週刊エコノミスト Online2022年の経営者

創業135年、EC向け物流拠点も拡大=藤倉正夫・三菱倉庫社長

Interviewer 秋本裕子(本誌編集長) Photo 武市公孝:東京都中央区の本社で
Interviewer 秋本裕子(本誌編集長) Photo 武市公孝:東京都中央区の本社で

再生医療分野の物流を強化

藤倉正夫 三菱倉庫社長

 Interviewer 秋本裕子(本誌編集長)

── 事業内容を教えてください。

藤倉 倉庫、トラック輸送、港湾のコンテナターミナルの運営、貿易貨物の海上輸送、航空輸送などの物流事業と、ビル賃貸や商業施設の運営などの不動産事業との二つが当社の主な柱です。

 もともと三菱の銀行業と、倉庫業の前身である旧三菱為換店の蔵敷業務(倉庫業)を受け継ぎ、1887年に東京・深川で創業しました。今年で135年になります。(2022年の経営者)

── 倉庫の用地を活用し、不動産事業を始めたのですか。

藤倉 本格進出したのは1960年代からです。東京都中央区新川の当社倉庫跡地にデータセンター対応ビル「東京ダイヤビル」を建設したのが最初です。以来、神戸ハーバーランドの「umie」(神戸市)、「横浜ベイクォーター」(横浜市)などの商業施設を運営し、JR大阪駅の複合商業施設「グランフロント大阪」の共有持ち分もあります。現在は6大都市(東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、福岡)で再開発を行い、約50棟(オフィス、商業施設、住宅)の賃貸事業を行っています。不動産で安定した利益を確保し、物流で成長する会社です。

── 新型コロナウイルス禍の影響はどうでしょう。

藤倉 2022年3月期は連結で営業収益、営業利益、経常利益がいずれも過去最高を更新しました。23年3月期も経常利益はほぼ前年並みと、堅調な業績を見込んでいます。倉庫と運送は景気の変動に左右されにくい事業ですが、Eコマース(電子商取引)による荷物の増加が大きいと思います。

 不動産も堅調です。昨年は緊急事態宣言で一時、所有する商業施設の集客が落ち込みましたが、かなり回復しました。

── ロシアによるウクライナ侵攻の影響は?

藤倉 直接的な影響はほとんどありませんが、間接的にはトラック輸送に響いてくると思います。原油価格の高騰が今後も続くようであれば、顧客への価格改定の検討が必要になるかもしれません。サプライチェーンの動向も気になります。ロシアとウクライナからのレアアース(希土類)や小麦などの食料関係については、日本企業が調達先を両国から変更する可能性もあり、そうした影響について情報収集して対応します。

EC向け物流拠点拡大

── 物流業界では人手不足が懸念されています。

藤倉 Eコマースの市場拡大に対応するため、EC物流に特化した物流センターを昨年、埼玉県三郷市にオープンしました。最新のロボットを導入し、作業データを入力すると、ロボットが棚ごと商品を運び、作業員が待機して受け取る仕組みで、人手不足対策につながります。今後、関西圏と中京圏にもこうした物流センターの拡大を目指しています。

── 他社の倉庫・物流事業との違いはどこにありますか。

藤倉 医薬品と食品を中心に取り扱う点です。当社は医薬品の流通過程で、厚生労働省などが定める品質管理基準に対応した物流サービスを全国規模で展開する数少ない国内企業の一つです。医薬品にはさまざまな温度帯のものがあり、物流にも独自のノウハウが求められます。錠剤などは室温での管理が一般的ですが、ワクチンなどの注射剤は保冷品が中心で、製品によってさらに細分化されており、各メーカーから指定された温度帯での管理が必要です。

── 医薬品の温度管理にはノウハウが必要ですね。

藤倉 ただ、最近は医薬品物流での競合も増えており、超低温での保管・運送にも取り組んでいます。特に再生医療やバイオ医薬品の物流は成長が見込まれます。再生医療関連は、顧客からのオーダーメードの物流も多いです。温度管理をした状態で細胞を輸送し、海外で製品化され、再び日本に運ばれて患者に投与するという流れが求められるものもあります。事業強化に向けて、医療関連の物流を提供する米国企業と戦略的な提携関係も結びました。

 国内では、食品物流大手のキユーソー流通システムと提携しました。コロナ禍で冷蔵冷凍食品や医薬品物流の需要が増加しており、トラック輸送を強化して、倉庫・物流センター業務の拡大を目指します。

── 今後の投資計画を教えてください。

藤倉 21年度を最終年度とする3年間の中期経営計画では、物流と不動産が半々で、合計で約1000億円の投資を行いました。今年度から24年度までの新たな中計では1300億円に増額し、うち500億円はM&A(企業の合併・買収)やIT関連の戦略投資に充てる考えです。

 投資拡大と同時に資本効率を向上させるため、不動産など保有資産の一部売却も計画しています。ファンドやリート(不動産投資信託)の組成などを含め、検討しています。

(構成=桑子かつ代・編集部)

横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスパーソンでしたか

A 30~35歳の頃に米国で日系自動車部品メーカーに駐在し、米国製部品の対日輸出に関わっていました。

Q 「好きな本」は

A ジム・コリンズの『ビジョナリーカンパニー』シリーズです。

Q 休日の過ごし方

A コロナ禍でスポーツジムに行くのを休んでいるので、最近は自宅の周辺を散歩しています。


事業内容:倉庫・運送・物流、不動産業

本社所在地:東京都中央区

設立:1887年4月

資本金:223億円

従業員数:4598人(2021年3月末、連結)

業績(22年3月期、連結)

 営業収益:2572億円

 営業利益:181億円


 ■人物略歴

藤倉正夫(ふじくら・まさお)

 1959年東京都生まれ。成城学園高校卒業、82年早稲田大学政治経済学部卒業後、三菱倉庫入社。国際業務室長、大阪支店長を経て、2017年常務取締役、18年4月から現職。63歳。

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