経済・企業2023年の経営者

「隣接地銀」の合併はコスト削減効果大―― 片岡達也・コンコルディア・フィナンシャルグループ社長

かたおか・たつや 1967年神奈川県出身。私立浅野高校卒業、東京理科大学理学部卒業。90年横浜銀行入行。2018年コンコルディア・フィナンシャルグループ執行役員経営企画部長、19〜22年東日本銀行取締役を経て、22年4月から横浜銀行頭取、同年6月から現職。56歳。(Photo 武市公孝:東京都中央区の本社で)
かたおか・たつや 1967年神奈川県出身。私立浅野高校卒業、東京理科大学理学部卒業。90年横浜銀行入行。2018年コンコルディア・フィナンシャルグループ執行役員経営企画部長、19〜22年東日本銀行取締役を経て、22年4月から横浜銀行頭取、同年6月から現職。56歳。(Photo 武市公孝:東京都中央区の本社で)

コンコルディア・フィナンシャルグループ社長 片岡達也

 Interviewer 秋本裕子(本誌編集長)

>>連載「2023年の経営者」はこちら

── 大手地銀グループとしての特徴を教えてください。

片岡 国内地銀トップの横浜銀行、東京を事業基盤とする東日本銀行の2行を擁する金融持ち株会社として2016年に誕生しました。国内人口の約2割、上場企業の約6割が集積する神奈川・東京で、法人と個人の顧客基盤を持つことが強みです。神奈川県内企業のメインバンク・シェアでは、メガバンクを抜いてずっと1位をキープしています。

── メガバンクとどう差別化していますか。

片岡 日本では中堅や中小の企業が大多数です。メガバンクや大手証券会社がカバーできていない部分が山ほどあります。当社はそうした企業向けの融資のほか、事業承継や資本政策などの経営課題の解決を「ソリューション・ビジネス」と位置付け、強化しています。

 ソリューション・ビジネスは大きく伸びています。企業買収の際に買収資金を借り入れる「LBOローン」などストラクチャード・ファイナンス案件の残高は18年度の724億円から、22年度上期は4255億円に増えました。24年度は5900億円に伸ばす計画です。

 また、人材をキャリア採用したり、提携する税理士事務所などから出向してもらったりして、行内の人材育成を図っています。

── 地銀の再編が必要という指摘もあります。どう考えますか。

片岡 競争力を上げるための経営統合や業務提携については、今後もあるべきと思います。経営統合で経費を削減し、浮いた部分を投資に振り向けることができます。ただ、経費削減は場所が隣接していない飛び地の地銀同士では困難であることが分かり、今後はあまり出てこないと思います。

 経営統合は成果が出るまでに時間がかかるという課題もあります。私は22年3月まで東日本銀の取締役を3年間務めました。就任当初に赤字だった東日本銀は21年度に黒字化しましたが、時間がかかりすぎたと思います。

── 千葉銀行と業務提携していますね。その効果はどうですか。

片岡 業務提携でトップライン(営業収益)を伸ばすことができます。横浜銀と千葉銀との提携は3年になり、成果も出ています。1行だけでやるにはリスクが大きすぎる案件に一緒に取り組んだりもしています。

 当初5年間で200億円とした提携効果目標も、22年度上期で218億円と計画以上を達成しました。また、経営統合は別として、地銀同士でシステムの共同化は広げる価値があるでしょう。

── コロナ禍で資金繰りが苦しい中小企業支援のために国が打ち出した実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済が始まりました。取引先の状況は。

片岡 コロナ禍により、一部の飲食業や宿泊業などは依然、厳しいところもありますが、取引先全体ではそれほど悪くありません。ゼロゼロ融資のうち、半分は22年中に返済が始まっていますが、返済条件の変更が増えている状況にはなく、融資全体に占める返済条件変更の比率は、22年度上期で横浜銀が4.2%、東日本銀が2.8%に過ぎません。

 むしろ、資源や資材などの価格高騰の影響の方を危惧しています。

── 円安の影響はどうでしょう。

片岡 円安がデメリットとは捉えていません。神奈川と東京には顧客の製造業が多く、円安は利益の押し上げ効果になり、業績を上方修正する動きもみられます。一方で、生産拠点を海外に移した製造業は事情が異なります。ただ、このまま円安と業績好調が継続的に続くということではないだろうと見ています。

アプリで顧客データ分析

── 今後、デジタル戦略が不可欠です。取り組み状況を教えてください。

片岡 顧客向けのサービスと、銀行内の構造改革や効率化という二つの側面で進めています。銀行内の効率化でいえば、店頭にタブレット端末を置くなどして、これまでに800人分の業務量削減を進めました。顧客向けでいえば、非対面取引の充実に向けて、23年3月に横浜銀のスマホアプリ「はまぎんアプリ」をリニューアルする予定です。

 現在の「はまぎんアプリ」はバンキング機能が中心ですが、銀行のアプリを毎日開く人はいませんよね。目指すのは毎日必ず開いてもらう日常生活で使い勝手が良いアプリです。

── どのような狙いですか。

片岡 顧客の行動や関心などのデータをアプリから集めて蓄積します。マイカーローンや教育ローンといった、目的別ローンは非常に残高が上がっています。そうしたデータを分析して新しいサービスを発信できたらと思います。非金融系サービスを提供するツールの一つにしたいと考えています。

(構成=桑子かつ代・編集部)

横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスパーソンでしたか

A 1990年の横浜銀入行後にバブル崩壊、金融危機、大リストラを経験しました。自分の銀行が潰れるのではないかという危機感を持ちながら、24時間働いていました。

Q 「好きな本」は

A 元ラガーマンで元三井住友銀行専務の宿澤広朗さんの『運を支配した男』が好きです。白洲次郎さんについての本もよく読みます。

Q 休日の過ごし方

A 登山が趣味で、基本的に1人で行きます。息抜きと気晴らしになりますね。


事業内容:銀行および銀行子会社の経営管理

本社所在地:東京都中央区

設立:2016年4月

資本金:1500億7800万円

従業員数:5825人(22年3月現在)

業績(22年3月期、連結)

 経常収益:2869億円

 当期純利益:538億円


週刊エコノミスト2023年2月7日号掲載

編集長インタビュー 片岡達也 コンコルディア・フィナンシャルグループ社長

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