経済・企業2023年の経営者

街づくりで定住人口を増やす――古宮洋二・JR九州社長

ふるみや・ようじ 1962年福岡県出身。県立豊津高校(現育徳館高校)卒業、九州大学工学部卒業。1985年日本国有鉄道入社、87年九州旅客鉄道(JR九州)入社。2012年取締役、鉄道事業本部長、常務執行役員、専務執行役員などを経て、22年4月から現職。60歳。(Photo 武市公孝:東京都港区のザ・ブラッサム日比谷で)
ふるみや・ようじ 1962年福岡県出身。県立豊津高校(現育徳館高校)卒業、九州大学工学部卒業。1985年日本国有鉄道入社、87年九州旅客鉄道(JR九州)入社。2012年取締役、鉄道事業本部長、常務執行役員、専務執行役員などを経て、22年4月から現職。60歳。(Photo 武市公孝:東京都港区のザ・ブラッサム日比谷で)

JR九州社長 古宮洋二

 Interviewer 秋本裕子(本誌編集長)

>>連載「2023年の経営者」はこちら

── 新型コロナウイルス禍からの回復状況はどうですか。

古宮 定期収入はコロナ前(2018年度)の9割ぐらいまで戻っています。定期外収入は、50キロメートル以内の近距離は9割ですが、大都市では人の動きが活発になり、博多駅は完全に戻りました。中長距離はまだ8割弱という状況です。

── 9月23日に西九州新幹線が開業しました。その貢献はどうでしょう。

古宮 武雄温泉(佐賀県)─長崎間で開業しました。博多から長崎までは、武雄温泉まで在来線特急で行き、武雄温泉で新幹線に乗り換えます。博多から長崎までの乗車人数を比較すると、開業後はコロナ禍前を超えています。

── 当初は博多から長崎まで新幹線を結ぶ計画でしたが、負担金などの問題で佐賀県が反対し一部区間にとどまりました。計画実現には佐賀県への恩恵が必要では。

古宮 鹿児島までの九州新幹線が開業した時、熊本県は福岡に人が流れることを懸念していました。しかし、実際には熊本県の天草や阿蘇などに新幹線を利用した観光客が多く訪れています。また、熊本─博多間の新幹線定期も約900枚売れており、通勤・通学需要も生まれています。通勤・通学が可能になると、そこに住み続ける人も増えるので人口減少の歯止めになり、九州新幹線は熊本にもプラスになっています。同様に、西九州新幹線の恩恵は佐賀県にもあると思っています。

── 開業区間が新幹線としては最も短く、効果は限定的では。

古宮 博多─長崎間は従来は在来線特急で1時間50分でしたが、今回の西九州新幹線開通で1時間20分になりました。全線開業した場合には、さらに30分短縮されて51分と通勤区間になるので、効果は十分に見込めます。

── 九州は自然災害が多いですが、被災した路線の復旧は。

古宮 17年の九州北部豪雨で被災した日田彦山線の添田(福岡県)─日田(大分県)間は、23年夏にBRT(バス高速輸送システム)で復旧する予定です。

── その他の路線は。

古宮 20年7月の九州豪雨で被災した肥薩線については、まだ議論の途中です。全区間の約半分の線路が流されたので、復旧費用が235億円と非常に高額です。一方で、もともと毎年9億円の赤字が出ていた路線ですので、仮に復旧しても持続可能なのかを懸念しています。こうした問題を踏まえ、どう復旧するかを自治体や熊本県と議論していきます。

── そうした赤字路線への対応をどう考えていますか。

古宮 沿線住民には、日常的に鉄道を利用するようお願いしています。しかし、そうした地域では1人1台ずつ自動車を所有しており、自動車での移動が主流です。

── とはいえ、高齢になり自動車を運転できなくなると、鉄道がないと移動手段がなくなります。

古宮 例えば日田彦山線のBRTでは、住民の要望を聞いて、ショッピングセンターの前、公民館の前などにバス停を多く設けており、利便性は確保しています。

── こうしたBRTは今後の解の一つなのでしょうか。

古宮 日田彦山線では、最適な解だと思いますが、地域によって事情が異なります。例えば住宅のない山間部では、早く移動したいのでバスより鉄道の方がよい場合もあります。地域住民が交通手段をどう考えるかだと思います。

不動産が大きな柱に

── コロナ後を見据え、今後、会社の収益をどのように増やしますか。

古宮 コロナ禍では人流を抑制されて苦しんだので、人流に依存しない事業を広げます。その一つとして物流事業を手掛け、物流倉庫をつくっています。一方で、本業は人を動かすことにあります。そして人が住むところ、働くところ、訪れるところ、という視点を重視して、街づくりを進める方針です。

── 街づくりでは何をしていきますか。

古宮 駅ビルやオフィスビル、商業施設、ホテルなどいろいろな施設を一体的に建設し、そのエリアを一つの街にしていきます。例えば、新幹線開業に合わせ、長崎駅周辺では再開発を進めています。23年秋に駅ビルが、その1年後にはジャパネットホールディングスの複合施設が完成し、駅周辺にいろいろな機能が集積します。

 また、戸建てやマンションなどの住宅も手掛け、特に県庁所在地のマンションは好調です。ホテルも東京や京都など、九州以外でも増やしています。

── 今後、全体の事業の割合は変化しますか。

古宮 鉄道事業には当然力を入れますが、大きくは増えないと思います。一方、不動産は今後の柱になると思います。駅周辺や沿線にさまざまな施設ができて、そこで雇用が生まれ、住む人が増えることが重要です。まず定住人口が増えないと鉄道も伸びていきません。

(構成=村田晋一郎・編集部)

横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスパーソンでしたか

A 小倉で220人の運転士を束ねる運転区長を務め、現場の親分のような感じでした。鉄道は連係プレーが重要なので、若い社員と一緒に酒を飲んだり、スポーツをしたりと、しっかりコミュニケーションをとるようにしていました。今でも当時の部下とは仲が良く、飲むこともあります。

Q 「好きな本」は

A 最近は経営に関する本を読むことが多いです。特に上杉鷹山に関する本が好きで、よく読んでいます。

Q 休日の過ごし方

A ゴルフをしたり、スポーツジムに行ったりして汗を流しています。


事業内容:旅客鉄道、海上運送、旅館業および飲食業、不動産業、小売業など

本社所在地:福岡市

設立:1987年4月

資本金:160億円

従業員数:7647人(2022年4月現在)

業績(22年3月期、連結)

 売上高:3295億円

 営業利益:39億円


週刊エコノミスト2023年1月10日号掲載

編集長インタビュー 古宮洋二 JR九州社長 街づくりで定住人口を増やす

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