新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

週刊エコノミスト Online サンデー毎日

2024年大学入試:大学入試はこうなる 相次ぐ理系「女子枠」の創設 情報系も新設ラッシュ継続

「サンデー毎日6月25日号」表紙
「サンデー毎日6月25日号」表紙

 大学の改革状況を見ると、日本社会が抱えている課題が浮き彫りになる。特に取り組みが進む、女子を中心とした理系やデジタルの人材養成からは、閉塞感が漂う日本社会を変革しようという、意思が浮かび上がってくる。

 少子高齢化の急激な進展に伴う生産年齢人口の減少や国際競争力の低下により、日本社会は閉塞(へいそく)感に包まれている。そこから抜け出すための人材養成が急務となっているが、その大きな役割を担う大学の改革状況を見ると、今年は難関大学の動きが急で、対峙(たいじ)する課題の大きさを物語る。

「主な大学の学部学科改組・入試変更点」を見ると、筑波大、千葉大、お茶の水女子大、東京工業大、東京医科歯科大、熊本大、東京理科大などで改革が進む。中でも注目されるのは、東工大と東京医科歯科大の統合によって 24年度中の開設を目指す東京科学大(仮称)だ。駿台予備学校入試情報室部長の石原賢一氏は言う。

「工科系と医科系のトップ大学による世界レベルの医工連携で、新たな分野の革新的な研究が期待できます。医療現場でロボットの技術が求められるなど、工科系と医科系の相性はいい。日本を代表する理系総合大学となる、東京科学大に期待したいですね」

 東工大は、もう一つの大きな改革を進める。総合型選抜と学校推薦型選抜での女子枠の創設だ。日本の将来を担う人材養成に向けて協議する政府の「教育未来創造会議」の第1次提言には、他国に比べて圧倒的に少ない女性の理系人材養成が盛り込まれた。それもあり、多くの大学で理系学部の女子枠の設置が進む。

 東工大は学士課程の女子比率13%から飛躍的に増やすとし、各学院(他大学の学部に相当)の女子比率20%超を目指す。2024年度入試(24年4月入学)では物質理工、情報理工、生命理工、環境・社会理工の4学院で58人を選抜。25年度入試では残りの理と工を含め全学院に広げ、最終的に計143人を募集する。東工大の女子枠創設について石原氏はこう続ける。

「定員が多いので全て埋まらないかもしれませんが、この規模で東工大が女子枠を導入するインパクトは大きい。特に首都圏の女子は反応するでしょう。東大や早慶などの他大学に流れる受験生を早期に獲得する狙いは、ある程度成功すると思います」

 東工大のレベルを勘案すると、優秀な女子受験生の医学部志向が高まる中、理工系に目を向けさせることで、医学部志望者を獲得したいという思惑もうかがえる。

 女子枠の創出には追い風も吹いている。トップ女子校で理工系大の合格者が増えているのだ。23年度入試で東大合格者が多かった桜蔭や豊島岡女子学園、女子学院など10の女子校から、東京理科大、工学院大、芝浦工業大、東京電機大といった首都圏の工科系大学の一般選抜に合格した人数を13年度と23年度で比較すると、556人から754人と200人近く増えているのだ。

 既に名古屋大・工や芝浦工業大など、総合型選抜や学校推薦型選抜で女子枠を設けている大学は多い。24年度も東京理科大が総合型選抜(女子)を新規実施するなど、女子枠の拡大が進む。

 女子大も動いており、22年度の奈良女子大・工に続き、お茶の水女子大が共創工を新設。私立大では日本女子大が建築デザインを新設予定だ。男社会の古い体質の日本企業が閉塞感を打破できなか ったのは事実。今後は優秀な女子が加わることによるイノベーションが生まれることに期待がかかる。

 デジタル人材の需要、技術の進展とともに

 もちろん、理系人材は、男女を問わず求められている。共学の大学では、京都府立大の農学食料や生命理工情報、麗澤大・工などが新設される予定だ。 

 24年度に新設される理工系学部の学科などを見ると、お茶の水女子大・共創工の文化情報工学科や京都府立大・生命理工情報の理工情報学科、麗澤大・工の情報システム工学専攻など情報系が相次ぐ。教育創造未来会議の提言に盛り込まれた、デジタル人材養成への対応が色濃く表れている形だ。

 情報系学部の新設も多く、国公立大では、宇都宮大・データサイエンス経営、千葉大の情報・データサイエンス、熊本大・情報融合、下関市立大・データサイエンス、高知工科大・データ&イノベーション。私立大では、千葉工業大・情報変革科、明治学院大・情報数理、福岡工業大・情報工の情報マネジメント学科などが開設される予定だ。

 24年度に限らず、情報系学部・学科の新設ラッシュが続いており、難関大から一般的なレベルまで多くの大学で設置されている。しかし、人材過多にはならないのだろうか。代々木ゼミナール教育総合研究所主幹研究員の坂口幸世氏は次のように展望する。

「チャットGPTなど新技術が開発されれば、そのための新たな技術が求められるという、技術拡大にストップがかからないので、優秀なデジタル人材は求められ続ける。『誰も気づかない価値の創出』『普通のプログラムを書く力』『情報を処理する』など、デジタル分野は適材適所に仕事がある。農業や医療、公務員など、どのような業界でも情報技術の知見が求められるので、当分は人材過多にならないと思います」

 あらゆる業界で求められているという面で象徴的なのは、難関国立大からの採用が増えているメガバンク。3大メガバンク(三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほフィナンシャルグループ)合計の採用大学ベスト10を見ると、12年卒では、ランクインした国立大は東大のみで、事務職の採用源となる文系学部の定員が多い私立大が大半を占めた。それが22年卒のベスト10は、東大、京大、大阪大、神戸大と理系学部の定員が多い四つの難関国立大が入った。デジタル人材の採用意欲の高さと無関係ではないだろう

 理系学部や情報系学部以外の学部系統では、グローバル人材の養成を目指し、実践女子大・国際や甲南大・グローバル教養など、国際系の新設も進む。

 社会の変革期を支える人材を養成するため、女子枠の導入や学部新設が進む。24年度は有名大学の改革も数多いので、志望校の最新情報を確認したい。

 6月13日発売の「サンデー毎日6月25日号」には、24年度入試の「主な大学の学部学科改組・入試変更点」を掲載しています。

 ほかにも「荻原博子が徹底追及 マイナンバー改正法は、ただちに撤回するべきだ!」「緊急検証4 接種後死亡『2000人超』をどう考えるか! 『コロナワクチンの安全性』情報公開が少なすぎる!」「『リーガル女子』台頭の理由 東大は文Ⅰで3割突破 早慶、明治、中央は女子校が首位」などの記事も掲載しています。

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

12月3日号

経済学の現在地16 米国分断解消のカギとなる共感 主流派経済学の課題に重なる■安藤大介18 インタビュー 野中 郁次郎 一橋大学名誉教授 「全身全霊で相手に共感し可能となる暗黙知の共有」20 共同体メカニズム 危機の時代にこそ増す必要性 信頼・利他・互恵・徳で活性化 ■大垣 昌夫23 Q&A [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事