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2023年大学入試:河合塾・駿台・東進・ベネッセ 国公立・私立44難関大 学科別最終難易度 変化見せる女子の志望動向

「サンデー毎日1月15・22日合併号」表紙
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落ち着いてきた難関大人気

 私立大の出願が始まり、共通テスト本番が目前に迫ったこの時期、出願大学の絞り込みは最終段階だろう。出願予定の大学や学部・学科の最終的な志望状況はどのようになっているのか。最新の模試から難関大の動向を探った。

 2023年度入試(23年4月入学)も、22年度入試の流れを引き継いで難関大人気が高い。ただ、「入試シーズンが深まるにつれ、受験生心理に微妙な変化が見られる」と話すのは、河合塾教育情報部長の亀井俊輔氏だ。

「夏ごろまでの模試では目標大学を志望校として書くため、難関大人気が過熱していましたが、入試が近づくにつれ、現実路線になってきました。国公立大と私立大ともに難関大人気が続いていますが、志望状況は若干落ち着きを見せています」

 国立大の最新の志望状況を「難関国立大の志望動向」で確認していこう。前年を100とした時の国公立大全体の志望者指数は97。この97を上回っていれば、志望者が増えていることになる。この基準で見ると、23年の入試シーズン序盤戦で人気が高かった東大が93になるなど、確かに現実路線となっている。それでも京大は107と高く、大阪大と神戸大が増え一橋大は横ばい。掲載した難関国立10大学は全体で97と前年並みだ。駿台予備学校進学情報事業部長の石原賢一氏は言う。

「難関大の志望状況は落ち着いてきましたが、成績上位層が難関大にチャレンジする気持ちは衰えていないと思います。特に、国立大志望者については、22年度の大幅ダウンを受けて大学入学共通テストの平均点が上がりそうなので、出願まで続くと見ています」

 難関大人気が落ち着く一方、筑波大や千葉大、金沢大、広島大、熊本大、東京都立大などの準難関大グループは、年間を通して高い人気を保ってきた。中でも横浜国立大の志望者が増えており、その人気の確かさは、23年度の教育系の志望状況が物語っている。ベネッセコーポレーション学校カンパニー教育情報センター長の谷本祐一郎氏は言う。

「国公立大の教育系の志望者指数が93と下がる中、横浜国立大・教育の前期は110と多くの志望者が集まっており、首都圏以外の志望者が多いことが特徴です。教員免許は地元の国公立大でも取れますが、より高みを目指したいと考え、コロナ禍でも敬遠することなく目指しているのでしょう」

 大阪市立大と大阪府立大が統合して誕生した大阪公立大も人気が高い。22年度の志願者は、前身の2大学合計を下回ったが、新大学に対する受験生の警戒感が薄れたこともあり、2年目を迎え多くの志願者が集まると見られている。

 準難関大で注目されるのは、23年度から一般選抜の後期を廃止する岡山大。前期の定員が増えることもあり、前年を上回る志望者が集まっている。東進ハイスクール広報部長の市村秀二氏が、後期取りやめの影響について解説する。

「岡山大の後期廃止により、175人分の後期の定員が無くなります。数少ない後期の出願先の減少は、西日本の広範な大学に大きな影響を与えると思います。倍率が上がる大学が出てくることが予想されますので、出願状況に注意が必要です」

 国公立大同様に私立大も難関大人気が落ち着いてきている。「難関私立大の志望動向」を見ると、慶應義塾大と早稲田大はともに94。模試全体の私立大の志望者指数が93なのでほぼ前年並みだ。早稲田大は教育で共通テスト利用方式を導入することから志望者増が見込まれていたが、教育の志望者が前年を下回っていることもあり、全体の志望者は横ばい。

 上智大は共通テスト利用方式でこれまでの4教科型に私立大志望者が受けやすい3教科型を加えることから志望者が増加。東京理科大は理工を創域理工に名称変更するが、その認知が遅れていることから前年を下回っている。ただ、これから受験生の認知が進めば、志願者が増える可能性がある。

 法・政治系や農学系でも女子の志望が増

 MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)では、明治大、中央大、法政大の志望者が増える一方、青山学院大と立教大は減少傾向だ。駿台の石原氏は言う。

「女子の大学選びに変化が見られます。昔は男子が中心の総合大学では女子の活躍は難しいと言われていましたが、今の大学はそんなことはない。かつてのバンカラなイメージがあった明治大や法政大、中央大に女子の視線が向かう分、女子受験生が多い立教大や青山学院大の志望状況に影響しているのでしょう」

 こうした女子の動きは、MARCHに限らず大学全体の傾向だ。そのため、女子大は全般的に志望者が減少し、狙い目の大学が多くなりそうだ。

 近畿では関関同立(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)は全て志望者が増加している。

「国公立大志向の強い土地柄なので、関関同立の共通テスト利用方式を活用して時間と受験費用を節約しながら、国公立大を目指そうと考える受験生が多いのでしょう」(駿台の石原氏)

 女子受験生の動きは、学部志望動向にも影響を与えている。河合塾の亀井氏は、23年度の学部志望の特徴について、こう話す。

「文系は法・政治系、理系は農学系の人気が高くなっています。国公立大の医歯薬系も高く、これらの学部に共通するのは、女子が増えているということです。反対にかつて女子の志望者が多かった生活科学系などは減少しています。卒業後の進路を見据えた女子のキャリア志向の強まりが、学部志望動向に表れています」

 ちなみに理工系でも、国公立前期は前年並みの志望状況だが、女子のみを比較すると前年を上回る現象が見られるという。

 人気が高い法・政治系の志望者が増えている難関大には、国立大では東大(文Ⅰ)や京大、大阪大などがある。私立大では23年春に東京郊外の多摩キャンパス(東京都八王子市)から都心の茗荷谷キャンパス(同文京区)に移転する中央大の伸びが大きく、学習院大と上智大も増加している。近畿では同志社大、立命館大、関西大の志望者が増えている。

 農学系の志望者は、難関国立大では京大の伸びが大きい。東北大や名古屋大、九州大は大学全体の志望者は減っているが農は増加。難関私立大では、明治大・農の志望者が大幅増となっている。22年度に志願者が増加に転じた農学系は、国公立大と私立大ともに志願者増が見込まれ難化しそうだ。

 AIによるビッグデータ解析など、日本が遅れているデータサイエンス分野に関する学部の人気は相変わらず高い。中でも注目されるのは、ソーシャル・データサイエンスを新設し、難関国立大で唯一、データサイエンス学部を持つ大学となる一橋大だ。東進の市村氏は言う。

「一橋大が新設する文理融合のソーシャル・データサイエンス学部は、理系の志望者も多く高い人気です。一橋大でもう一つ注目なのは、学部新設にともなって、商、経済、法、社会の既存学部の定員が減ることです。これによって、各学部のボーダーラインが上がる可能性があります」

 一橋大の既存の学部は、経済を除き志望者が減少傾向だ。しかし、学部新設の影響で難化が見込まれるので注意が必要だ。

 志望者が減少している学部系統に注目すると、女子受験生が多い外国語系の減少が続いている。コロナ禍に加え、女子受験生の志向の変化が影響しているようだ。そうした状況を背景として、狙い目になりそうなのが東京外国語大。ベネッセの谷本氏は言う。

「外国語系の志望者指数は、国公立大が87で私立大が90と減っています。個別大学で注目したいのは、共通テストの数学を1科目から2科目に増やす東京外国語大・言語文化で、前期の指数が68と志望者が大幅に減っています。一方、数学が1科目のままの神戸市外国語大は96で、対照的な状況になっています」

 23年度入試は大きな動きは見られないが、女子受験生の意識の変化により志望動向に微妙な変化があるようだ。「国公立・私立 難関大 学科別最終難易度」には、難関大と準難関大の学科別の難易度を掲載した。出願予定の大学の最終状況を確認してほしい。

 1月4日発売の「サンデー毎日1月15・22日合併号」には、「国公立・私立 難関大 学科別最終難易度」を掲載しています。

 ほかにも「世界は混沌化 寺島実郎の渾身予測 今、私たちはどこにいるのか!」「NHK大河『どうする家康』が10倍面白くなる! 定説にない家康 ぶっちゃけ歴史対談 本郷和人×ペリー荻野」などの記事を掲載しています。

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