週刊エコノミスト Online サンデー毎日
2023年大学入試:速報第9弾 医学部合格者高校別ランキング 東海、洛南、久留米大付設、灘、ラ・サール…
2年連続の志願者増の中で合格者を増やした学校は?
コロナ禍で注目を浴びた医療従事者。中でも医師志望の受験生が増えている。背景にあるのは、人の役に立ちたいという思いや、不安定な社会情勢を生き抜くための医師免許の取得など。人気が上がっている医学部に強い学校を紹介しよう。
先行きが見通しにくい社会情勢が続く中、成績トップ層の医学部(医学科)人気が上がっている。国公立大医学部の一般選抜の志願者は、近年、減少が続いていたが、2022年度入試(22年4月入学)で増加に転じ、23年度も約1167人増えて2万3509人になった。駿台予備学校入試情報室部長の石原賢一氏は言う。
「23年度は大学入学共通テストの平均点が上がったので、後期までしっかりと出願した受験生が多かった。北海道や東北など地方の大学の志願者の伸びが大きく、コロナ禍で止まっていた受験生の流動性の高まりを感じます」
国公立大医学部の全体の傾向を踏まえた上で、個別の学校の合格実績を見ていこう。
まず、現役と浪人を合わせた医学部合格者数を「国公立大医学部医学科合格者数ランキング」のランキングの1位は東海で、昨年の合格者を23人下回りながらも、16年連続でトップをキープ。名古屋大の合格者が33人で同大ランキングトップのほか、名古屋市立大(9人)、岐阜大(8人)などが多い。
2位は前年を9人上回り6位から順位を上げた洛南。京都府立医科大の合格者が11人で同大ランキングトップ。京大も15人と多くランキング3位に入っている。3位の久留米大付設も合格者が4人増えて4位から順位を上げた。九州大が29人でトップのほか、熊本大も10人と多くの合格者を輩出した。
このように、私立の中高一貫校が強さを見せる中、公立校の最上位は、合格者が14人増えて昨年の16位から順位を上げた8位の熊本。地元の熊本大の合格者28人は、同大の合格者数ランキング1位だ。10位の仙台第二は東北大(19人)と山形大(14人)、14位の札幌南は北海道大(13人)と札幌医科大(20人)でそれぞれランキングトップ。18位の新潟は新潟大が21人で1位になっている。
このように各地域の公立校が3年間で結果を出せるのには理由がある。地方にあっては、地元に残って社会的尊敬を集められ、高い収入を得られる職業は医師ということで、医学部合格実績が高い地元トップ校に優秀な医学部志望者が集中するからだ。国公立大医学部側としては入試のハードルが低いものの、一定期間の地元勤務を条件とする地域枠を設けており、これも地元受験生を後押しする。
次に、卒業生のどのくらいが現役で合格しているのかを示した「国公立大医学部医学科現役合格者占有率ランキング」を見ると、合格者数ランキング以上に一貫校の強さが際立つ。1位の久留米大付設は、卒業生の5人に1人が国公立大医学部に合格。2位ラ・サール、3位灘、4位東大寺学園、5位北嶺、6位東海まで、同程度の高い現役合格率で、16位の洛南まで中高一貫校が占めている。駿台の石原氏は言う。
「医学部は共通テストと2次試験ともに取りこぼしができない。特に総合大学の医学部は、他の理系学部と同じ問題なので医学部志望者にとっては比較的易しい。そのため、ほんのわずかの差が合否を分けることから、カリキュラムに余裕のある一貫校の練習量の多さが求められるのです」
現役で医学部に合格できる学校は、学校の環境も大切なようだ。医学部コースなどはなく、高1まで全生徒が同じ授業を履修し、高2から進学目標に応じた科目や補習授業を選択するシステムの中で、東大・理Ⅲに現役合格者を出したのは湘南白百合学園。広報部長を務める水尾純子教頭は言う。
「中学入学時から勉強や生活面の面談を重ね、個別最適化した学校生活を送る中で、生徒の希望に沿った進路実現を目指します。医学部もその選択肢の一つ。理Ⅲに合格した生徒については、医学部進学者が多い伝統が大きいですね。理Ⅲを卒業したОGが医療チームで来校してリアルな話をしてくれるなど、理Ⅲが特別な学部でないことが合格の背景にあります」
その理Ⅲは、合格者に対する女子の占有率が上がっており、21年度の15・3%から23年度は24・7%と4分の1が女子になった。23年度の集計が間に合わないため、22年度の一般選抜で大学別の女子合格者が占める割合を見ると、佐賀大が50・0%、宮崎大が47・7%、弘前大が46・9%など占有率が高い大学が数多くあり、女子数を公表している46大学全体では37・2%。12年度は34大学の集計で28・7%だった。集計大学数は異なるものの、女子の医学部志向の高まりは間違いない。東大・理Ⅲの状況を見る限り、この傾向は23年度も継続しそうだ。
「優秀な女子の活躍の場が少ない男社会が続く日本で、女子の医学部志向はさらに高まるのではないでしょうか」(石原氏)
男女参画社会が進まず、さらにこのまま不安定な社会情勢が続くなら、優秀な女子が医師を志す動きは止まらないのではないか。