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女性誌がペルー訪問に「難癖」 「佳子さま批判」を批判する 社会学的皇室ウォッチング! /94 成城大教授・森暢平

ベトナムフェスティバル2023 開会式に出席された佳子さま=東京都渋谷区で2023年6月3日、北山夏帆撮影
ベトナムフェスティバル2023 開会式に出席された佳子さま=東京都渋谷区で2023年6月3日、北山夏帆撮影

 11月1日から10日間、南米ペルーを訪問した秋篠宮家の佳子さま。現地の評判は上々だった。世界遺産マチュピチュを訪問したときに着ていたブルゾンが、ネット通販で4790円で売られていたとして、完売になった。若い女性たちの佳子さま人気が高いことがうかがえる。一方で、ペルー訪問を否定的に伝えるのが女性週刊誌である。しかし、難癖に近い無理筋の批判まであった。

『週刊女性』(11月21日号)は、民間機を利用したことを批判した。米ヒューストンからペルー・リマまで搭乗したのは米ユナイテッド機であった。だが、レーダーの不具合からメキシコ湾上でUターンし、ヒューストンにトンボ返り。手配された別の機体にもトラブルが判明し欠航となった。このため、ペルー到着が丸1日遅れ、相手国に迷惑が掛かったと報じたのである。記事のなかで、静岡福祉大の小田部雄次名誉教授は次のように述べた。

「民間機の使用は、一見〝国民寄り〟の姿勢が感じられますが、公式行事などの重要なご公務においては、皇室や国の代表であることを強く意識すべきです。国家を背負って働かれる際は、政府専用機を利用されることが望ましいと思います」

 記事には、「法律上、天皇のみならず皇族方は全員、専用機を利用することができる」という文章が続く。だが、これは間違いである。政府専用機を利用するのは、天皇および皇太子ご夫妻であって、一般の宮家皇族は通常は民間機で移動する。皇嗣となった秋篠宮のご夫妻を除いて1992年以降、政府専用機を利用した宮家皇族の外遊は高円宮のモロッコ訪問(99年)の一例しかない。モロッコ国王の葬儀出席のためだが、国王逝去から葬儀まで2日しかなく、葬儀出席を実現するには専用機を利用するしかなかった。まさに特例である。

 同記事には、父親である秋篠宮が、国民生活に影響を及ぼすことがないようにと「佳子さま外遊には民間機」と判断したとある。そして「今回の事態(機体トラブルによる到着遅れ)を踏まえると〝誤断〟としか言いようがありません」という「宮内庁関係者」のコメントを引用する。しかし、佳子さまの外遊には、そもそも民間機利用の選択肢しかない。紀宮さま、眞子さまの外国訪問でも、民間機が利用されていた。

 記事のタイトルは「国際親善に水を差した秋篠宮さまの誤断」であるが、これを誤断と断じた『週刊女性』こそ誤断であろう。

 佳子さまは勉強不足?

 佳子さまの現地のコメントが語彙(ごい)力不足であると批判的な記事を掲載したのは『女性自身』(11月28日・12月5日合併号)である。クスコの遺跡を見学した際、アルパカについて説明者から「肉も食用に使って非常に健康に良いとされています」と話しかけられた佳子さまは「どんな味なんですか」と質問した。答えは「羊と牛の間みたいな感じ」であった。

 アルパカは毛が衣類などに使われるだけでなく、ペルーでは食用肉として利用される。コレステロールが少なく、高たんぱくである。説明者はアンデス地方の食文化を解説した。これに対し佳子さまが味を尋ね、コミュニケーションは十分に成り立っている。しかし、これについても、前述の小田部名誉教授はネガティブな批判コメントを寄せる。

「素朴な感想を素直に表現されることは、佳子さまの明るいイメージに合ったものですし、対外的にも皇室のイメージアップにつながった一面があったかもしれません。しかし、日本を代表して訪問されたことの重みと深みが、こうしたご発言で薄れてしまうともいえるでしょう。インカ文明の歴史や今に続く文化に対する感想を、もしとっさのコメントで言及されていたならば、より両国の親善にとって大きな成果に結びついていったようにも思えます」

 食用という説明があったので、味を尋ねただけのやり取りを、このように切り取るのは難癖に等しい。小田部名誉教授は、「入念に相手先について調べて(外遊に)臨」んだ天皇、上皇の両ご夫妻と比べると「〝事前の勉強が不足している〟といった印象を広げてしまいかねない」とも述べる。佳子さまがどれだけ事前準備をして外遊に臨んだのかを知らないにもかかわらずのこのコメントは印象操作と言われても仕方がない。

 同誌は「皇室の伝統的な学びよりも、新しい学びに傾きすぎた一面が秋篠宮家の教育にはあった」と断じ、母親の紀子さまが、娘の現状に焦燥感を覚えているとまとめている。記事のタイトルは「佳子さまに『日本語が稚拙』批判」で、サブタイトルには「秋篠宮家の〝皇族教育〟に誤謬(ごびゅう)」とあった。これだけの材料でよくここまで言い切れるものである。

 アクセサリーを深読み

『女性自身』は11月21日号で「佳子さま『ペルーご訪問で眞子さんブローチ』」という記事も書いている。羽田を出発するときの真珠のイヤリングとブローチが、姉・小室眞子さんが4年前にペルーに出かける際に着用していたものと同じであると報じた。ここでもまた小田部名誉教授がコメントしている。

「佳子さまにとっては、眞子さんの皇族時代の功績が国民に忘れられているように感じるのかもしれません。その存在を忘れてほしくないという佳子さまのお気持ちも理解できますが、海外公式訪問でされるべきではないと思います。日本とペルーの絆を訴えるのであれば、国民の理解も得られるでしょうが、姉との絆を訴えることで、公私混同をしているともとらえられかねません」

 同誌はさらに、姉のイヤリングとブローチを着用したことが「眞子さん支持の表明」であり、「〝皇室離脱〟への決意宣言」だとまで書いている。

 公務を行う女性皇族に対し、姉からもらったアクセサリーをしていたことだけを捉えて、皇室離脱の「断固たる決意」や「執念」を深読みする『女性自身』編集部にこそ、異様な「執念」を感じてしまう。アクセサリーをまとう笑顔の佳子さまの写真につけられたキャプションは「出発時には満面の笑みをお見せになっていた佳子さまだが……」であった。んー、意地悪すぎる。

 もり・ようへい

 成城大文芸学部教授。1964年生まれ。博士。毎日新聞で皇室などを担当。CNN日本語サイト編集長、琉球新報米国駐在を経て、2017年から現職。著書に『天皇家の財布』(新潮新書)、『天皇家の恋愛』(中公新書)など

 

「サンデー毎日12月10号」表紙
「サンデー毎日12月10号」表紙

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