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2023年大学入試・速報第5弾 東大・京大「前期詳報」大学合格者高校別ランキング 「社会科学」系で女子が躍進 首都圏外「健闘」が光る東大
新型コロナウイルス感染症が「5類」となる前から、今春の大学入試では「アフターコロナ」に向けて動き出している。滞っていた地域間の移動が活発になり、再び全国から東大と京大に優秀な学生が集まり始めたようなのだ。
本誌3月26日号で既報の通り、2023年度の東大入試(23年4月入学)は、首都圏の学校の合格者が減少。ランキング上位の首都圏の学校の多くが合格者を減らしている。駿台予備学校進学情報事業部長の石原賢一氏は言う。
「首都圏の学校で合格者の減少が目立ちますが、地方校の健闘が目立った21年度に戻っただけ。今回はコロナ禍も出口が見え、首都圏外の受験生も挑むようになり、地方の合格者が増えたのです」
1位の開成は45人と大幅減で148人だが、21年度と比較するとほぼ同数。3位聖光学院や7位桜蔭、10位栄光学園、12位海城なども同様の傾向が見られる。そうした中、7位駒場東邦や14位渋谷教育学園渋谷など、2年連続で合格者が増えている学校もある。
「東大合格者が増えた学校」に注目すると、もっとも増えたのは甲陽学院で20人増。進学資料室長の橋本貴博教諭が、その背景について語る。「志望校を生徒の自主性に任せている本校では、東大と京大のうち志願者が多い方の合格者が多くなります。23年度は当初から東大志望者が多く、最後まで志望を貫いた結果、東大志望者が少なかった前年を大きく上回ったのです」
同校は、国公立大医学部の合格実績が高い学校としても知られ、東大と京大、国公立大医学部の志望者のバランスが、難関大の合格実績を左右するという。
次に合格者が増えているのは豊島岡女子学園で16人増。23年度は、東大で女子の合格割合が20%を超えたことが大きな話題だ。
「思考力が問われる大学入学共通テストで女子は高得点を取ることが多い。さらに、今回の一般選抜の2次試験は物理が難しすぎて、得意とする男子も苦戦。得点差がつきにくかったこともプラスに働きました」(駿台の石原氏)
学部志望動向の変化も女子が増加する要因。東大の科類別の女子合格者は、主に法学部に進学する文Ⅰが19人増、主に経済学部に進学する文Ⅱが17人増。一方、主に教養学部に進学する文Ⅲは4人増にとどまった。最難関大で社会科学を学びたい女子が増えたことが20%超えの背景にある。
首都圏一貫校の合格者減の要因となった地方の学校で、合格者が大きく増えたのは富山中部だ。同校の教諭は言う。
「スーパーサイエンスハイスクールの指定により探究活動が活発に行われ、意識の高い生徒が多いことが一因。昨年までコロナ禍で抑え気味だった首都圏への進学意識が今回は高まったことも、東大合格者が増えた背景にあります」
北陸のトップ校である富山中部の東大合格者数は、1990年以降で、15年度の27人に次いで2番目の合格者数となった。新潟や岡山白陵も合格者が10人増だ。
東大と同様に京大も、1位北野、2位洛南、3位東大寺学園、6位甲陽学院、9位灘など、ランキング上位で合格者が減る学校が多かった。駿台の石原氏は言う。
「東大寺学園や灘など、私立一貫校に減少している学校が多いのは、医学部を目指す生徒が増えた影響が大きいのでしょう。北野や天王寺といった府立校は、首都圏と同様にコロナ禍の影響が薄まったことにより、他地域の学校の影響を受けたのかもしれません」
「京大合格者が増えた学校」では、愛知の明和が京都の洛北と並び、2番目に増え幅が大きな学校になった。他に近畿圏以外の学校では、豊島岡女子学園や新潟、金沢泉丘なども増えている。
ちなみに、京大の合格者が最も増えたのは大阪星光学院。23年度の卒業生198人中、京大が45人で東大が9人、合計54人の現役合格者が占める割合は27.3%で、4人に1人が合格している。
コロナ禍の影響が薄まり、受験地図に変化が見られた東大と京大入試。今後も地方の学校の合格者が増えるのか、または首都圏や近畿圏の上位校が盛り返すのか注目したい。