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就活もサンデー!第4弾 最速!2023年春卒全国250大学実就職率ランキング 日本型「通年採用」の萌芽も

「サンデー毎日8月20・27日合併号」
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 2023年卒の大学生の就職状況がまとまってきた。この結果を全企業を対象としたものと、有名企業に絞ったデータとをお伝えする。今回の全企業を対象としたデータからは、コロナ禍から復調基調の就職戦線が見えてくる。

 コロナから回復の就職戦線

 コロナ禍でやや停滞した大学生の就職状況が戻りつつある。2020年卒から下降気味だった平均実就職率は22年卒で底を打ち、23年卒は前年を1・8ポイント上回る87・8%となった。大学全体の実就職率とともに、大学生の就職先に対する満足度も上がっている。23年卒の大学生の就職状況について、リクルート就職みらい研究所所長の栗田貴祥氏は、こう振り返る。

「求人倍率は1・58倍で前年を0・08ポイント上回り、学生に追い風が吹いていました。ただ、従業員規模300人未満の企業が5・31倍なのに対し5000人以上は0・37倍と、ミクロの視点で見ると追い風とばかりは言えません。それでも、全体として企業の求人意欲が高まっていることから、第1志望群の企業から内定を得る学生が増えたことが23年卒の特徴です」

 就職みらい研究所の調査によると、当初からの第1志望群に入社予定の学生は61・5%と過去最高になったという。

 個別大学の状況を実就職率ランキングで見ていこう。「卒業者数1000人以上」のトップ5は、愛知工業大▽福井大▽大阪工業大▽金沢工業大▽名古屋工業大―と工科系大学が数多く並んだ。製造業を中心とした求人の多さに加え、研究や論文執筆などを通して論理的思考力やコミュニケーション能力を身に付けた学生が多いことから元々、工科系大学は就職力が高かった。近年は、情報化社会の進展とともに、就職対象企業があらゆる業種に広がっていることからさらに強みを増している。

 今春、相次いで閉学が明らかになった女子大だが、就職という観点から見ると、その「魅力」は相変わらず高い。女子大だけで集計した23年卒の平均実就職率は、大学全体を上回る89・6%。女子大が大学全体を上回るというのが、長年続いている構図だ。 卒業者数1000人以上の女子大の最上位は9位の東京家政大。栄養士や教員免許などの資格が取得できる実学系学部が充実している強みがある。東京家政大に続くのは11位の実践女子大。入学前から卒業後までの長いスパンで行う、学生の個性を大切にした個別支援体制「J―TAS(Jissen Total Advanced Support)」を導入し、就職力に磨きをかける。50位以内には昭和女子大(12位)、椙山女学園大(13位)、武庫川女子大(26位)、安田女子大(40位)、甲南女子大(44位)、日本女子大(47位)がランクインした。

 「卒業者数100人以上1000人未満」の1~5位は島根県立大、神戸市看護大、京都薬科大、日本文化大、群馬医療福祉大。ランキング全体として医療系の資格が取得できる大学が数多い。工科系は福岡工業大(6位)と豊田工業大(10位)が上位に入っている。

 実就職率ランキングの上位に難関大は少なく、1000人以上に京大や早慶といった国立と私立の最難関大の名前はない(東大は未集計)。東京理科大は28位と比較的上位に入っているが、MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)の最高は57位の青山学院大。関関同立(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)の最高は65位の関西学院大で、MARCHと関関同立ともに、50位以内に入っている大学はない。

 このことは起業や留学、大学院進学など多様な進路を選ぶ学生が少なくないことに起因するものであり、就職先を見ると難関大たるゆえんが分かる。それぞれの大学の1位を見て気づくのは、東大や京大、北海道大、大阪大、慶應義塾大といった数多くの大学で外資系コンサルタント会社のアクセンチュアの名前があることだ。

「あらゆる規模、業種で進むDX(デジタルトランスフォーメーション)化に対応するために、体質を変えようとする企業が増えている。アクセンチュアはそうした企業の依頼に対応するため、難関大から大量採用しているのでしょう。DX化を背景として、難関大では情報関連企業の就職者も増えている」(就職アナリスト)

 一橋大と上智大、青山学院大の最多は楽天グループで、早稲田大と東京理科大がNTTデータ、明治大がNECソリューションイノベータ。その他の大学も情報関連企業への就職者が多くを占めており、社会状況を反映した動きと言えよう。

 ここまで23年卒の概況と大学別の動きを見てきたが、現在就活中の24年卒以降はどのような状況が見込まれているのか。確実なのは、就活プロセスの早期化が止まらないということのようだ。リクルートの栗田氏は言う。

「卒業前年の2月までに内定を得た学生の割合は、23年卒の13・5%に対し、24年卒は19・9%に上がりました。24年卒では、就職志望の学生のインターンシップへの参加率が9割を超え、卒業前年の8、9月の参加割合が高い状況です。ただ、早期に内定を得ても、6月に面接を開始する企業まで視野に入れている学生が多く、6月末まで就活を終えられないという、学生にも企業にも負荷がかかる状況になっています」

 25年卒以降も早期化、長期化の流れは加速すると見られている。そうした状況について、文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所所長の平野恵子氏は、日本型の通年採用の兆しと見る。

「24年卒は就活スケジュールがさらに早期化した動きから、日本型の通年採用が始まる兆しを感じています。3年夏からのインターンシップやキャリア形成支援イベントで企業と接触し、企業がさまざまなタイミングで選考する流れの中で、今後は学生が描くキャリアに合わせたタイミングで内定を得て、翌年10月1日の内定式まで、学業に打ち込めるようになることが大切でしょう」

 6月に面接が始まる企業の結果を待つという長期化の懸念に対し、平野氏は「今後、新卒での就職はファーストキャリアであって、人生を決めるものという意識が低くなると、一律に6月まで就活を引っ張るスタイルは減るのではないでしょうか」と話す。

 ファーストキャリアとはいえ、自らのキャリアを絞り込んだ上で、見合う企業を目指すとなると、早期からのキャリア形成の必要性が高まる。新たな就活スケジュールへの対応も含め、これまで以上に、各大学のキャリアセンターや就職課の力が試されることになりそうだ。

 8月8日発売の「サンデー毎日8月20・27日合併号」には、「全国250大学 実就職ランキング」を掲載しています。ほかにも「改造人事ウラのウラ 木原誠二官房副長官を切らなきゃ、岸田首相は『崖っぷち』」「和田秀樹『コミュニケーションの壁』 発達障害の私が悩む人に伝えたいこと」などの記事も掲載しています。

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