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2023年大学入試:河合塾、駿台、東進、ベネッセ 国公立・私立232大学4大模試最新難易度・医療系編 医と薬は引き続き人気堅調

「サンデー毎日11月20・27日合併号」表紙
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歯と保健衛生は志願者減か

 コロナ禍や経済の先行きが見えない中、医療系学部は人気だ。しかし、医学部と薬学部の志望者が増える一方、歯学部や保健衛生系は人気がない。なぜこのような状況が生まれたのか。医療系学部の志望状況について検証した。

 不況になると人気が上がる医療系学部だが、個別の系統の志望状況は二極化している。「系統別志望状況」を見ると、志望者が増えている医学部(医学科)及び薬学部に対し、歯学部と保健衛生系は減少。前年を100とした医学部の国公立大の志望者指数は今回100。だが、模試全体の指数が98なので、実際は2ポイント増だ。

 医療系の中で医学部と薬学部の志望者が増えている理由について、東進ハイスクール広報部長の市村秀二氏が解説する。

「二つの学部が伸びている背景にあるのはコロナ禍。医師の活躍やワクチン、治療薬の開発など、医療現場がさまざまな角度から注目される中、医療に対する関心が高まっていることが、志望者増の大きな要因。不況下にあって、医療系資格を取得することで手に職をつけたいと考える受験生も増えているのだと思います」

 2022年度入試(22年4月入学)ごろから志願者が戻ってきた医学部。直近で医学部人気が高かったのは12年ごろ。08年のリーマン・ショックを機に起きた不況と11年の東日本大震災により、医学部への注目度が増した時期であり、国公立大を中心に医学部の志願者が増えた。そして現在、不安定な経済状況とコロナ禍という当時と重なる社会情勢を背景として、医学部人気が再び高まっている。

 当時の医学部人気には、医師不足や診療科による医師の偏在から、それまで抑制されていた医学部の定員増が始まり、間口が広がったこともあった。河合塾教育情報部長の亀井俊輔氏は言う。

「医学部の定員が大きく変わることはなく、08年度から始まった医学部の臨時定員増は20年度以降延長され、23年度入試でもおおむね継続されます。07年に比べて1500人近く増えている医学部定員が保たれる見込みであり、こうした環境も国公立大と私立大ともに医学部人気が高まっている要因になっていると思います」

 個別の大学の志望状況を見ると、広島大・医は第1段階選抜の倍率を定員の7倍から5倍へと厳しくするにもかかわらず、志望者は増加。23年度入試における医学部人気を象徴する現象と言える。

 第1段階選抜の要件を緩和するのは名古屋大・医。22年度入試では、2次試験に進むための大学入学共通テストの得点が、900点満点中700点必要だった。だが、平均点が大幅に下がったため、前期の志願者は21年度の345人から150人に半減。志願倍率(志願者数÷募集定員)は1・7倍だった。23年度は基準点が600点に下がったことに加え、22年度の志願者減の反動もあり、志望者が大きく増えている。一方で名古屋市立大・医は志望者が減少しているようだ。

 中部圏ではほかにも動きがある。駿台予備学校進学情報事業部長の石原賢一氏は言う。

「後期廃止により前期の定員が増えることから、岐阜大・医の志望者が大きく増えて難化しそうです。一方、同大の後期廃止に伴い、福井大や浜松医科大、三重大など近隣の大学の医学部で後期の倍率が上がる可能性があります」

 私立大医学部の注目大学についても、石原氏に聞いてみた。

「慶應義塾大や日本医科大、順天堂大といった難関私立大は少数激戦になりそう。注目しているのは学費を下げる関西医科大です。23年度から一般選抜で小論文を無くすこともあり、近畿圏を中心に志願者が増えるでしょう。首都圏では数Ⅲを無くす東海大が科目負担軽減により志願者が増えそう」

 医学部とともに志願者増が見込まれる薬学部。個別大学の志望状況を見ると、京大が2割増しで大阪大も大きく増えるなど、医療系資格志向が強い西日本の難関大で志望者増が顕著だ。東日本では、東北大や千葉大などで志願者増が見込まれている。私立大では北里大、東京理科大、立命館大、近畿大などの薬学部が大幅な志望者増となっている。

 コロナで「対面敬遠」 保健衛生系で色濃く

 医師、薬剤師といった難関医療系資格が取得できる学部の人気が高まる一方、歯学部の志望者は国公立大と私立大ともに減少。歯科医師過剰が言われる中、難関資格を取得しても将来が約束されにくいことが背景にあるようだ。

 保健衛生系も志望者が減少している。ベネッセコーポレーション学校カンパニー教育情報センター長の谷本祐一郎氏は言う。

「看護や作業療法、理学療法などを含む、保健衛生系は国公立大と私立大ともに志望者が増えていません。こうした状況下で注目されるのは、22年度に新設された川崎市立看護大です。設立2年目となり、首都圏の受験生の認知が進んだことから、前年比1・6倍以上と国公立大の中で一番の志望者の伸びです」

 保健衛生系の志望者が伸びないのは、コロナ禍にあって、リハビリテーションや介護などの現場で対面の仕事がしにくくなっている影響が少なからずある。それでも、看護は志望状況が比較的堅調で、志願者が大幅に増えそうな大学もあるので、出願に際して志望大学の状況はしっかりと確認しておきたい。

「国公立・私立232大学 医・歯・薬・保健・看護・獣医系学部 4大模試最新難易度」を掲載した。学費が高額になる私立大の医療系学部については初年度納入金も併記している。難易度と併せて志望大学の情報を確認してほしい。

 11月8日発売の「サンデー毎日11月20・27日合併号」には、「国公立・私立232大学 医・歯・薬・保健・看護・獣医系学部 4大模試最新難易度」を掲載しています。

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