週刊エコノミスト Online サンデー毎日
2024年大学入試:主要274私立大 共通テスト利用入試情報 難関大で軒並み志望者増加
「選択肢」「受験機会」拡大
「新課程元年」となる2025年度入試(25年4月入学)。それを控え国公立大と私立大の志望者には24年度中に入学先を決めたい思いが強まっている。ともに難関私立大を中心に大学入学共通テスト利用入試の注目度が高まっている。
現行の教育課程で最後の実施となる、24年度(24年4月入学)の共通テストの出願が締め切られた。受付最終日の10月5日(17時)時点の志願者は46万5469人で、前年同日を1万3879人(2・9%)下回った。大学入試センター試験時代から数えて、6年連続の志願者減だ。
現浪別に集計すると、現役生は40万3718人で前年比1万1995人(2・9%)減。ほぼ18歳人口の減少に連動した減少幅となっている。近年、現役生を上回る割合で減少してきた浪人生は、1884人(3・1%)減の6万1751人。前年の7・1%減と比べると減少が緩やか。その背景について、駿台予備学校入試情報室部長の石原賢一氏が説明する。
「大学入学後に再受験を目指す、いわゆる仮面浪人が増えたのだと思います。コロナ禍で会場が制限されるなど、浪人生が受けにくかった模試が通常実施になり、受験生全体の中での自分の立ち位置が分かるようになった影響だと見ています」
大学に籍を置きながら再受験を目指すというのなら、その目標の多くは難関大。24年度入試は、優秀な浪人が大きく減らないことにより、難関大志望の現役生が割を食うケースが考えられる。
浪人の影響というわけではないが、難関私立大の共通テスト利用入試の志望者が増加傾向にある。「第1回駿台・ベネッセ大学入学共通テスト模試」の難関私立大の志望動向をみると、大学個別試験を課す一般方式が減少する一方、共通テスト利用入試は増加傾向にあるのだ。
共通テスト利用入試を実施していない慶應義塾大を除く早稲田大、上智大、東京理科大といった最難関大の中で、志望者が前年より下回っているのは早稲田大のみ。政治経済や国際教養、スポーツ科、教育などで実施している共通テストと大学個別の記述試験を組み合わせた方式で志望者が減っていることが一因だ。主に私立大専願者が、大学個別の記述試験を敬遠しているようなのだ。
MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)でも、早稲田大と同様に記述試験がある負担感から、青山学院大の共通テスト利用入試も志望者が減少している。予備校関係者は言う。
「早稲田大と青山学院大ともに、志望者の減少は気にしていないでしょう。倍率は低くても、優秀な母集団からの選抜なら入学者のレベルは上がるはずですから」
MARCHで共通テスト利用入試の志望者が減少しているのは青山学院大のみで、特に志望者が大きく増えて難化しそうなのは中央大だ。関関同立(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)の志望者は、前年並みの関西大以外は増加。特に関西学院大と同志社大の志望者の伸びが大きくなっている。
準難関の日東駒専(日本大、東洋大、駒澤大、専修大)は、前年並みの日本大を除いて志望者増。産近甲龍(京都産業大、近畿大、甲南大、龍谷大)は龍谷大の志望者が増えているが、近畿大と甲南大は前年並み。京都産業大は志望者の減少幅がやや大きくなっている。
共通テスト利用入試の志望状況は、難関から準難関大で堅調な一方、その次の大東亜帝国(大東文化大、東海大、亜細亜大、帝京大、国士舘大)、摂神追桃(摂南大、神戸学院大、追手門学院大、桃山学院大)からは減少傾向。
「地方の国公立大より難しい首都圏や近畿圏の難関私立大の志望者は、思考力が問われる共通テストに対応できますが、知識が問われることが主となる一般的な私立大を目指す受験生は、共通テスト対策を別にしなければならない。そのため、共通テスト利用入試の志望者が増えにくいのです」(駿台の石原氏)
共通テスト利用入試は、受験料が一般方式の半額程度と安く、多くは出願するだけで合否判定を受けられる手軽さが特徴。私立大志望者だけではなく、国公立大志望者にとっても大きなメリットになることから、例年以上に国公立大志望者から私立大の共通テスト利用入試が注目されそうだ。
「事後出願」可も増加 受験料値下げも拡大
また、25年度から新課程で学んできた受験生が中心の入試になる。そのため、現行課程で学んできた受験生は、今回のうちに決めたいと考える傾向が強い。国公立大の一般選抜の受験機会は中期日程を入れても最大3回で、併願先を私立大に求めることになる。そこで活用が見込まれるのが、多くは出願するだけで合否が決まり、2次試験対策に負担をかけずに私立大を併願できる共通テスト利用入試だ。東京都市大のように共通テストで基準点をクリアしていれば合格となる大学もある。難関・準難関私立大の共通テスト利用入試の志望状況が好調なのは、こうした国公立大志望の受験生心理が少なからず影響しているとみられる。特に国公立大志向が強い関西はその傾向が顕著だ。
大学も多くの科目を学んできた国公立大志望者を入学させたいと考え、多科目型の共通テスト利用入試を導入している。24年度も産業能率大や京都橘大、立命館大、追手門学院大、近畿大などで、方式や学部により多科目型の共通テスト利用入試を実施予定だ。一般的な私立大志望者は3教科型を中心に受験プランを立てることから、4教科や5教科を課す多科目型には出願しにくい。その分倍率が低くなるので、多くの科目を学んできた国公立大志望者には有利に働く。
共通テスト利用入試は年々活用しやすくなっている。その一つが、これまでの共通テストの自己採点前に出願するいわゆる事前出願から、自己採点後に出願できる事後出願の大学が増えていることだ。24年度は国際医療福祉大や名城大、京都産業大などが、入試日程や学部により、事前出願から事後出願に変更する
検定料を下げる大学もある。千葉工業大はコロナ禍の受験生支援として、引き続き共通テスト利用入試の受験料を無償とする。24年度からは、龍谷大や神戸学院大などが共通テスト利用入試の受験料を大幅に下げる。これらの変更は、国公立大志望者はもちろん、私立大志望者にとっても大きな意味を持つ入試改革といえよう。
難関私立大の倍率アップが見込まれる一方、一般的な私立大では狙い目となりそうな共通テスト利用入試。志望校の実施状況や倍率について、「共通テスト利用入試主要私立大274校詳細情報」で確認してほしい。