週刊エコノミスト Online2022年の経営者

外食からeスポーツまで非資源事業に注力=藤本昌義・双日社長

Interviewer 秋本裕子(本誌編集長) Photo 中村琢磨:東京都千代田区の本社で
Interviewer 秋本裕子(本誌編集長) Photo 中村琢磨:東京都千代田区の本社で

リテール事業強化で収益増へ

藤本昌義 双日社長

 Interviewer 秋本裕子(本誌編集長)

── 2022年3月期の最終(当期)利益は過去最高の823億円となり、23年3月期も更新を見込んでいます。好調の背景は。

藤本 04年の(日商岩井とニチメンの)合併後、リーマン・ショックによる経営悪化などもあり、積極投資ができない状況が続きましたが、15年度から本格的に再開しました。15~17年度や18~20年度の中期経営計画、21年度からの現中計と計画ごとに3000億円ずつの投資計画を実行し、投資した事業から稼ぐ力がついてきました。そこに22年3月期は石炭やLNG(液化天然ガス)をはじめ、保有する資源価格が上がり、大きなプラスアルファが出ました。(2022年の経営者)

── 資源価格の変動に影響を受けすぎないよう非資源事業に注力し、昨年は外食大手ロイヤルホールディングス(HD)と資本業務提携しました。狙いは。

藤本 リテール(個人営業)や生活産業で食料を扱う部隊は、多くがBtoB(企業間取引)のビジネスでした。仕入れた物を売る力を強化すべく、BtoC(対消費者)に近い会社と組む、良い機会と捉えています。例えばアジアで単に肉を売るだけでは消費者に浸透しないので、ハンバーグやステーキなどの新しい食べ方を紹介します。ノウハウを持つ会社と組んで一緒に海外展開すれば、ビジネスを伸ばせます。日本食と言えばすしや天ぷらですが、ロイヤルHDは天丼・天ぷらの専門店「てんや」を傘下に持つので、現地になじみやすいとも考えました。

── リテール事業強化の柱と言えるものですね。

藤本 国内でも、仕入れ方法の工夫など当社のノウハウを生かすことでロイヤルHDに貢献できていると思います。さらに、航空機内食事業を手掛ける同社子会社の株式60%を昨年取得しました。(世界で新型コロナウイルスとの共存を図る)ウィズコロナ時代には再び海外渡航が活発化し、強い収益力につながると見込んでいます。

── アジアの中で、特にベトナムには強みがあります。現地事業の一つとして、コンビニ「ミニストップベトナム」の運営を手掛けていますが、手応えは。

藤本 日本のコンビニそのままだと定着しません。ベトナムでは、消費者は青空市場で食料を買う習慣がありますが、コロナ禍で市場は閉鎖されました。そこに「近所のお店で、温度管理された食料や水が買える」ということが消費者に支持されました。一方で、店舗配置などはまだ手探りです。「どのような総菜なら売れるのか」という情報収集も行い、各店舗の1日の販売額は少しずつ上がってきました。現在、ベトナムで126店舗ですが、さらに広げたいです。

トルコで病院運営事業

── 非資源事業では、トルコでの官民連携型の病院運営事業にも力を入れていますね。

藤本 病院で働く人は、医師も含めて約1万人にのぼります。薬の在庫や手術室の稼働状況、医療物資の不足などを当社の運営センターで一括管理しています。1日当たり数千件のリクエストが来ますが、運営管理でこなし、医師からは「治療に専念できる」との声があります。ヘルスケアには力を入れる方針で、運営ノウハウを吸収して他にも展開するべく、社員を駐在員として派遣しています。

── 現中計で掲げた成長戦略投資の3領域の一つとして「素材・サーキュラーエコノミー(循環型経済)」を掲げています。

藤本 新素材開発やリサイクルは難しい分野です。プラスチックやペットボトルの回収事業は、小規模ですがめどが立ちつつあり、貴金属回収も強化していきます。マーケットが形成される前に、仕組みを作っていきたいですね。

 また水産資源の循環という観点から言えば、魚は「捕って売る」から「作って売る」に変えないといけないと考えています。長崎県で08年に始めたマグロの養殖事業もめどがつき、水産事業を続けるかの見極めとして2月、日本ハム子会社の水産加工会社「マリンフーズ」を買収しました。全国のスーパーなど約4000社に卸しているのでいろいろと試せます。

── 19年には藤本社長の発案で、新規事業の社内公募「Hassojitz(ハッソウジツ)」プロジェクトを始めました。

藤本 プロジェクト発の事業として5月、ゲームをスポーツ競技として捉える「eスポーツ」の関連事業を展開する会社を設立しました。経営陣では考えつかないような事業を発案してもらうのが狙いで、「まずはやってみたら?」といった感じで取り組んでいます。

 eスポーツ人口は増えています。大会を主催し、競技参加者や観戦者と当社の取引先企業をつなげれば、企業にとって新しい層を取り込めるメリットもあります。総合商社がやるとすれば、普通に考えれば既にあるeスポーツ事業の会社への投資でしょうが、当社が目指すのは一からの手作りです。独自路線が強みだと考えています。

(構成=荒木涼子・編集部)

横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスパーソンでしたか

A 結構突っ張っていて好き勝手やらせてもらいました。米国やポーランドに赴任し、トヨタ自動車との合弁会社でトヨタ流も学びました。その経験が生きています。

Q 「好きな本」は

A 司馬遼太郎の『竜馬がゆく』を読んで、海外で生活したい、商売したい、と思いました。また、北方謙三の『水滸伝(すいこでん)』『楊令伝(ようれいでん)』『岳飛伝(がくひでん)』は全て読みました。歴史は、その時のトップの判断があり、勉強になります。

Q 休日の過ごし方

A ゴルフが一番ですが、荒天候だと読書です。


事業内容:総合商社

本社所在地:東京都千代田区

設立:2003年4月

資本:1603億3900万円(22年3月末)

従業員数:2万673人(22年3月末現在、連結)

業績(22年3月期〈IFRS〉、連結)

 収益:2兆1007億円

 最終利益:823億円


 ■人物略歴

藤本昌義(ふじもと・まさよし)

 1958年福岡県出身。福岡県立修猷館(しゅうゆうかん)高校卒、東京大学法学部卒業。81年日商岩井(現双日)入社。自動車第三部長、米州機械部門長、常務などを経て、2016年4月に専務、17年6月から現職。64歳。

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