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プロ卓球「琉球アスティーダ」がトークン販売 村田晋一郎

琉球アスティーダに加入した張本智和選手。胸にはアスティーダトークンのロゴが
琉球アスティーダに加入した張本智和選手。胸にはアスティーダトークンのロゴが

 卓球の琉球アスティーダが独自の「トークン」を導入し、収益強化とファンの盛り上げに努めている。>>特集「メタバース&Web3.0のすごい世界」はこちら

収益強化と新たな価値を提供

 9月にプロ卓球リーグ「Tリーグ」の5季目の2022〜23年シーズンが開幕した。男子の優勝候補の一つ、琉球アスティーダ(沖縄県)の選手のユニフォームの胸には、昨季からクラブトークン「アスティーダトークン」のロゴが掲げられている。

 クラブトークンはクラブが発行するトークンをファンが購入することで、クラブには収入となり、購入者(トークンホルダー)はクラブ運営を支援できる。

 トークンとは、「しるし」「引換証」などを意味し、デジタルのトークンの場合、所有者の権利などが電子的にトークンに記される。企業から商品購入時に付与されるポイントにイメージが近いが、ブロックチェーンで発行・管理されており売買が可能で、トークンホルダーの売買に応じて価格が上下する。トークンの価格が上がれば、トークンホルダーも経済的な対価を得ることができる。

 琉球アスティーダは21年7月にアスティーダトークンの発行・販売を開始した。最低100円から購入できる。発行の目的は大きくは二つ。一つはファンとチームの新たな関係の構築、もう一つは収益基盤の強化だ。琉球アスティーダの早川周作社長は「スポーツ×○○」という掛け算的思考でビジネスを仕掛けてきている。今回はさしずめ「スポーツ×Web3.0」で、クラブトークンをチーム運営強化に導入した格好だ。

 まずクラブトークンは、ファンとクラブの関係を大きく変化させる。従来のプロスポーツではファンのクラブへのサポートはチケットやグッズの購入などで単なる消費にとどまっている。一方、クラブトークンの場合は、その購入が単なる消費に終わらず、資産的な価値となる。クラブが長期的に成長していけば、トークンホルダーへのリターンもそれだけ高くなる。

 また、アスティーダトークンでは、トークンホルダー限定の企画が用意されている。コミュニティーが形成されクラブとの関係がより近くなるほか、例えば開幕戦の出場選手を予想し的中すればトークンが付与される投票企画なども行われている。

 アスティーダトークンはクラブにとっても重要な収入源になっている。現在まで3回のトークン販売で約3000万円の収入を得ている。加えて年間の売買の取引金額は約9000万円となっており、その手数料も収入となる。

クラブの収益の柱に

 プロスポーツのユニフォームの胸スポンサーは最も高額で、チームの重要な収入源だが、早川社長によると、トークン販売高と手数料により、胸スポンサーの販売額と同等の収入が得られるとの試算を立てたという。しかも今後アスティーダトークンの認知度が上がり、取引高が上がっていけば、さらに収入が増える可能性がある。そこで、冒頭述べたように胸スポンサーの部分は、トークンの告知に充てている。

 現状ではアスティーダトークンの認知度は低く、ファン全体に占めるトークンホルダーの数もまだ少ない。今後のWeb3.0の進展とトークンの認知度向上、特典の充実、チーム力強化などで、トークンの価格上昇とホルダー数の増加を目指していく。現在4回目のトークン販売の準備しており、将来的にはトークン事業を10倍の収益規模に拡大させたいという。

(村田晋一郎・編集部)


週刊エコノミスト2022年10月25日号掲載

卓球チームがウェブ3で攻める クラブトークンで収益強化 ファンにも経済的価値提供=村田晋一郎

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