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公明党はいまだに大衆と共にあるか 田原総一朗が山口那津男代表を直撃〈サンデー毎日〉

公明党・山口那津男代表
公明党・山口那津男代表

 倉重篤郎のニュース最前線

 小社から刊行された『今こそ問う  公明党の覚悟』が好評だ。田原総一朗氏が山口那津男代表に迫る、白熱の対談集。コロナとウクライナ危機に引き裂かれた不安の時代を背景に、外交・安全保障、経済再構築、国民生活、環境とエネルギー、女性活躍と多様性、デジタル化、若者と政治不信……などにつき、濃密な議論が交わされている。公明党支持者でない読者にとっても、現代焦眉のテーマに政治がいかに取り組むべきかの全体像が掴(つか)める内容となっている。

 出版を機に、「ニュース最前線」倉重篤郎が司会となり、二人に改めて討議していただいた。自公連立政権が20年続くなかで、庶民大衆と共にあるという公明党の結党精神はどう生きているのか。日中友好や非核三原則の生みの親でもある「平和の党」は、軍拡と核武装が語られる時代にいかなる針路を取るのか。いまの重大な政治課題がここから見えてくる。

 平和の党であり続けているか

 「ポスト冷戦政局の本質は、竹下登と小沢一郎による公明党の取り合いだった」と喝破したのは、政界フィクサーの一人であった故福本邦雄氏だった。

 福本氏によると、最初に公明党の戦略価値に気付いたのが、当時自民党幹事長だった小沢氏であった。国会での中堅政党としての手堅い存在感(議席数)と、その全国で700、800万票と言われた創価学会の集票力である。政策、人脈での自民党との親近感もある。冷戦終結後1党で過半数を取り続ける力のなくなった自民党の数の減少を補填(ほてん)してもらう政治勢力としては格好の存在だった。

 小沢氏は、最初は国会での連携・共闘を進め(湾岸戦争の際の130億㌦の多国籍軍支援策実現などの自公民路線)、連立政権の中軸として兄弟政党化(細川護熙連立政権での新生党・公明党枢軸)し、さらには政党として一体化(新進党結党)までして、その政局パワーを徹底的に活用した。

 だが、この蜜月は長く続かなかった。公明党・学会内にあった小沢氏の政治手法への忌避感が次第に膨れ上がり、ついには新進党解体にまで発展、小沢氏とは距離を置くようになった。

 そこに目をつけたのが竹下氏だった。1998年の参院選で自民党が過半数割れした時であった。衆参ねじれに苦しむ時の小渕恵三政権を助けるため、もともと公明党に強かった竹下氏が自らの人脈をフル動員して、小沢離れした公明党・学会を自民に引き寄せ、くっつけたのが99年の自公連立政権であった。愛弟子・小渕救済に、師・竹下が一肌脱いだ形であった。

 つまりこの勝負、小沢氏が先行したが、竹下氏が引っ繰り返した、というのが福本政局史観であった。数合わせの対象にされた公明党こそ、いい面の皮ではあるが、「数こそ政治だ」と広言した田中角栄氏の流れを汲(く)む竹下、小沢両氏の、まさに数をめぐる激闘を振り返る、福本氏ならではの興味深い見立てであった。

 核をなくすことが公明党の大命題

 さて、この自公連立である。できた経過は別にして、20余年の歴史の中で、いま大きな試練を迎えている。米中対立が深刻化、ロシア・ウクライナ戦争の余波もあり、かつてないほど「軍拡」志向が強まる自民党に対し、「平和」を立党の原点とする公明党が、連立の相方としてどうブレーキ役を果たせるか。「大衆」と共に生きる政党として、インフレ・不況の同時進行から国民生活をどう守るか、である。政局ウオッチャー・田原総一朗氏が公明党代表の山口那津男氏に質(ただ)した。

田原 ウクライナ戦争はプーチンの大誤算になった。侵攻前のゼレンスキー政権はかなり腐敗が進み支持率22%で、介入後すぐにでも親露政権ができると思ったら、侵攻後それが90%に跳ね上がった。

山口 国際社会がロシアを非難し経済制裁する、その素早い意思決定と対応が、プーチンの無謀に歯止めをかけ、ゼレンスキーの指導力、発信力を高め、ウクライナ国民を結束させ、軍の抵抗力を強めた。

田原 戦闘は膠着(こうちやく)状態だ。ロシア軍の残虐行為が露見し、停戦協議の見通しが全くつかなくなった。

山口 ここから先は、国際社会がさらに結束し停戦をどう早期実現するか、ロシア軍の残虐行為をどう裁くか、大量の避難民にどう人道的に対処するかだ。日本にできること、やるべきことを国際社会と連携、分担し、しっかり実行したい。

田原 ロシアの核威嚇発言もあり、エマニュエル・トッドが月刊誌『文藝春秋』で日本の核武装論をぶち上げ、安倍(晋三元首相)氏が核シェア(共有)論を言い出した。どう思う?

山口 核威嚇は国連安保理常任理事国としてあるまじき行為だ。日本は非核三原則を作りそれを維持、米国の核抑止力に依存する、核の傘に入ることを長年安全保障の基本戦略としてきた。

田原 拡大抑止論だ。

山口 ここは、日本の非核三原則が作られた経緯を思い起こすべきだ。中国が1964年に核実験、日本も核武装すべきという議論が盛り上がったが、当時の佐藤栄作政権が米国と沖縄返還交渉する中で、米国から核抑止は自分たちが担うので日本は核武装するなと言われ、非核三原則を自ら作り、それを根付かせてきた。

田原 長い歴史がある。

山口 最初に三原則を打ち出したのは公明党だ。67年の衆院の代表質問だった。その後、沖縄返還協定の国会審議が与野党対立で膠着、打開のため返還協定そのものは反対だが、非核三原則を盛り込んだ付帯決議をつけろと主張。社会、共産両党が欠席する中、公明党は出席して返還協定には反対し、付帯決議には賛成した。ここで初めて国会で非核三原則を入れた決議が成立、国是となった。71年11月だ。72年10月には「核の脅威には米国の核抑止力に依存する」と閣議決定、74年には佐藤氏がノーベル平和賞を受賞した。公明党が国会で発信、成立させ、それが今日受け継がれている。改めて言いたいところだ。

田原 三原則は維持?

山口 国会決議、閣議決定までして維持してきた。それを破るようなことをやれば日本の信用が失われかねないし、NPT体制、つまり国連の5大常任理事国の保有を認めるが他国には拡散させない、という体制を日本が自ら破ることになる。全体が崩れ拡散が広がる。かえってリスクが高まる。

田原 自民党も核保有は反対だ。問題は安倍氏の共有論。ドイツはやっていると。山口 ドイツは別だ。日本は核を共有する、つまり、三原則の「持ち込ませず」を明確に破るべきではない。

田原 論議すべきだとの意見は多い。

山口 一般論としてはどんな議論も自由だが、それなりの立場にある政治家がまともに政策課題として議論することは避けるべきだ。

田原 安倍氏は元首相だ。

山口 安倍氏がその意見を貫くかは知らないが、自民党の主流の議論になっていない。岸田文雄首相も明確に否定している。核をなくすのが公明党の大命題だ。日本の核兵器禁止条約批准促進の立場だ。逆行するようなことは断じて反対だ。

田原総一朗氏
田原総一朗氏

 アジアに紛争予防の仕組み作り

田原 防衛費の対GDP2%論はどうか。これもまたドイツが軍備増強に転じた。日本も見習うべきだと。

山口 日本周辺の安全保障環境を見ると、軍事力強化が著しい。日米同盟を前提にした上で、日本の防衛力、日米での対処力をレベルアップしていく必要はある。

田原 防衛力強化は必要?

山口 ある程度は必要だ。

田原 2%にすべきだと?

山口 すべきではない。一気に2%は反対だ。少子高齢化による限られた財政資源の中で、社会保障費や教育費の削減には国民は反対する。では、防衛力強化のために増税するか。これも国民はにわかに賛同しないだろう。急拡大は到底無理だ。年末に安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防を作る。憲法と専守防衛、非核三原則の枠内でやりたい。田原 僕は防衛力を増やす必要はないと思っている。公明党に頑張ってほしいのは防衛でなく外交だ。懸念すべきことがある。中国が台湾に武力侵攻すれば、米国が台湾を守るために中国と戦うだろう。その際は日本も戦うべきだという意見が結構多くなっている。山口 そういう事態を招かないよう最大限の努力をすべきだ。中国はウクライナ侵略するロシアと同じイメージで見られるのを大変怖がっている。台湾に武力で圧力をかけようとすればそうなる。中国はもはや世界とのさまざまな関係を保たずには生きていけない国になっている。孤立化できない。世界との信頼を維持していかなければならなくなっている。そこに外交の出番がある。武力を行使させない協調的枠組みを作ることだ。

田原 どんな枠組みか?

山口 アジアには安全保障の対話の仕組みが不足している。米中対立の間に立たされた日本や韓国が中心になり両国をつなぐ紛争予防の仕組みを作るべきだと思っている。参考になるのは欧州安全保障協力機構(OSCE)だ。本部・ウイーンに常設事務局があり、毎週1回大使級の各国代表者が定例会議を開き情報交換し、緊張緩和、信頼醸成に?(つな)げている。そのアジア版を作れないか。危機だからこそ議論が進展する可能性がある。日韓が米中露に働きかけ、日本に常設事務局を置き、日韓で協力し維持していく。そういう取り組みをすべきだと思っている。

田原 日中国交回復を思い出す。72年、田中角栄首相が訪中、成就したが、段取りをつけたのは公明党だった。

山口 当時の公明党と周恩来首相が、国交正常化の課題となるべきことを全部事前に整理し、表舞台にのせた。その後50年、中国歴代政権と交流を重ねてきた。中国側と信頼関係を維持できているのは公明党だけだ。

田原 台湾に武力行使するなと言えるのは公明党だ。

山口 2012年、民主党政権の尖閣国有化で日中間で対話が途絶えたことがあった。その年の12月安倍政権に代わり、中国も習近平総書記が誕生、安倍氏と相談して親書を預かり翌13年1月に訪中し、対話の扉を開く経験をした。その時に習氏と率直に話した。事前に中国側と「中国がデモを仕掛けて日本の企業や工場を焼き討ちすることは日本国民を敵に回すことになる」などとオフレコ扱いで厳しいやり取りをした。後日、「公明の山口さんにああいうことを言われるとは思わなかった、率直な指摘を頂いた」という中国側の反応が返ってきた。中国はそこからかなり慎重になった。

 成長と分配の好循環で国民を守る

田原 今回も公明が先に立って岸田親書を持っていく。

山口 役割を分担、協力しながら道を開くべきだと思っている。現にウクライナでは米国が武力介入をしていない。台湾でも武力介入の余地を作らない。中国が武力で台湾を支配下に置くようなこともさせない。そういう外交をするのが日本の仕事だ。それが日本自身をも守ることに?がる。いよいよこれからコロナを乗り越えて交流が始まるかというところだ。もちろんその中で公明は役割を果たしたい。

田原 経済も聞く。戦争で燃料、穀物が高騰、日銀が物価高と円安に対処不能だ。

山口 日銀にああしろと言わないのが不文律だが、党内には、もう少し日銀が柔軟にとの意見もある。物価高対策としては、早期に補正予算を編成、参院選を挟む政治空白に備え、財源手当てすべきだ。

田原 安倍氏の異次元金融緩和策は、内需拡大も経済成長ももたらさなかった。どこに失敗があったと総括?

山口 目標はデフレ脱却で、もはやデフレではないというところに行きかけた。ようやく成長と分配の好循環になると思ったが、コロナでストップした。コロナを早く乗り越えて次なる成長の柱を作っていくのがこれからの政権の取り組みだ。

田原 「新しい資本主義」はあまりに中身がない。

山口 賃金引き上げからやり始めた。介護、医療職など政府ができるところからだ。春闘の出だしは良かった。

田原 連立も20年。公明から首相を出し戦争させない日本をつくるという野心は?

山口 そういうことはおくびにも出さないようにしている。

田原 腹の中にはある?

山口 連立政権を維持することはパートナーとして首相になる人の悩みや苦しみや判断に寄り添うことだ。自分も同等の責任を持って取り組もうという心構えは常に持っているつもりだ。

倉重 寄り添う相手として岸田氏はどうか?

山口 外相を長くやり外交の岸田と思っていらっしゃるんだからもっとそれを発揮してもらいたい。連立のパートナーにも十分お気遣いいただいている。しっかりと連携を強めていきたい。

   ◇   ◇

 山口氏には連立の功罪も問うた。功は、合意プロセスの妙と政局の安定とし、具体的結実としては、税と社会保障の一体改革を野党として賛成し、与党として完成させた。安保法制整備にあたり、集団的自衛権をフルに実現しようとした安倍氏にブレーキをかけ個別的自衛権の範囲内で解釈できるよう収めた、と2点を挙げた。米中衝突のブレーキ役は、まさに連立の真価が問われる重い仕事になる。

やまぐち・なつお

 1952年、茨城県生まれ。公明党代表。党参院国対委員長、政務調査会長、防衛政務次官、参院行政監視委員長など歴任。著書に『公明党に問うこの国のゆくえ』(小社刊)ほか

たはら・そういちろう

 1934年、滋賀県生まれ。ジャーナリスト。タブーに踏み込む数々の取材を敢行し、テレビジャーナリズムの新たな領域を切り開いてきた。近著に『堂々と老いる』(小社刊)ほか

くらしげ・あつろう

 1953年、東京都生まれ。78年東京大教育学部卒、毎日新聞入社、水戸、青森支局、整理、政治、経済部を経て、2004年政治部長、11年論説委員長、13年専門編集委員

「サンデー毎日5月1日増大号」表紙
「サンデー毎日5月1日増大号」表紙

 4月19日発売の「サンデー毎日5月1日増大号」は、ほかにも「とにかく家計大防衛 第1弾 食料・日用品編 5月ウルトラ危機にこう備えよ!」「チャンピオンへの道のり 大坂なおみ母・環さんが語りつくす」「2022年入試速報第10弾 医学部に強い高校 51国公立21私立大」などの記事も掲載しています。

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