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週刊エコノミスト Online 2022年の経営者

ジャパネット東大卒2代目がBS放送を始めたワケ=ジャパネットホールディングス社長兼CEO

Interviewer 秋本裕子(本誌編集長) Photo 武市公孝:東京都港区の東京事務所で
Interviewer 秋本裕子(本誌編集長) Photo 武市公孝:東京都港区の東京事務所で

BS局開局で通販にも効果期待 髙田旭人 ジャパネットホールディングス社長

 Interviewer 秋本裕子(本誌編集長)

── テレビ通販が新型コロナウイルス禍で好調で、売り上げが伸びていますね。

髙田 2020年10月から新たに食品などのグルメ定期便を始めたことも大きな要因です。きっかけは「コロナで学校が休校となって給食用の牛乳が余っている」というニュースでした。外食やホテルでもお客さんが減って、仕入れた高級食材を廃棄していると知り、赤字でもいいから生産者応援プロジェクトをしようと考えました。(2022年の経営者)

 当社の「いいものを見つけて、磨いて、伝える」というコンセプトをここでも実践しようと、一時は魚、辛子(からし)明太子、フルーツなど幅広い食品を取り扱いました。今は肉と日本酒に絞り、例えば、日本酒では日本中の蔵元から毎月違うお酒を届けるコース(月額8980円)などがあり、予想以上に伸びています。グルメ定期便は毎月15万人に届けています。

── もともと強いのは家電製品ですよね。

髙田 通販での売れ筋は、日立の炊飯器ふっくら御膳(累計販売115万台)、日立のスティッククリーナー(同95万台)、シャープのエアコン(同75万台)です。「1品目で1機種」に絞り、語呂がいいので取り扱うのは多くても777品目と決めています。1カ月間で一定量が売れない場合には、入れ替えます。最近3年間の全通販利用者は943万人です。

製品絞り込みで差別化

── 家電の販売は量販店も強いです。どう差別化していますか。

髙田 当社は、電話1本で顧客のあらゆる困りごとを解決するという考え方をとっています。例えば、量販店大手は掃除機を50機種扱っていたりもしますが、当社は数機種に絞り込んでいるので、年間数十万台が売れます。台数が多い分、安く仕入れられるメリットがあります。アフターサービスにも力を入れて自前で修理しているので、その製品の故障しやすい部分を把握でき、次のモデルでメーカーに改良してもらいます。炊飯器のボタン配列や取扱説明書などもメーカーと一緒に考えていて、結果的に顧客満足度が上がっています。

── BS放送局「BSJapanext(ジャパネクスト)」を3月に開局。その狙いは何ですか。

髙田 全国各地のいいもの、いい情報を伝えるということに相性が良いのは、放送局だと考えました。21年に終了した地上波の長寿番組「パネルクイズアタック25」も復活させます。

 開局前に、コマーシャル収入に依存し過ぎない放送局にできないかと、テストを重ねました。その一環として、90分のクルーズ旅番組を放送した後、クルーズ旅行を商品として30分間、テレビ通販で販売したらメチャクチャ売れました。こうした番組で全国を巡れば、当社が目指す地域創生につなげることもできると考えています。

── プロサッカーJ2のV・ファーレン長崎と、プロバスケットボールB3の長崎ヴェルカもグループ傘下にあり、プロスポーツにも力を入れています。

髙田 3年後にはそれぞれがJ1、B1に昇格すると思っています。そのころの完成を目指して長崎市で建設中なのが、2万人収容できるスタジアムと6000人のアリーナ、250室のホテル、11階建てオフィスと商業施設を備えた「長崎スタジアムシティ」(7ヘクタール)です。投資額は700億円です。私の人生をかけて成功させようと思っています。こうしたモデルがほかの地方にも広がれば、地域創生になります。

── 株式を上場する考えは。

髙田 上場したら、長崎スタジアムシティの案件などは株主から「そんな無謀なことはダメだ」と反対されるでしょうね。また、利益の半分を株主配当に充てるなら、それを社員の給与に回したいと考えています。もちろん、上場することでガバナンス(企業統治)の向上などよくなることもあるでしょう。ただ、当社は「何のために会社が存在するのか」「社員は何のために働いているのか」という存在意義を重視した「パーパス経営」を大事にしているので、上場の必要性を感じていません。

── 今後の目標は。

髙田 今、中核の通販事業で稼いだ収益で、プロスポーツクラブやスタジアム施設、放送局を手掛けています。ただ、このままだとそうした地域創生につながる事業は、利益が出ないただの支援サービスになってしまいます。そうならないために、スタジアム事業やBS局事業は、事業開始の翌年度にそれぞれ単体で黒字化するのが目標です。

── 創業者である父の明さんから経営を引き継いで8年目です。

髙田 事業について父に相談したことはありません。自分たちがやってみて違っていると思えば、すぐ修正します。せっかちな血を引き継いでいるかもしれませんね。父の背中を見て教わったことは、誰に対しても同じ笑顔で、本音で接すること。腹を据えて経営しています。

(構成=中園敦二・編集部)

横顔

Q 30代のころはどんなビジネスパーソンでしたか

A 父が何を考えているのか、話している本質は何かを考え、当社のベースとなる考え方を吸収する時期でした。

Q 「好きな本」は

A 平野啓一郎さんの『私とは何か』(講談社現代新書)です。一人の人間には、いろいろな人格があってもいいという内容です。

Q 休日の過ごし方

A スポーツ好きでゴルフをしています。グループのクラブの試合はメチャクチャ応援観戦していますよ。


事業内容:通信販売などのグループ管理

本社所在地:長崎県佐世保市

創業:1986年1月

資本金:1000万円(2022年3月現在)

従業員数:約3700人(パート、アルバイト含む)(22年3月現在、連結)

業績(21年12月期、連結)

 売上高:2506億円

 営業利益:非公表


 ■人物略歴

髙田旭人(たかた・あきと)

 1979年長崎県生まれ。久留米大学付設高校卒業、2002年東京大学教養学部卒業後、野村証券入社。03年にジャパネットたかたに入社し、バイヤー、コールセンター、物流の各部門責任者を経て15年にジャパネットホールディングス社長、18年からCEO(最高経営責任者)兼務。43歳。

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