子どもの学ぶ力が育つ家具――志村千奈都さん
NEM代表取締役社長CEO 志村千奈都
親の目が届くリビングになじみ、幼児の思考力、集中力を高める理想の家具を届ける。(聞き手=北條一浩・編集部)
子どもが自らの工夫で使いこなし、インテリアデザインとしても優れた知育家具を開発・販売しています。
自社ブランド「MINORINO」の家具は、デスク、椅子、シェルフ(棚)、チェスト(引き出し)を、子どもが自由に組み合わせて使うことができます。細かいおもちゃを分類収納できる引き出しは、片付けの習慣化や遊び道具を分類する思考能力の育成に役立ちます。
デザインはラバー無垢(むく)材と亜麻仁油などを原料に作られた天然塗料のリノリウムを使い、やわらかな木の風合いと引きしまった黒の2色だけに限定。余計な飾りや曲線がないシンプルな機能美で、リビングルームに置いて落ち着きを邪魔しないと自負しています。
商品は、デスクボード(天板のみ)が幅800ミリ、奥行き400ミリ、高さ105ミリで3万7000円(税抜き)、椅子が幅360ミリ、奥行き360ミリ、高さ478ミリで2万円(同)など。製品は私が描くイラストを基に夫が試作し、事業パートナーのデザイン事務所「STUDIO OTO」(相模原市)がブラッシュアップしています。
来年2月に販売サイト
私は2020年10月に出産をし、2カ月で仕事に復帰しましたが、仕事と育児の両立に苦しむ中で、そうした人たちの課題解決になるブランドを立ち上げたいと考えていました。そんな時、「子どもは自ら学ぶ力を持っている」と主張する「モンテッソーリ教育」に出会ったんです。
親がやるべきは知識を詰め込むことではなく、子どもが本来持つ能力を引き出す環境を整えることだ、という考え方です。夕飯の準備などで手が離せない時にも、子どもがその家具と一緒にいることで安心でき、インテリアとしてもデザイン性の高いものがあったらどれほどいいか。
自宅でそんな家具を使いたいと思い、相当時間をかけて探しましたが、まったく見当たりません。そこで、「自分たちで作ってみよう」と考えました。私は当時、スタートアップ企業で働いていたので、自分の仕事は自分で作ることが身に付いていました。
幸い、夫は自分でギターも作れるような人で、私の描いたイラストを元に、ホームセンターで素材の木を買ってきて、DIYで子ども用家具を作ってくれました。これをSNSで公開したところ、「こんなにシックなキッズ家具があるなんて」と多くの人から高評価をもらいました。
今年の9月と10月にまず、クラウドファンディングの応援購入という形でスタートを切り、目標額に対して5割増の売り上げを達成しています。これらの成果に自信を得て、製品は量産体制に入りました。もともとSTUDIO OTOと付き合いがあり、子ども用家具で実績のある中国の工場で製造しています。
現在、販売サイトを準備中で、来年2月のオープンを予定しています。今後は家庭の中だけでなく、公共空間にも置けるサイズやデザインを追求し、またお客さんに実物に触れてもらえる機会を増やしたいと考えています。
企業概要
事業内容:子ども用知育家具の企画、開発、販売およびデジタルマーケティングを活用した支援事業
本社所在地:東京都葛飾区
設立:2023年1月
資本金:260万円
従業員数:2人(志村氏と夫のみ)
週刊エコノミスト2023年12月19日号掲載
志村千奈都 NEM代表取締役社長CEO 子どもの学ぶ力が育つ家具