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2023年大学入試:東日本・主要167私立大 共通テスト利用入試情報 続く大学入学共通テストの出願者減

「サンデー毎日12月4日号」表紙
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「共通テスト利用方式」志望者も減少へ

 3回目を迎える共通テストの出願が締め切られ、一般選抜に向かってカウントダウンが始まった。2023年度(23年4月入学)の共通テストの出願状況と、東日本の私立大の共通テスト利用方式の傾向について見ていこう。

 大学入学共通テストは、国公立大志望者はもちろん、大半の大学が利用している私立大の志望者にとっても重要な意味を持つ。締め切り日時点(10月6日の17時)の23年度の共通テストの出願総数は47万9348人。昨年同時期を2万2633人(4・5%)下回り、大学入試センター試験当時から、4年連続の減少となった。現浪別では、現役が1万7778人(4・1%)減って41万5713人、浪人が4855人(7・1%)減って6万3635人だった。

 22年度の同時期の現浪別の増減は、現役が1・6%減で浪人は7・6%減なので、23年度の共通テストは、現役生の減少幅が大きいことが特徴と言える。志願者減の要因について、代々木ゼミナール教育総合研究所の主幹研究員、坂口幸世(ゆきとし)氏に聞いてみた。

「共通テストの志願者減は予想できました。18歳人口の減少に加え、チャレンジせずに早く大学を決めたいという方向に受験生心理が向かっているからです。年明けの一般選抜を待たず、年内の総合型選抜や学校推薦型選抜に移行する流れの中で、共通テストが必要ない受験生が増えていることが、志願者減の背景にあります」

 23年度入試では、私立大や共通テストを課さない国公立大の総合型選抜や、学校推薦型選抜の志願者が増加傾向。現役生が年内入試にシフトしていることが、現役生を中心に志願者が大きく減少した要因となったようだ。

 共通テストの志願者減と呼応するように、私立大の共通テスト方式の志望者も減少している。駿台予備学校進学情報事業部長の石原賢一氏は言う。

「一般的な私立大専願者にとって、志望大学の一般選抜の対策と、問題の読解力など思考力が求められる共通テストの対策は両立しにくい。共通テスト対策まで手が回らない私立大専願者が増えていることが、共通テスト方式の志望者が伸びない一因でしょう」

 多くの私立大の共通テスト方式は、共通テスト受験前に受験生が出願する事前出願制をとる。共通テストへの対策が不十分で自信を持ちにくい中、持ち点が分からないままで出願することへの不安感も志望者減の一因になっているようだ。また、受験生全体の年内入試へのシフトなどで、一般選抜の倍率が下がって入りやすくなっていることもある。

 東日本の主要大学の共通テスト方式の志望状況を見ると、共通テストが必須の国公立大志望者の併願が多いこともあり、難関・準難関大の志望者の減少は緩やか。早慶上智では、共通テスト方式を実施している早稲田大と上智大の志願者が増えそうだ。早稲田大は、23年度入試から教育で共通テスト方式を新規実施。上智大は従来の4教科型に加え、私立大専願者が受けやすい3教科型を導入することが志望者増の要因だ。

「上智大は、多教科型による国公立大志望者に加え、3教科型で私立大志望の最優秀層の獲得に乗り出したのでしょう。新方式の導入に伴い、上智大の志願者が増えると思います」(駿台の石原氏)

 MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)では、明治大と法政大の志願者増が見込まれている。多様な学部構成により、多くの受験生の志望対象になることが要因だ。他の3大学の志望者は前年比9割強で、ほぼ前年並みとなっている。

 日東駒専(日本大、東洋大、駒澤大、専修大)は、グループ全体として前年の志望者数を下回っている。大学個別では、駒澤大が前年並みで東洋大は増加。東洋大は、共通テストの英語を外部英語試験で代替できるため、共通テストの英語対策が不要なことが志望者増の要因となっている。一方、専修大と日本大の減少幅が大きく、模試の志望通りなら狙い目になりそうだ。

 「難化」警戒感色濃く、理工系で倍率上昇も

 次の難易度帯グループである大東亜帝国(大東文化大、東海大、亜細亜大、帝京大、国士舘大)では前年比8割台の大学も多く、日東駒専以上に狙い目の大学が出てきそうだ。

 経済状況が不安定になると、人気が上がる理工系大学にあって、現時点で東京理科大の共通テスト方式の志望者が減少している。難関国立大の併願者が多いため、志望者の多くが共通テスト対策をしている同大で減少しているのは、理工から名称変更する創域理工の認知が進んでいないことが要因のようだ。それでも、この志望状況を有利と判断する受験生が多いと、実際は多くの志願者が集まる可能性がある。

 他の工科系大学を見ると、東芝電工(東京都市大、芝浦工業大、東京電機大、工学院大)はグループ全体として志望者増。駿台の石原氏は言う。

「22年度の共通テストでは数学が大幅に難化し、国公立大の理工系志望者が苦労しました。過去の状況を払しょくできず、安全志向からこれらの工科系大学の共通テスト方式を活用しようと考える受験生が多いのでしょう」

 工科系大学に限らず、同様の理由から総合大学の理工系学部の共通テスト方式も志願者が集まると見られている。そのため、理工系志望者は注意が必要だ。そうした中、東芝電工では、東京都市大だけ志望者が減少している。ただ、予備校関係者は言う。

「東京都市大の共通テスト方式で前期5教科基準点型は、一定の点数を取れば合格となる一方、事前出願制です。そのため共通テストが難しいという警戒心から志望者が増えないのでしょう。ただ、出願しなければ始まらない。多くの工科系大学の倍率アップが見込まれる中、挑む価値はあります」

 私立大の共通テスト方式の志望者が減少しているのは、一般的な私立大と共通テストの対策が両立しにくいこともある。それでも駿台の石原氏は「倍率が上がらないのなら積極的に出願を考えてほしい」と話し、こう続ける。

「これから計画的な対策は間に合わないが、直前の共通テスト模試や問題集などに取り組むことをお勧めします。共通テストは難しいと言われますが、内容自体は教科書レベル。問われ方が違うだけなので、出題形式に慣れることで得点力が上がるはずです」

 直前対策次第で合格の可能性が高まるのなら、諦めずに対策をして臨みたい。東日本の大学について、次ページから「東日本主要167私立大 共通テスト利用入試情報」を掲載した。22年度の入試結果も掲載しているので、出願先選びの参考にしていただきたい。

 11月21日発売の「サンデー毎日12月4日号」には、ほかにも「田原総一朗×倉重篤郎 岸田首相は退場寸前! 『次』を狙っている〝意外な男〟 激震政治を解読」「どうすればいい!? 介護施設『快適』から『ブラック』までの見分け術」などの記事も掲載しています。

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