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2023年大学入試:河合塾、駿台、東進、ベネッセ 国公立・私立283大学4大模試最新難易度・理系編 IT化で情報系は人気継続

「サンデー毎日11月13日号」表紙
「サンデー毎日11月13日号」表紙

 SDGsで復活の農水産系

 情報化社会、環境問題、食料危機―。山積する現代社会の諸問題を解決するには、理系の技術や知見が不可欠。こうした社会状況もあり、受験生の視線は理系学部に向かっている。その志望状況について検証した。

 受験生の学部志望状況は、世相を反映する。そんな受験生に人気が高いのが理系学部だ。東進ハイスクール広報部長の市村秀二氏が、理系学部の志望者増の要因について説明する。

「情報化社会の進展により理数系の知識や技術が不可欠になる中、社会が理系人材を求めていることがベースにあります。受験生としては、不況下で厳しい社会状況を踏まえ、確実に資格や技術などを身に付けて社会に出たいという意識が、理系学部人気の背景にあるのだと思います」

 現代社会の大きな変化は高度にIT化が進んでいること。情報技術に関わる学びは、コンピューターやソフトウエアの開発、システム構築、データサイエンスなどさまざま。中でも、データサイエンス系や情報系の人気が高く、「系統別志望状況」でこの系統を含む総合科学を見ると、前年を100とした時の志望者指数は、国公立大が104で私立大が100。私立大の指数は上がっていないが、模試全体の指数が国公立大98、私立大96なので、事実上は前年を上回っている。河合塾教育情報部長の亀井俊輔氏は言う。

「データサイエンス系は2022年度入試(22年4月入学)でも人気が高い系統でしたが、新設学部が増えていることもあり、23年度はさらに志望者を増やしています。ただ、一口にデータサイエンスといっても、社会科学系や理工系の他に医療やスポーツ系など学べる分野は大学によりさまざまなので、教育内容をしっかり調べる必要があります」

 23年度に新設される学部には、ビッグデータの解析により、医療分野の研究を行う北里大・未来工やスポーツ分野などの研究を行う順天堂大の健康データサイエンスがある。他にも、国公立大では一橋大のソーシャル・データサイエンスや名古屋市立大・データサイエンス。私立大では、東京都市大のデザイン・データ科や明星大・データサイエンス、京都女子大・データサイエンスなどがある。これらの新設学部の中で、駿台予備学校進学情報事業部長の石原賢一氏は一橋大に注目して、こう話す。

「難関大の後期が縮小していることから、一橋大のソーシャル・データサイエンスの後期は多くの志願者が集まると思います。文系の受験生だけではなく、東京工業大の情報系など、難関大の理系学部志望者が出願することで、倍率と難易度ともに厳しい入試になることは間違いなさそうです」

 既存の学部も、募集形式を今回から変更する電気通信大はI類(情報系)が圧倒的な人気だ。横浜市立大・データサイエンスは、23年度入試から2次試験で新たに英語が課されるにもかかわらず志望者は大幅増。私立大では、仙台市の中心部にキャンパス移転する東北学院大・情報や近畿大・情報などの難化が見込まれている。

 情報化と並び食料問題や環境問題も現代社会の大きな課題。そうした中で注目されているのが農・水産学系だ。ベネッセコーポレーション学校カンパニー教育情報センター長の谷本祐一郎氏は言う。

「農・水産学系は、国公立大と私立大ともに志望者が大幅に増えています。SDGs(持続可能な開発目標)という言葉を耳にしない日はなく、食料問題や環境問題を意識する受験生が増えています。高校の教育現場で探究活動が活発に行われるようになり、その中で、食や農に興味を持つ生徒も増えているのでしょう」

 かつて農・水産学系は不人気系統だったが、この系統の学びが不可欠な社会状況となり、22年度ごろから人気が高まっている。「現在の日本や世界情勢を考えると農・水産学系は将来性があり、進学して間違いない学部系統だと思います」(駿台の石原氏)

 数Ⅲまで必要な理工系に対し、農・水産学系の多くは数Ⅱで受験できるため、数学が苦手な女子の人気が高いことも志望者増の一因。農・水産学系はあらゆるレベルの国公立大で難化傾向で志望者指数は108。私立大も106と人気が高く、東京農業大、明治大・農などの志望者が増えている。

 理工系は国公立大と難関私立大が人気に

 理工系も人気が高い。中でも理学の人気が高く国公立大が101で私立大が98。工学は国公立大と私立大ともに97で前年並み。理工系全体として国公立大は難関大の人気が高い。一般的な大学は、西日本の後期を中心に難化含み。岡山大の後期廃止や京都工芸繊維大の後期縮小により鳥取大、香川大、山口大、兵庫県立大などの理系学部の難化が見込まれている。

 私立大も難関大の人気が高く、早慶上智、MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)、関関同立(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)の理工系は大半が志望者増。そうしたなか東京理科大は、理工から名称変更する創域理工の認知不足もあり、大学全体として志望者が減少。現時点では狙い目となっている。産近甲龍(京都産業大、近畿大、甲南大、龍谷大)も全体的に集まっており、龍谷大・先端理工、甲南大・フロンティアサイエンスなどの志望者が増えている。

 23年度入試は、国公立大と私立大ともに全体の志願者は伸びないが、理系は難関大を中心に志願者増が見込まれる。その理系の難易度については、「国公立・私立283大学 4大模試最新難易度」で確認していただきたい。

 11月1日発売の「サンデー毎日11月13日号」には、「国公立・私立283大学 4大模試最新難易度・理系編」を掲載しています。

 ほかにも「このままでは日本経済は12月に大炎上する! 金子勝慶應大名誉教授が緊急警告 狂乱の円安時代をどう生きるか」「髙橋大輔 試練からの好発進 フィギュアGPシリーズ詳報 田中亜紀子」などの記事も掲載しています。

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