Balukoのコインランドリーはなぜ居心地が良いのか
久保田淳 OKULAB代表取締役/共同創業者
古くからあるコインランドリーにもどかしさを感じていた2人の創業者が、人々が思い思いの時を過ごせる新しいランドリーを創り出した。
(聞き手=市川明代・編集部)>>>これまでの「挑戦者2022」はこちら
心もスッキリするコインランドリー
「洗濯」という家事労働の負担を少しでも減らして、生活を豊かにしてほしい──。そんな思いから、フランチャイズ(FC)形式のコインランドリー「バルコランドリープレイス」を全国展開しています。
開業するのはFCのオーナーですが、当社が施工から管理・運営まで担います。洗濯乾燥機はメーカーの最新機器を取りそろえ、洗剤は、環境負荷の少ないオリジナルのものを使っています。利用料は店舗ごとに多少異なりますが、バスタオル25枚で1000円程度から。羽毛布団はもちろん、スニーカーも洗えます。
こだわっているのは、心地よく過ごせる空間作り。他のコインランドリーと比べるとゆったりとした広さで、椅子やテーブルを置き、その間を楽に通れるようにしています。雑談したり読書したり、リラックスして過ごしてもらうために、内装は意識の邪魔になる要素を排除して、極力シンプルにしています。
オーナーの狙いはさまざま。敷地内でカフェやスポーツジム、スーパー銭湯などを経営している場合は、洗濯機を回している間に利用してもらうことができます。コインランドリー経営に適用される手厚い税制優遇を目的とするケースももちろんあります。ただし、開設の可否は、当社が地域のニーズや伸びしろを分析し、最終的に判断しています。
開業にかかる初期費用は3500万~4500万円。このほか光熱費や販促費用、売り上げに応じたロイヤルティーなどの固定費が必要となります。1日1回、必ず清掃に入り、1週間に1度、本社社員が見回りをします。機器のメンテナンスも欠かしません。原則、「基本おまかせパック」(月額8万9000円~)に加入してもらい、当社が責任を持って請け負います。
エンジニアの永松氏と共同創業
大学卒業後、スポーツ用品大手のアディダスジャパンに就職。ITベンチャーの創業などを経験した後に、大型家電世界最大手、中国・ハイアールグループの日本拠点のハイアールアジアに入社しました。コインランドリー事業を統括し、全国を回って気付いたのは、掃除が行き届いていなかったり、居心地が悪かったりして、限られた人にしか使われていない店舗が多いこと。利便性を第一に考えた店作りで、利用が広がると感じていました。
社内にもう一人、同じ思いを抱える人物がいました。06年の三洋電機(現アクア)入社以来、パナソニックによる買収、ハイアール・アクアへの白物家電事業譲渡などを経た後も、一貫して業務用洗濯機の開発に関わってきた永松修平です。永松は、自分が作った洗濯機が現場で十分に活用されていないことに憤りを感じ、自ら希望して営業企画部門に移ってきていました。一緒にやろうと声をかけると、快諾してくれました。
会社を立ち上げ、16年に1店舗目を開設。働く女性や学生が夜間でも安心して足を運べる場所、地域の人たちが集える場所としてニーズが広がり、現在、約160店舗が稼働しています。
コインランドリー市場はまだまだ可能性があります。「世界で一番心が洗われるランドリー」を目指して、進化し続けます。
企業概要
事業内容:ランドリーサービスのFC展開、海外展開、洗濯ソリューションサービスの企画・開発・提供など
本社所在地:東京都渋谷区
設立:2016年8月
資本金:1000万円
従業員数:約100人
■人物略歴
くぼた・あつし
1981年神奈川県生まれ。2006年、明治大学理工学部卒業。新卒でアディダスジャパン入社、量販流通の法人営業を担当する。10年に農業ITベンチャー創業、12年に株式売却。ソニー・ピクチャーズエンタテインメントでの新規事業開発などを経て、14年からハイアールアジアでIoTなどの新規事業開発とコインランドリー事業全般を担う。16年に永松修平氏とともにOKULAB(オクラボ)創業、代表取締役に就任。40歳。