」
また、12位の仙台第二の現役合格率が安定的な一方、修猷館(13位)や岡崎(15位)、大分上野丘(19位)などが伸ばしている。「全国3396高校 有名183大学合格者数」では、それぞれの学校の地元大学の合格実績も掲載した。難関大に限らず、目指す学校に強い学校はどこなのか。学校選びの参考にしていただきたい。