冷凍とITでパン屋さんを支える――矢野健太さん
パンフォーユー代表取締役 矢野健太
日本各地で評判の絶品パン。その焼き立てのおいしさを閉じ込めたまま、冷凍し全国に届けるシステムを作った。(聞き手=永野原梨香・ライター)
パンを冷凍して全国に配送できれば、地方にあるパン屋さんの販売網を広げることができ、売り上げの安定にもつながります。
まずは2018年、就業中の休憩時間に昼食を食べられない「ランチ難民」が問題になっていたので、オフィス向けに冷凍パンを届けるサービス「パンフォーユーオフィス」を開始しました。そのうち、個人でも購入したいとの声が多くなってきたので、個人向けの冷凍パンを届けるサービス「パンスク」を始めたところコロナ禍に突入。オフィス向けの需要が落ち、個人向けの需要が増えました。「パンスク」の利用者は約4万人(2023年9月現在)。「パンスク」が売り上げの大部分を占めます。
「パンスク」を利用する方はお取り寄せをするぐらいなので、パン好きな方が多い。弊社が厳選したパン屋さんから、通な人が好みそうなパンや珍しいパンを届けます。提携しているパン屋さんは100店舗。パンとの出会いを楽しんでもらいたいので、どのパン屋さんから届くかは、選べない仕組みになっています。1回当たり冷凍パン8個前後で3990円(税・送料込み)。届ける間隔は2週間、1カ月、2カ月から選べます。
「パンフォーユーオフィス」は社員食堂の代わりなど福利厚生の一環として、300社(23年1月現在)が利用しています。弊社が冷凍庫をオフィスに届け冷凍パンを補充するプラン「置きカフェプラン」は月額3万円。パン1個につき200円が掛かります。
サービスの肝は、冷凍方法とIT技術です。おいしさを保ったまま冷凍することを可能にしているのが冷凍のために使う袋。付き合いのあったメーカーさんの袋が偶然、冷凍に適していることを発見しました。事業に合わせて今は、少し改良しています。1袋10円ほどと、袋にしては高いですが、パンは時間の経過とともに水分などが抜けてしまうため、焼き立てのタイミングでこの袋に入れ冷凍することで、おいしさを保てます。
食べるときは冷凍庫から取り出し温め直すだけ。賞味期限が1カ月以上あるので、食品ロスの心配もありません。
パンのギフト券も展開
パン屋さんが冷凍パンを発送する際に使うシステムは弊社が開発した「パンフォーユーモット」です。パン屋さんが同システムの管理画面で弊社からの製造数量を確認。製造して冷凍した後、事前に弊社から届く梱包(こんぽう)材に入れて発送してもらいます。
今では、映画とコラボレーションしたパンの企画・販売など、パンを使ったビジネスを支援する「パンフォーユーBiz」、パンのギフト券「全国パン共通券」と事業も広がってきました。全国パン共通券の宣伝には株主の日清製粉にお世話になりました。コロナで来店者が減っていたオフィス街や都市部のチェーンベーカリーさんからの引き合いが多く、加盟店は850店舗になりました。
最近は、原価高騰や人手不足で運営自体が厳しいという声も多い。このような声に対して何ができるか、2024年の大きなテーマです。
企業概要
事業内容:パンの定期お届け便「パンスク」、食の福利厚生サービス「パンフォーユーオフィス」、事業者向けのパンプラットフォーム「パンフォーユーBiz」、ネットで送れるパンギフト券「全国パン共通券」の企画・運営
本社所在地:群馬県桐生市
設立:2017年1月
資本金:1億円(2022年6月末現在)
従業員数:40人(2023年12月現在)
週刊エコノミスト2024年1月23日・30日合併号掲載
矢野健太 パンフォーユー代表取締役 冷凍とITでパン屋さんを支える