【週刊エコノミスト創刊100年キャンペーン実施中】いまなら週刊エコノミストオンラインをお申し込みから3カ月間無料でお読みいただけます!

週刊エコノミスト Online2022年の経営者

コンテナが活況、LNGは商機拡大 橋本剛 商船三井社長

Interviewer 秋本裕子(本誌編集長) Photo 武市公孝:東京都港区の本社で
Interviewer 秋本裕子(本誌編集長) Photo 武市公孝:東京都港区の本社で

コンテナが活況、LNGは商機拡大

 Interviewer 秋本裕子(本誌編集長)

── 2022年3月期は最終(当期)利益予想が6300億円(前期比7倍)と過去最高の見通しです。コンテナ船事業が非常に好調です。

橋本 コンテナ船は、10年ごろから不況に苦しみました。船を作りすぎて世界全体の貨物輸送の需給バランスが崩れたからです。各国の船会社が投資を手控えた結果、20年ごろから需給関係が均衡しました。同時期に発生した新型コロナウイルスの感染拡大により、各国が大規模な経済対策を打ち出したことで、米欧での消費や、中国の投資に火が付き、貨物の量が急激に増えました。それによって21年度第2四半期(21年7~9月)ごろから運賃がものすごく高騰しました。(最高益は)想定外に市況が良かった結果であり、収益の実力がついたからではありません。(2022年の経営者)

── 足元のコンテナ船の需給は。

橋本 新しい船は作り出してから3年くらいは市場に出ません。また、コロナ禍によりトラックや港湾運送の労働者が足りなくなったことで、荷さばきが大きく遅れています。例えば、米西海岸ロサンゼルス港では船の大渋滞が発生しており、ピーク時には100隻くらいが沖合で待機して、入港まで数週間も待つ状況でした。今はこれが50隻くらいに減っていますが、それでもまだ厳しい状況です。

ロシアリスクを想定

── 荷主にとって厳しい状況はいつごろ解消するでしょうか。

橋本 当社出資(31%)のコンテナ船運営会社「オーシャンネットワークエクスプレスホールディングス」は、21年度に新造船の案件をいくつか詰めており、22年度も続けます。本格稼働するのは23、24年度なので、厳しい需給関係はまだ続くでしょう。一方で、ウクライナ戦争の動向に加えて、資源価格の高騰や米国などでの金利引き上げなど、荷動きにはマイナスの要素が出てきています。私は、世界経済が厳しい局面に入ってきており、22年度半ばには海運需給の正常化が始まり、年度後半は迫り来る不況に備えないとまずいと見ています。

── 穀物や鉱石などを輸送するばら積み船(バルカー)、自動車輸送船、原油やLNG(液化天然ガス)タンカーなどの事業環境は。

橋本 08年のリーマン・ショック直後までの過剰投資によって、各セクターは苦労をして船舶需給を調整したので、手応えを感じています。自動車船やバルカーも20年度や19年度に比べると良い業績が出ています。コンテナの運賃市況が良すぎるのでかすんでしまうのですが、力強く回復しています。原油タンカーだけは市況が大幅に出遅れていましたが、足元では少しずつ荷動きがよくなってきています。LNGは従来から長期契約の運賃が中心で安定しています。

── ロシアでのLNG事業では、北極圏で稼働中の「ヤマル」と開発中の「アークティック2」のほか、極東の「サハリン2」に輸送業者として参加しています。今後の対応は。

橋本 ヤマルは順調ですし、当社にも利幅が厚い事業です。英シェルや米エクソンモービルがロシアからの撤退を発表していますが、当社は権益を保有しているわけではなく、顧客からの依頼で輸送する立場であり、サハリンでも同様です。現状のロシア情勢によって、すぐに撤退する考えはないですが、国際政治の展開次第で事業継続ができない状況も頭の片隅で想定する必要はあると思います。

── 海運業でも荷主や投資家から脱炭素への要求が強まっています。

橋本 2段階で進めようと考えています。まず20~30年代は、船の省エネ化や大型化による効率アップのほか、速度を落とした減速航海、重油中心の燃料をLNGやメタノールなど代替燃料への切り替えといった既存技術の活用によって、温室効果ガスの排出量を半分程度は減らすことができるメドが立っています。

 残りの半分の削減は30年代以降の課題です。アンモニアやバイオ燃料などを使うことが考えられますが、現状では燃料の供給面とコスト面でメドは付いていません。バッテリーや水素で走らせる技術の開発も進めて、50年までに間に合わせるのが長期のプランです。当社だけでは解決できないので、社外のいろいろな(脱炭素技術の)プロジェクトに顔を出しています。

── 年間配当予想は1株当たり1050円と、前年実績(150円)から大幅な増額です。

橋本 22年3月期は1株当たり当期利益が5000円超の予想で、配当性向は2割という目安に沿って配当も大幅に増える見通しです。今後も増やしていく必要があるという問題意識はありますが、21年度予想の当期利益6300億円は持続可能ではありません。ある程度安定した水準の利益が出る段階になったら、株主還元を徐々に引き上げてもいいとは考えています。

(構成=浜田健太郎・編集部)

横顔

Q これまで仕事でピンチだったことは

A 米エンロン社が中東のLNGをインド発電事業で使う計画を進め2隻の輸送契約を取りましたが、その後、同社が破綻。LNGは日本や欧州への輸送に変更となり、損失はほとんど出ずに済みました。

Q 「好きな本」は

A 海外長編小説が好きで、トルストイなどは全て読んでいます。

Q 休日の過ごし方

A 散歩やゴルフなど適度な運動をするほかは、好きな本を読みます。


事業内容:総合海運業

本社所在地:東京都港区

設立:1884年5月

資本金:654億円(2021年3月時点)

従業員数:8571人(21年3月時点、連結)

業績(21年3月期連結)

 売上高:9914億円

 最終利益:900億円


 ■人物略歴

橋本剛(はしもと・たけし)

 1957年生まれ、東京都出身。都立立川高校、京都大学文学部卒業。82年4月大阪商船三井船舶(現商船三井)入社、2009年6月執行役員、19年4月副社長を経て21年4月から現職。64歳。

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

12月13日号

論争で学ぶ 景気・物価・ドル円14 バブルは別の顔でやって来る ■熊野 英生17 鳴らないアラート 「経済の体温計」を壊した罪と罰 ■中空 麻奈18 対論1 米国経済 景気後退入りの可能性高い ■宮嶋 貴之19  景気後退入りの可能性は低い ■高橋 尚太郎20 対論2 日銀 23年後半から24年前半 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事