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2023年大学入試:速報第6弾 東大「文Ⅰ」女子占有率が初の3割超え 「法学志向」日本を変えるか 大学合格者高校別ランキング・国公立大総集編

「サンデー毎日4月9日増大号」表紙
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 2023年度(23年4月入学)の国公立大入試は全日程を終え、入学式を待つばかりの受験生が多いだろう。今回は、23年度の国公立大入試全体の振り返りと、難関大の合格状況から見えてきた女子の動向について検証した。

 23年度の国公立大一般選抜の志願者は、大学入学共通テストの平均点アップを受けて増加が見込まれていた。しかし、いざ蓋(ふた)を開けてみると、前年を1%下回る42万3180人だった。代々木ゼミナール教育総合研究所主幹研究員の坂口幸世氏は言う。

「国公立大の減少率は、共通テストほど大きくなく、18歳人口の減少に呼応した自然減。近年、国公立大の志願者は僅かずつ減少が続いており、23年度も前後期ともに倍率ダウン。〝広き門〟となっていることは間違いなく、23年度も前後期で入学者を確保できず、2次募集を行う大学がありました」

 前期の地域別志願者は前年度比で、四国78%、北陸94%、東北95%、九州96%、北海道97%と地方での減少が目立つ。一方、関東は103%、東海は102%、近畿は100%と増加か前年並み。18歳人口の減少やコロナ禍の影響が薄まり、大都市部に出る受験生が増えたことで、地方の大学で倍率が下がる傾向が見られた。

 こうした状況の中、旧七帝大に東京工業大、一橋大、神戸大を加えた難関国立10大学の志願者は、ほぼ前年並みの6万9656人。難関大人気を物語るが、東大や名古屋大、九州大などで志願者が減少。増加幅が大きかったのは、女子の推薦枠を発表して注目された東京工業大(110%)と、ソーシャル・データサイエンスを新設した一橋大(114%)だった。

 早慶や中央、明治、立教も「法」は女子校首位

 女子の難関大志向の高まりが見られたことも、23年度入試の大きな特徴。東大合格者に対する女子占有率を見ると、23年度の女子占有率は22・3%で前年を2ポイント近く上回って過去最高に。科類別の女子占有率も理Ⅰを除いて上がった。代ゼミの坂口氏は、近年右肩上がりで、今回は30・5%にまで達した文Ⅰに注目する。

「文系最難関の(主に法学部に進学する)文Ⅰの女子占有率が3割を超えたインパクトは大きい。身近に文Ⅰの合格者が増えることは、女子を東大に呼び込むきっかけになる可能性があり、今後、東大の女子占有率が普通の大学並みになるかもしれません」

 私立大の法学部の状況を見ても、女子の法学部志向の強まりが感じられる。一般選抜における法学部の高校別合格者数ランキングを見ると、早慶や中央大、明治大、立教大などの難関大で、1位の学校が女子校になっているのだ。法学部志望の女子の増加は、女子の社会進出意識の高まりを意味する。駿台予備学校進学情報事業部長の石原賢一氏は言う。「法学部人気は女子の公務員志向の強さが大きく、背景には将来を真剣に考える女子の姿が見えます。東京23区や政令市なら、安定した収入が得られ、転勤もほぼない。いろいろな働き方ができることも魅力なのでしょう」

 理科類では、理Ⅱと理Ⅲの女子占有率が増加傾向。神奈川の聖園女学院から理Ⅱに合格した生徒は、物理・化学への興味・関心が高じて東大を受験した。同校進路指導部長の教諭は言う。「中学入学時から得意な英語を徹底的に伸ばしたことがベースにあります。高校になって物理や化学に興味を持ち成績が上がり、理系学部への進学を決めたようです。国語など他の教科の指導にも力を入れ、生徒の興味・関心を大事にしながら、学力全体を伸ばしたことが、東大合格に結びついたのだと思います」

 一般的に物理や化学を苦手とする女子生徒は多いが、東大の合格者の増加を見ると、トップ層では苦手意識を持つ女子生徒が減っているのかもしれない。ちなみに、前出の生徒は、高3の夏ごろまで東京工業大など他大学も視野に入れていたという。そうした中で東大に進路を絞った決め手は、東大を訪れた時に感じた、施設・設備の充実度だったようだ。

 東大の女子の合格者の動向からは、社会が変化する予兆を感じると、坂口氏は言う。「東大を筆頭とした、これまで男子が中心だった大学や学部に女子が進出し社会で活躍することで、後を追う女子受験生が増える。こうした好循環が生まれるターニングポイントを迎えているのかもしれない。遅々として進まない、日本における女性の社会進出が進むことを期待します」

 女子の志望動向の変化で大学入試が変わろうとする中、1929年創立の恵泉女学園を母体とする恵泉女学園大(東京)の閉学が発表された。同大の開学は88年だが、堅実な女子教育を行ってきた。その閉学は、女子の進路が多様化する象徴的な出来事といえるのではないか。

 3月28日発売の「サンデー毎日4月9日増大号」には、「大学合格者高校別ランキング 国公立大総集編 東大、京大…32大学」が掲載されています。

 ほかにも「WBC 王座奪還の真実 伝説となった侍ジャパンを支えた唯一無二 二宮清純」「田原総一朗が迫る 斎藤幸平がニッポン大転換を説き明かす 脱成長社会へ」などの記事も掲載しています。

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