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週刊エコノミスト Online 2022年の経営者

10言語「越境EC」で日本企業の海外進出を支援=直井聖太・BEENOS社長

Interviewer 秋本裕子(本誌編集長) Photo 武市公孝:東京都品川区の本社で
Interviewer 秋本裕子(本誌編集長) Photo 武市公孝:東京都品川区の本社で

米・台湾向けに勢い、追い風は円安

直井聖太 BEENOS(ビーノス)社長

 Interviewer 秋本裕子(本誌編集長)

── Eコマース(電子商取引、EC)事業が活況ですね。

直井 新型コロナウイルス禍でステイホームが世界的に広がり、インターネットを中心に消費が伸びました。特にアジア新興国などでEC化率(全商取引のうちECの割合)が顕著に増えた点に注目しています。米国でも人々の利用頻度が増え、EC化率の上昇はブームで終わらず今後も続くと考えています。(2022年の経営者)

── 海外向けに商品をネット販売する「越境EC」が主力です。手応えは。

直井 2021年9月末時点で、越境EC事業の会員数は330万人以上となり、10言語、118カ国・地域に対応しています。前期(21年9月期)の流通総額(グループ各社が取引した商品代金や送料、手数料などの合計)は646億円で、特に米国、台湾がけん引しています。今期は750億~800億円まで伸びる見込みで、来期(23年9月期)は流通総額1000億円を目指しています。

── 越境ECでの売れ筋はどんな商品ですか。

直井 ホビーカルチャー関連の商材が最も伸びています。『ドラゴンボール』や『遊戯王』など日本発コンテンツの関連グッズを購入する人が多く、国によって年齢層も異なります。台湾や香港ではかつての日本に憧れた40代、米国では世界が「オタク化」していく中、日本のポップカルチャーを面白いと感じている20代で、それぞれ消費が伸びています。

 日本メーカーが質の高いコンテンツを世界に発信することで、いろいろな所にチャンスがあると感じています。越境ECは中国の爆買いの恩恵を受けて成長しましたが、今は家電製品や化粧品は一部で、嗜好(しこう)品に手を伸ばせる時代になったのは大きな特徴です。

── 企業が海外向けに商品を売るのは難しい面があるのでは。

直井 当社は業界最大級の海外向け商品購入サービス「Buyee(バイイー)」を手掛けています。企業にとってハードルが高い物流や決済、言語の壁などを解決し、海外販売を無償でサポートするサービスです。システムが海外販売に対応していない日本のECサイトは多く、バイイーと連携すれば海外販売が手軽にできるようになります。日本のECサイトを海外から見ると、大抵、当社のサービスが絡んでいることが分かると思います。蓄積した商品情報をもとに、輸出禁止品を自動的にブロックする機能もあります。

配送にもこだわり

── 日本から海外への配送も手掛けています。

直井 EC支援では物流も重要で、当社の強みにもなっています。海外向けの配送は国内よりも荷物が手荒に扱われる場合が多く、それに耐えうる梱包(こんぽう)が必要になります。小さな商品を注文したのに大きな箱で届いたという経験はないでしょうか。当社ではユーザーの希望に応じ、梱包を選択できるサービスもしています。

── 足元の円安の影響はどうですか。

直井 運送、配送で航空便や船便を使う機会が多いため、原油高の影響はありますが、その値上がり以上に消費の伸びが強く、円安は間違いなくメリットと言えます。円安効果が最初に表れたのは12年に第2次安倍晋三政権(当時)のアベノミクスで強烈な円高が是正された時期で、中国の経済成長が重なって消費がかみ合い、売り上げが倍増するような勢いがありました。その後、為替相場が落ち着いた後もアジアの成長とともに発展し、今ではネット経由で翌日には商品を配送できる時代になりました。

── ネット宅配買い取りの「ブランディア」も知られています。

直井 元々は、国内で消費者から中古ブランド品を宅配で買い取り、国内で販売する事業でしたが、20年からは海外展開を本格化させました。日本で買い取った商品を台湾やタイで販売しており、100億円規模の流通があります。ブランドバッグや時計などの高額商品をネット経由の宅配で送るのに不安を抱く人もいるため、20年6月からは店舗展開も始めました。日本ほどリユース文化が浸透している国はなく、環境配慮の観点からもグローバルな成長産業だと考えています。

── EC事業の今後の展開は。

直井 当社はインターネット黎明(れいめい)期の1999年から国内のEC事業を始め、市場が広がる中で国内から海外展開にかじを切り、赤字を出しながら先行投資をした結果、越境ECが中核事業に成長した経緯があります。今後は国ごとにマーケティングを進め、日本企業向けのサービスを強化したいと考えています。

 これまでに蓄積した物流リソースや、各国対応で進めてきた顧客サポートなど、当社のサービスには日本の課題への解決策が凝縮されています。

(構成=梅田啓祐・編集部)

横顔

Q これまで仕事でピンチだったことは

A 主力サービス「Buyee」のリリース初日にシステムトラブルで決済が滞り、対応に追われました。幸い翌日の午前中には問題が解決されたので助かりましたが、一時は「終わった……」と天を仰ぎました。

Q 「好きな本」は

A 『7つの習慣』(スティーブン・コヴィー著、キングベアー出版)です。この本を読むたびに初心に立ち返っています。

Q 休日の過ごし方

A 5歳と2歳の子供と遊んで過ごしています。


事業内容:国内外におけるEC事業

本社所在地:東京都品川区

設立:1999年11月

資本金:27億7500万円

従業員数:799人(2020年9月末、連結)

業績(21年9月期、連結)

 売上高:250億円

 営業利益:16億8500万円


 ■人物略歴

直井聖太(なおい・しょうた)

 1980年愛知県生まれ。私立東海高校、明治学院大学経済学部卒。2005年ベンチャーリンク入社。08年ネットプライスドットコム(現BEENOS)入社、12年に子会社の転送コム(現tenso)社長に就任。13年BEENOS取締役を経て、14年12月から現職。41歳。

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