週刊エコノミスト Online

いつまで続く小室さん報道 合否、ビザは公的関心事か 社会学的皇室ウォッチング!/32=成城大教授・森暢平〈サンデー毎日〉

小室さんの報道フィーバー!?
小室さんの報道フィーバー!?

 また、小室圭さんが話題になってしまっている。2月に受験したニューヨーク州の司法試験に合格しなかったというニュースを巡ってである。私たちはいつまで小室さんのニュースに接しなければならないのだろうか。

 ニューヨーク州司法試験委員会のサイトに合格者が発表されたのは4月15日午前0時すぎ。残念ながら、小室さんの名前はなかった。深夜にもかかわらず、インターネットニュースには速報が流れ、ツイッターには小室さんの不合格を揶揄(やゆ)する書き込みが続いた。

 6時間後、NHK朝の「おはよう日本」は、4番手のニュースとして「不合格」を伝えた。NHKは午後1時、小室さんが勤務していた東京の弁護士事務所の奧野善彦所長に、「残念ながら落ちました。合格点に5点足りず、とても無念です」とニューヨークから電話があったと報じている。小室さんは、「次は7月に挑戦します。しっかり頑張ります」と伝えたという。

 ワイドショーもその日の朝から小室さんを扱っている。主なところでは、読売テレビ(日本テレビ系)の「情報ライブ ミヤネ屋」が23分、CBCテレビ(TBS系)の「ゴゴスマ?GOGO! Smile!」が15分など。放送枠としては、控えめなところが多かった。小室さんの就労ビザの問題、眞子さんがメトロポリタン美術館で日本人の芸術作品の解説を書いたことが話題であった。

「ゴゴスマ」で元衆議院議員の金子恵美さんが「解雇になって、じゃあ、どうやって生計を立てていくのだろうかとか、親としては、そういう思いになりますよね」と述べているのが目立ったが、厳しいコメントはほとんどなかった。私人に対する批評、不合格という事態を揶揄することは、テレビ局としては憚(はばか)られたのであろう。

 プライバシーはないのか

 この点、テレビ朝日の「羽鳥慎一モーニングショー」には見識がみられた。司会の羽鳥さんが「必要以上に追いかけ回すということはあってはならないし、やらない方がいいと思います」と述べ、コメンテーターの玉川徹さんも「関心事はメディアが取り上げる。そういうものですよ、メディアはね。(略)もうそっとしておいてあげて、いいんじゃないのかなと私としては思いますけどね。もう一般の人ですから、2人とも」と応じている。

 これに対し、雑誌記事は目を覆うばかりであった。最も酷(ひど)いと感じたのは、『女性セブン』(5月5日号)である。「眞子さん『小室圭さんの強情』にやつれ果てて NY独占撮」と題する記事だ。ニューヨーク市で、不合格直後の小室さんがスーツ姿で街を歩く様子を撮影したほか、眞子さんが大学病院通院のため外出する様子を隠し撮りした。『女性セブン』は、結婚前に公表された複雑性PTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療もあると示唆したうえで、小室さんが解雇されれば滞在資格がなくなるため、眞子さんが美術館で働くビザを取得しようとしているとの臆測を報じた。そして、「病院への通院は、ビザ取得に向けた相談の意味合いもあったかもしれない」という「在米ジャーナリスト」のコメントを紹介している。

 元皇族である眞子さんには、私生活を公表されないプライバシー権はないのだろうか。とくに病気や病院への相談内容は、眞子さんの立場に立ったとき、公開を欲しないであろうはずの個人情報である。小学館という日本で有数の大手出版社が出す雑誌で、このようなプライバシー侵害が公然と行われていることに驚くばかりである。

 臆測記事が多いのも気になる。『週刊新潮』(4月28日号)の「『小室圭さん』詐欺的結婚へのため息」と題する記事は、ある大学の名誉教授に「3回目も挑戦するとのことですが、その間も警備費は公金から捻出され、ビザの問題も不透明な形でクリアされていくのだとすれば、皇室特権というより非合法的な感じさえします」と述べさせている。「警備費の公金支出」「ビザの不透明な取得」という情報は曖昧な仮定であって、それをもとに、「非合法的な感じ」を受けるというのは飛躍に感じた。

『週刊朝日』(4月29日号)の「小室夫妻『カナダ移住』説の現実味」もどうかと思った。皇室とカナダの繋(つな)がりなどを挙げて、移住説を検討した記事だ。読み物としては成り立っているが、確たる証拠はなく、実際には「現実味」はないとの感を抱いてしまった。

 小室ニュースとヤフー

 興味深いのは、ニュースサイトのヤフーニュースには、小室さん夫妻関係の記事が、あまり掲載されなくなっていることだ。例えば、先ほどの『女性セブン』の記事はヤフーニュースには載っていない。また、『女性自身』(5月3日号)の「小室圭さん弁護士絶望的で主夫専従転身『NYで育メンに』」、『週刊女性』(5月3日号)の「眞子さん結婚直前に漏らしていた『ダメだったら別れる!』宣言」も、自社サイトだけの掲載で、ヤフーニュースには転載されていない。

 雑誌関係者たちは、「小室バッシング・メディア」の一部の記事がヤフーから「出入り禁止」になっていると噂(うわさ)している。

 ヤフーニュースをめぐっては、昨年10月、小室さん夫妻の結婚をめぐる記事に対し書き込まれた一般読者のコメントが非表示になったことがある。誹謗(ひぼう)中傷にあたるようなコメントの数が基準を超えたため、表示されないようにしたのだ。

 小室さん夫妻の記事がヤフーニュースに掲載されると、いまも小室さんへの悪口で炎上状態になることが多い。小室さんの司法試験の合否やビザの問題を面白おかしく書けば、読者の関心を引く。しかし、それが報じるべき問題であるかどうかは、メディアの良識による判断にかかっている。

 私のこの記事も炎上の可能性があるのでヤフーニュースには載らないかもしれない。しかし、それでもいいような気もする。

 小室さんの司法試験の合否やビザ取得が公に論じるべき関心事かどうか、そのことと表現の自由との関係はどうあるべきなのか。良識を持って考えていただける人にこそ読んでもらいたいと思っているからだ。ただ、誹謗中傷が表現の自由の範囲を狭めているのは残念だ。

もり・ようへい

 成城大文芸学部教授。1964年生まれ。博士。毎日新聞で皇室などを担当。CNN日本語サイト編集長、琉球新報米国駐在を経て、2017年から現職。著書に『天皇家の財布』(新潮新書)、『天皇家の恋愛』(中公新書)など

「サンデー毎日5月8・15日合併号」表紙
「サンデー毎日5月8・15日合併号」表紙

 4月26日発売の「サンデー毎日5月8・15日合併号」には、ほかにも「保存版 大反響特集 生活が第一!とにかく家計大防衛 第2弾 光熱費編 『電気』『ガス』『水道』究極の節約マニュアル」「総力特集6P 底なしのウクライナ侵攻に出口はある! プーチン大暴走の処方箋 『ニッポンの真の国益』私はこう考える 東郷和彦、森本敏、田中康夫」「2022大学入試〝完全総括〟 2023年はこうなる」などの記事も掲載しています。

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

8月9日・16日合併号

世界経済 ’22年下期総予測第1部 世界経済&国際政治14 米国は景気後退「回避」も 世界が差し掛かる大転機 ■斎藤 信世/白鳥 達哉17 米ドル高 20年ぶり高値の「ドル指数」 特徴的な非資源国の通貨安 ■野地 慎18 米長短金利の逆転 過去6回はすべて景気後退 発生から平均で1年半後 ■市川 雅 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事