《夏レジャー》キャンプはブームから「文化」へ=SAM
キャンプはいまや、熟練の愛好家たちの遊びにとどまらず、誰でも手軽に楽しめるようになった。(夏レジャー 特集はこちら)
誰でもできる楽しみ方の多様化で成熟期
雰囲気だけ味わうコンテンツも登場
国内のキャンプ場はいま、常に予約がいっぱいという盛況が続いている。第3次キャンプブームともいわれ、新型コロナウイルス感染拡大前の15年ごろから人気に火がついた。以前は限られた人の「ひそかな楽しみ」であったものが、今はSNS(交流サイト)などに情報が拡散され、「これなら自分にもできる」とハードルが大きく下がった点が従来のブームとの違いだ。
キャンプ場にはある変化が起きている。従来は「いろいろなキャンプ場に行ってみたい」という人が大多数で、キャンプ場の予約も争奪戦の様相だった。しかし、現在はそれが落ち着き、キャンプを楽しむ人がそれぞれ、自分のホームグラウンドを見つけ、何度も訪れる「リピーター」に変わっているという。
また、キャンプ場の稼働日も、従来はゴールデンウイークやお盆をメインとしていたが、一年を通しての平準化に進んでいる。自分の休みに合わせて利用しやすくなったおかげで、飽和状態は影を潜めつつある。まさに成熟期で、これまでのブームから文化として定着しようとしている。
道具の人気にも変化
キャンプのさまざまな楽しみ方の中でも、特に人気が高まっているのが「車中泊」、つまり、一般的なテントの代わりにクルマの中で食事をしたり眠ったりする形態だ。キャンプ人口が増えてくると、特に女性の場合は、どうしても安全面の問題がつきまとう。そういった点から、車内というのは安全を保つにはうってつけの場所で、需要が増えてくるのも当然の流れだといえるだろう。
車中泊の人気の高まりは、キャンプの道具の需要にも変化を及ぼしている。いままでは主役にもならなかった「キャンプ用マット」の売れ行きがいい。これは布団や寝袋の下に敷く敷布団のような形状で、車中泊を意識したクルマを販売する際、自動車ディーラーがオプション商品にキャンプ用マットを用意するほどにまで需要が高まっている。
車中泊の人気で変化が出てきたという点では、「LEDランタン」も外せない。これまでの道具は性能がなによりも重視され、ランタンであれば明るいほどいいとされてきたが、最近はデザイン性も大事なポイントの一つになっている。実際、キャンプ用品店に足を運ぶと、インテリアとしても申し分のない、おしゃれなランタンが並ぶようになってきた。
従来はきっちりとしたテント泊こそキャンプという固定観念が強かったが、今は道具の多様化とともにキャンプスタイル自体が多様化され、その自由度がブームの継続を保持している。
一方、キャンプ場の予約が取れない、本格的なキャンプにはまだ抵抗がある、という人でも楽しめるように「キャンプの雰囲気」を味わえるようなサービスも出現した。
代表例が「屋内キャンプ」である。貸し会議室やレンタルルーム、空き店舗などを貸し切りにして、その中でテントなどを張ってキャンプ気分を楽しめるようにする。さまざまなキャンプ用品も貸し出す。屋内キャンプ事業者は今年に入ってかなり増えてきている。
いまのキャンプのニーズは、大きく二つに分かれる。一つは「本格的なキャンプ」を楽しみたいというニーズ、もう一つは、手間をかけずキャンプを楽しむ自分を「インスタ映え」させたい、つまり写真SNSの「インスタグラム」などで発信したいというニーズだ。屋内キャンプは特に後者にマッチしているという。
屋内キャンプは運営側にもメリットがある。貸し会議室のような場所をキャンプ場風に改築する場合、屋外のキャンプ場と異なり、キャンプ用品の数は少なくて済み、ビジネスとしての投資が少額で済む。現在のキャンプ、およびアウトドアに対する注目度を考えれば、これから始めたとしても投資額を回収できる可能性は高いだろう。
テントの中で「サウナ」
最後に、これから人気が出そうな楽しみ方を二つ紹介したい。「テントコット」と「テントサウナ」を使ったキャンプだ。
「コット」とは、いわゆるベッドのような寝具だ。足が付いているため地面の凹凸を気にせずに眠れる。そこに屋根などが付いてテントの機能が一体化したものがテントコットである。テントとしては堅牢(けんろう)とはいえないが、手軽に設営できて、折りたためばコンパクトで持ち運びしやすいため、バイク乗りや一人でキャンプを楽しむ人たちから人気を得るかもしれない。
次にテントサウナは、その名の通り、サウナのためのまきストーブなどが付属したテントだ。テントの中を蒸気で満たしてサウナが楽しめる。もともとキャンプには、楽しみながら心と体を整えるという目的があった。体の調子を整えるためのサウナとは親和性が高い。テントサウナを用意しているキャンプ場も増えてきた。このように、キャンプは従来の枠を超えて、誰でも気軽に楽しめる文化になっているのだ。
(SAM・アウトドアライター)