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最速!2022年春卒 全国250大学実就職率ランキング コロナ2年目は堅調に推移 オンライン化は地方に利点
コロナ禍が本格化して2年目の大学生の就活は、完全にオンラインになるなど、不安な要因が多かったが、比較的堅調に推移したようだ。2022年春卒の大学生の就職率を大学別でいち早く振り返り、23年卒の就活も展望する。
国内では2020年春からコロナ禍が本格化したが、就活で直撃を受けた21年3月卒の大学全体の平均実就職率は、85・4%で前年を2・3ポイント下回った。対してコロナ禍2年目の22年卒は0・7ポイント上回る86・1%だった。コロナ禍にあっても、22年卒の就職率が前年を上回った要因について、リクルート就職みらい研究所所長の栗田貴祥氏は、こう話す。
「リクルートワークス研究所調査の22年卒の求人倍率は1・50倍で、バブル崩壊時の00年の0・99倍と比べればはるかに高い。企業はコロナ禍の影響を織り込んだ成長戦略を描き、地に足をつけた採用活動を行いました。その結果、航空、旅行、飲食など一部の業種を除けば、大学生の就活は堅調に推移したと見ています」
実就職率は上がったが、その過程でコロナ禍が就活生に与えた影響は大きかった。コロナ禍で大学が閉ざされ、就活の手法がオンライン化されたことにより、大学生の二極化が進んだのだ。文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所所長の平野恵子氏は言う。「22年卒の就活は、完全にオンライン化されたことが特徴です。企業情報にアクセスしやすくなり、多くの情報を得て積極的に就活を進める学生がいる一方、大学に行けず周りの学生の動きが分からないことから出遅れる学生もいました。コロナ禍は、就活における学生間の格差を大きくしたのです」
それでも、前年の実就職率を上回っているのは、求人倍率が示す受け入れ企業の多さと、各大学のキャリア支援があったからだ。さらに、オンライン化により時間や経費など、物理的な就活コストが軽減されたメリットも大きい。
「コロナの大きな影響の一つである就活のオンライン化で、企業と学生の出会いが効率化しました。場所や時間などさまざまな制約を飛び越えて企業情報にアクセスできることは、特に地方の学生にとってメリットが大きかった。オンライン化で多くの企業にアプローチでき、そこから就活の選択肢に入る企業なのか見極められるようになりました」(前出の栗田氏)
こうして就職状況が持ち直した22年卒の個別大学を、「全国250大学実就職率ランキング」で、見ていこう。
まず、卒業者数1000人以上のランキング1位は、6年連続トップの金沢工業大で、2位も昨年と同じ愛知工業大。例年通り工科系大学は強く、ベスト10には大阪工業大(4位)と名古屋工業大(8位)を加え4大学が入った。
総合大学も4大学。昨年と同順位で3位の福井大は、複数の学部を持つ卒業生1000人以上の国立大学の中で14年連続トップ。5位の名城大は前年の7位からランクアップした。ベスト10圏外から入ったのは、6位の群馬大と9位の中部大。前年の順位はそれぞれ12位と22位だった。
圏外からベスト10に入った大学には、14位から7位の昭和女子大がある。同大は、卒業者数1000人以上の女子大の中で、12年連続でトップを続けている。このカテゴリーの2位は実践女子大。実就職率が3・8ポイントアップして、全体順位も49位から12位に大きく上げている。3位は全体で14位の安田女子大だった。
難関大の状況を見ると、旧七帝大に東京工業大、一橋大、神戸大を加えた難関国立10大学では、31位の一橋大が最上位で以下、九州大(58位)▽名古屋大(87位)▽東京工業大(91位)▽神戸大(130位)までランクイン。北海道大は83・2%で139位、東北大は82・9%で146位、大阪大は79・8%で169位、京都大は79・4%で170位だった。
私立大では早慶上理(早稲田大、慶應義塾大、上智大、東京理科大)の最上位は東京理科大(16位)で次位は慶應義塾大(127位)。早稲田大は82・0%で155位、上智大は80・1%で164位。MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)では、明治大(74位)▽中央大(85位)▽青山学院大(94位)▽法政大(97位)がランクインし、立教大は82・2%で152位。関関同立(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)は、関西学院大(66位)▽関西大(92位)▽同志社大(116位)▽立命館大(125位)の順になった。
こうして見ると、難関大の順位は相対的に高くない。その要因について大学のキャリア支援担当者は、「起業など進路実態をつかみにくい学生が少なくない。多様な学生がいるため、実就職率が上がりにくい」と話す。
実就職率はそれほど高くなくても、就職先は有名企業が並ぶ。難関国立10大学や早慶上理では、アクセンチュアやPwCコンサルティングなど、外資系コンサルティングファームが多くなっている。
次に卒業者数100人以上、1000人未満の実就職率ランキングを見ていこう。1位は100%で並んだ自治医科大と四條畷学園大。前者が前年を3・8ポイント上回り21位から、後者は8・8ポイント上回り122位からそれぞれ順位を上げている。3位は18年4月に開学し、22年に最初の卒業者が出た長野県立大。この3大学の共通点は、医療系や管理栄養士などの資格が取得できる学部を有していること。工科系の豊田工業大(4位)と富山県立大(6位)を除き、ベスト10の大学は、いずれも就職に有利な資格取得ができる学部を持つ。
23年卒の学生の就活事情について触れておこう。完全オンラインの就活も2年目となり、学生は先輩の経験から新しい就活のスタイルを知り、大学も知見が蓄積された。さらに企業も慣れて計画的に採用活動が行われた。
新しいスタイルに就活の長期化がある。オンライン化による事務処理の簡素化により、企業のインターンシップ受け入れ枠が増えた。これにより、多くの学生の就活時期が早まったのだ。この状況もポジティブに捉えられると話すのは、前出の平野氏だ。
「今の就活は、3年次6月ごろに夏のインターンシップに向けた説明会が始まります。そして、インターンシップ本番、3年次3月の大規模な企業説明会を経て4年次6月から選考開始と、約1年間の長丁場です。学生は大変ですが、学業と両立しながら社会と触れ合ってキャリア感を醸成する、いい機会ではないでしょうか」
何もかも手探りだった22年卒に対し、23年卒の就活は好転している。ウクライナ情勢や円安など不透明な要素もあるが、就活におけるコロナ禍の負の要因は限定的になりそうだ。