2022年大学入試:コロナ禍本格化2年目、共通テスト平均点過去最低 2022大学入試〝完全総括〟 2023年はこうなる!〈サンデー毎日〉
2022年度入試(22年4月入学)も終わりを迎えた。合格者たちは大学生活をスタートさせていることだろう。その新入生の志願状況から、コロナ禍が本格化して2度目となった大学入試を総括すると、さまざまな局面で二極化が進んだことが見えてくる。
22年度の一般選抜は、出願動向に大きな影響を与える変動要因が、主に二つあった。2年目のコロナ禍。そして、大学入学共通テストの平均点が、前身の大学入試センター試験時代も含め、7科目で過去最低を記録したことだ。
しかし、国公立大の志願者は3年ぶりに増え、42万8657人だった。共通テストの平均点大幅ダウンにもかかわらず、志願者が増えたのはなぜか。それは、根強い国公立大人気と、難関国立大の志願者が増えたことが要因の一つにある。つまり、22年度の共通テストはトップ層も苦戦する難易レベルで、多くの受験生がいわば同じスタートラインに立ち、〝2次試験勝負〟になったということだ。
この点を、高校の進路指導現場がしっかりと生徒に伝えていた。そのため旧七帝大に東京工業大と一橋大、神戸大を加えた難関国立10大学の中で、前年の志願者を下回ったのは、東北大と名古屋大、神戸大の3大学にとどまった。
さらに、トップ層の難関大志向の強さも影響している。21年度はコロナ禍で移動を嫌う受験生の影響で、全国区の東大や京大、北海道大の志願者が減少した。今回、この3大学の志願者が回復したのは志願減の反動とともに、コロナ禍に移動のリスクと大学の魅力を比較した上で、トップ層では進学意欲が勝ったということの表れと言えよう。そして、難関国立10大学全体として志願者が減らなかったのは、コロナ禍で不透明な社会状況だからこそ、難関大で学ぶことの意義を見いだす受験生が多かったということではないだろうか。
難関大の志願者が増える一方、準難関大は共通テストの平均点ダウンの影響で、志望を貫く受験生が減少し、志願者が減少する大学が目立った。難関大に比べて共通テストの配点比率が高いため、2次試験での逆転が難しいという判断から筑波大や千葉大、東京都立大などで志願者が減少した。
21年度は2次試験の取りやめもあり、志願者が大幅に減った横浜国立大も、今回は増加はしたが、20年度のレベルには戻っていない。大阪市立大と大阪府立大の統合により誕生した大阪公立大も、1万3188人と国公立大最多の志願者が集まった。しかし、20年度の2大学合計の志願者数には届かなかった。
共通テストの配点比率が大きく、比較的難易度が低い大学が多い公立大も志願者が減少した。国公立大は難易度レベルにより、出願状況に濃淡が見られた。
22年度は私立大も難関大人気が高まった。
21年度は私立大全体で志願者が14%と大きく減少。早慶上智、MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)、関関同立(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)といった難関大グループの中で、志願者が前年を上回ったのは上智大、立教大、関西学院大の3大学のみだった。しかし、22年度は上智大、中央大、立教大、関西大以外で志願者が増えた。
難関大の志願者が増えたのは前年の反動とともに、共通テストの難化により、国公立大志望者の併願が増えたことにある。前年の志願者を上回る大学が増えたとはいえ、20年度のレベルに戻った大学は少ない。だが、受験生の人気が回復したことは確かだ。一方、私立大全体の一般選抜の志願者は前年並みにとどまりそうだ。その要因となっているのは、私立大の出願状況の二極化。これは駿台予備学校が242大学の志願者数を集計したデータが示している。詳しく見ると、難易度が高い大学で志願者が増加傾向なのに対し、難易度が下がるほど志願者の減少幅が大きい傾向にある。
難関志向と「早期合格」の二極化
この要因として考えられるのは、難易度が低いグループは総合型選抜や学校推薦型選抜といった年内入試の定員の割合が高く多数の合格者を出すため、一般選抜の志願者が減少しているということだ。この志願減は、コロナ禍で早く合格を決めたいと考える受験生と、学生を確実に確保したいという大学の思惑が一致した結果と言えよう。
一方、難易度の高いグループで増加傾向なのは、一般選抜の定員が比較的多いことが挙げられる。さらに、コロナ禍の社会情勢を受け、より将来の選択肢が多い大学を目指そうという意識も働いたのではないか。この点は難関国立大の志願者と同じ意識なのだろう。
23年度入試には、高校入学時からコロナ禍を経験してきた受験生が臨む。コロナ禍に加え、ウクライナ危機という社会や経済の不安定要因を目の当たりにしていることは、大学選びや学部志望動向に大きな影響を与えていることだろう。
経済状況が悪化すれば、学費が安い国公立大人気が高まり、その中で自ら将来を切り拓(ひら)いていこうと考える受験生が多くなれば、難関国立大志望が高まる可能性がある。私立大はコロナ禍で先行きの見えない学校生活を経験してきた受験生が、いわば早めに合格を手にできる総合型選抜や学校推薦型選抜への出願を控えるとは考えにくい。そのため、私立大入試は22年度と同じ構図で、一般選抜の出願状況が二極化しそうだ。
「情報」の新設など25年度の新課程入試を控え、入試制度面で大きな動きはない。だが、受験生はコロナ禍やウクライナ危機など、自らの意思ではどうにもならない不安定要素とも対峙(たいじ)しなければならないのも現実だ。学校現場や保護者など、大人の支援が必要なのは言うまでもないだろう。